日立GST、2.5倍の容量を実現するHDD高密度記録技術を開発
7月28日 発表 日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)は28日、記者発表会を都内で開き、610Gbit/平方インチの記録密度を実現するHDD記録技術を開発したと発表した。 冒頭で日立製作所 中央研究所 ストレージデバイス研究部主任研究員の中本一広氏は、HDD記録密度の推移を紹介。'56年のIBMによる最初のHDDが登場して以来、年々新技術の登場により、記録密度が50年で1億倍に膨れ上がったという。 そして面内磁気記録方式を用いたHDDは、'91年のMRヘッドとPRML信号処理という2つの新技術により、記録密度が100Mbit/平方インチに高まった。一方、垂直磁気記録方式においては、今回新たに開発したWAS(Warp Around Shield)ヘッドとGraded媒体の技術によって、記録密度のブレイクスルーが生まれるとした。
メディアの記録密度を向上させる方法として、ビット長を短くする手法と、トラックピッチを狭くする手法の2つを用いれば高密度化を実現することができるが、課題として、前者は熱安定性が低くなり、熱によってデータが消失する問題、後者は磁界強度と勾配が不足し、記録されにくくなるという問題があった。 熱安定性の課題の解決に向けて開発されたのがGraded媒体である。従来の媒体は、ヘッドによって発生される磁化反転を、キャップ層とグラニュラ層の2層構造で実現していたが、Graded媒体では、キャップ層に近い方は磁気反転が起きやすく、遠い方は磁気反転が起きにくい素材を採用し、磁化反転を段階的に変化させる。 これにより、熱がある層に集中し、磁気反転が起きても、他の層によって磁界が元に戻りやすい。同社の熱ストレステストにおいても良好な低エラー率を実現したという。 一方WASヘッドは、書き込みを行なう主磁極を、磁界を吸収する効果のあるサイドシールドで覆うことで、隣接するトラックに影響する磁界を抑えることができる。これにより、書き込みトラックに記録磁界を集中し、隣接トラックへの誤書き込みを抑えられるとした。
2つの新技術により、同社による記録密度評価テストで、612Gb/平方インチの記録密度を達成したという。 さらに、繰り返し符号(LDPC:Low Density Parity Check)信号処理技術を開発し、フォーマット効率を改善。従来の誤り訂正符号と同等な機能を実現しながら、占有領域を縮小。これによりユーザデータの領域を最大4%改善し、容量換算で635Gb/平方インチを実現。現行の量産HDDの約2.5倍の記憶容量を実現できるという。 今後は製品化に向けたさまざまな課題を解決し、2~3年後の実用化を目指す。また、今回の研究成果は、29日よりシンガポールで開かれる磁気記録に関する国際学会「The Magnetic Recording Conference 2008」で詳細を発表する予定。
□日立グローバルストレージテクノロジーズのホームページ (2008年7月28日) [Reported by ryu@impress.co.jp]
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