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MemCon 2008レポート
携帯電話機を分解して半導体メモリの搭載状況を分析

Hyatt Regency Santa Claraの外観

会期:7月21~24日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンタクララ
   Hyatt Regency Santa Clara



 半導体メモリに関する講演会「MemCon 2008」が始まった。22日の講演では、電子機器を分解して半導体の使用状況を調査する専門企業、Portelligentによる発表が興味深かった。2003年~2007年の間に325種類を超える携帯電話機を分解し、半導体メモリの搭載状況を分析した結果を、同社のPrincipal Analystを務めるJeff Brown氏が報告した。

 講演では、携帯電話機をグレード別に「ウルトラロー(Ultra-low)」、「ロー(Low)」、「ミッド(Mid)」、「ハイ(High)」、「ウルトラハイ(Ultra-high)」の5つのセグメントに分け、代表機種の半導体メモリ搭載状況(メモリ容量とメモリコスト)を示すとともに、2003年~2007年の半導体メモリ搭載状況の変化をセグメント別に説明した。

 ウルトラローセグメントの代表機種は「Sagem Vodafon 226」。GSM機である。半導体メモリの搭載容量は揮発性メモリ(DRAMあるいはSRAM)が1MB、不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)が4MBと少ない。半導体メモリ全体の推定コストはわずか1.54ドルである。

 ローセグメントの代表機種は「Nokia 2630」。GSM/EDGE機である。半導体メモリの搭載容量は揮発性メモリが4MB、不揮発性メモリが32MBと増えた。半導体メモリ全体の推定コストは2.28ドルとこれもかなり低い。

 ミッドセグメントの代表機種は「LG KU250」。GSM/W-CDMAのデュアルモード機である。半導体メモリの搭載容量は揮発性メモリと不揮発性メモリがそれぞれ64MBとやや大きくなってきた。半導体メモリの推定コストは4.19ドルである。

 ハイセグメントの代表機種は「Sony Ericsson K850i」。GSM/HSDPAのデュアルモード機である。半導体メモリの搭載容量は揮発性メモリが32MB、不揮発性メモリが128MBある。半導体メモリの推定コストは6.00ドル。

 ウルトラハイセグメントの代表機種は「HTC TyTN Ⅱ」。GSM/HSDPAのデュアルモード機である。半導体メモリの搭載容量は揮発性メモリが160MB、不揮発性メモリが256MBとかなり大きい。半導体メモリの推定コストは10.98ドルである。

PortelligentのPrincipal Analystを務めるJeff Brown氏が講演した 5段階のセグメント別にみた、代表機種における半導体メモリの搭載状況

●チップ数と面積の削減がメモリコストの低減に寄与

 続いて各セグメントにおける、半導体メモリ搭載状況の時間的推移を分析した結果をBrown氏は紹介した。

 ウルトラロー(Ultra Low)セグメントではメモリコストが2003年以降ずっと下がり続け、2ドル以下の水準まできていた。一方でメモリ容量はあまり変わらない。記憶容量当たりの単価(MB単価)が微細化とともに低下してきた過去の傾向を、大きく反映している。メモリの実装形態(代表機種)はマルチチップパッケージ(MCP)であり、SpansionのNORフラッシュメモリとSamsung ElectronicsのSRAMを収納してある。

ウルトラローセグメントにおける半導体メモリ搭載状況の推移 半導体メモリのコストと記憶容量の推移。青い部分が不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)、紫色の部分が揮発性メモリ(DRAMまたはSRAM) 「Sagem Vodafon 226」実装基板の写真とメモリの分析結果

 ローセグメントでは、メモリコストが下がる一方で、メモリ容量は急激に増大してきた。特に不揮発性メモリの容量が急激に増えている。メモリの実装形態(代表機種)はマルチチップパッケージ(MCP)であり、STMicroelectronicsのNORフラッシュメモリとSRAMを収納してある。

ローセグメントにおける半導体メモリ搭載状況の推移 半導体メモリのコストと記憶容量の推移。青い部分が不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)、紫色の部分が揮発性メモリ(DRAMまたはSRAM) 「Nokia 2630」実装基板の写真とメモリの分析結果

 ミッドセグメントでは、不揮発性メモリのコストが下がり、揮発性メモリのコストはあまり変わっていない。メモリ容量は不揮発性メモリ、揮発性メモリとも増加してきた。またプログラムの実行メモリがNORフラッシュメモリからDRAM(NANDフラッシュメモリからDRAMへ転送する)へと途中で変化している。メモリの実装形態(代表機種)はマルチチップパッケージ(MCP)であり、Hynix SemiconductorのMobile SDRAMとSTMicroelectronicsのNANDフラッシュメモリを格納してある。

ミッドセグメントにおける半導体メモリ搭載状況の推移 半導体メモリのコストと記憶容量の推移。青い部分が不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)、紫色の部分が揮発性メモリ(DRAMまたはSRAM) 「LG KU250」実装基板の写真とメモリの分析結果

 ハイセグメントでは、不揮発性メモリのコストが下がりながら、メモリ容量を増やしてきた。メモリの実装形態(代表機種)はマルチチップパッケージ(MCP)であり、IntelのNORフラッシュメモリとSamsungのMobile SDRAMを格納してある。このほか、内蔵カメラの基板にDDR SDRAMを搭載していた。

ハイセグメントにおける半導体メモリ搭載状況の推移 半導体メモリのコストと記憶容量の推移。青い部分が不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)、紫色の部分が揮発性メモリ(DRAMまたはSRAM) 「Sony Ericsson K850i」実装基板の写真とメモリの分析結果

 ウルトラハイセグメントでは、2006年までと2007年で状況が大きく違っていた。2003年~2006年はメモリコストが下がり、メモリ容量が拡大する傾向にあった。ところが2007年はメモリコストが上がり、不揮発性メモリの容量が急激かつ大幅に増加した。タッチパネル入力のグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を搭載した「iPhone」の影響によるものだという。メモリの実装形態(代表機種)はマルチチップパッケージ(MCP)であり、SamsungのNANDフラッシュメモリとMobile SDRAMを収納してある。

ウルトラハイセグメントにおける半導体メモリ搭載状況の推移 半導体メモリのコストと記憶容量の推移。青い部分が不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)、紫色の部分が揮発性メモリ(DRAMまたはSRAM) 「HTC TyTN Ⅱ」実装基板の写真とメモリの分析結果

 また半導体メモリのチップ数(ダイ数)とチップ面積(ダイ面積の合計値)の推移を2003年~2007年の間で調べたところ、チップ数とチップ面積を急速に減らし続けてきたことが分かった。チップ数とチップ面積の削減が、メモリコストの低減に大きく寄与してきたことがうかがえた。

ミッドセグメントにおけるチップ数(ダイ数)とチップ面積(ダイ面積の合計値)の推移。縦軸がチップ数、横軸がチップ面積 ハイセグメントにおけるチップ数(ダイ数)とチップ面積(ダイ面積の合計値)の推移。縦軸がチップ数、横軸がチップ面積

□MemCon 2008のホームページ(英文)
http://www.denali.com/en/memcon/2008/
□関連記事
【7月23日】【MemCon】DRAM縮小、NANDフラッシュが伸び悩むメモリ市場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0723/memcon02.htm
【7月22日】MemCon 2008前日レポート、DRAMやNANDフラッシュ、SSDなどの将来を議論
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0722/memcon01.htm

(2008年7月24日)

[Reported by 福田昭]

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