元麻布春男の週刊PCホットライン

Intelの関心はデスクトップから離れ、何処へ向かうのか




 2008年春のIDFが上海で開幕した。昨年の北京に続き、中国で2回目の開催となった今回、初日のトップキーノートを行なったのは、パット・ゲルシンガー上席副社長(Senior Vice President)だった。ゲルシンガー副社長は、IDFの生みの親的な存在であり、IDFとのかかわりが深い。にもかかわらず、グローバルIDFで初日のトップキーノートを行なったのは今回が初めてのことである(キーノートではなく、オープニングスピーチを行なったことならある)。

 しかも、現在の社内的な序列としては、2番目のスピーカーとして登壇したディビッド(ダディ)・パルムッター首席副社長(Executive Vice President)の方が格上であり、グローバルIDFとしてはかなり異例の登壇順だ。HPCからスマートフォンまで、ゲルシンガー副社長のキーノートテーマでいう、Peta FLOPSからMilli Wattsまで、生活のありとあらゆるところで使われるIntelアーキテクチャ(IA)というテーマに沿った登壇順なのだろう。

 そのゲルシンガー副社長のキーノートだが、IAをPeta FLOPSからMilli Wattsまでスケールする魔法の杖(孫悟空の如意棒)に見立て、HPC、ミッションクリティカル・コンピューティング、地球温暖化対策など、重要なジャンル毎に登壇する中国の要人ゲストに、如意棒を模したオブジェを贈呈する、という演出が行なわれた。昨年のラトナーCTOのキーノートもそうであったが、米国以外の開催ということで、現地の要人に対する配慮は欠かせない、ということなのだろう。

キーノートを行なうゲルシンガー副社長 ゲルシンガー副社長のキーノートでは、如意棒をモチーフにした演出が用いられた

 ゲルシンガー副社長のキーノートに取り上げられたIntelの製品や技術は、次世代のItaniumプロセッサ(Tukwila)、次世代のMP Xeonプロセッサ(Dunnington)、5400シリーズのプラットフォーム(Xeon 5400を含む)、次世代のプロセッサファミリとなるNehalem、次々世代のマイクロアーキテクチャであるSandy Bridgeに採用されるベクタ命令拡張であるAVX、ビジュアルコンピューティング分野での応用が期待されるLarrabeeといったところ。見事なまでに、現行のデスクトップPC向けプロセッサであるWolfdaleやYorkfieldの話題は欠落していた。

 Q&Aの機会を捉えて、これらが供給不足になっている点、少なくともボックス製品が市場で圧倒的に不足している点について尋ねてみたが、そんなはずはないが、といった感じではぐらかされてしまった。デスクトップPCは、規模こそいまだに大きいものの、市場の伸びが鈍化している上に、製品の競争力という点で、競合であるAMDに対しかなり優位にある。今のIntelにとって、マーケティングにおける重点分野ではないのだろう。

High Performance Computing Standard Committeeの議長をつとめるLi Jun氏に「如意棒」を贈呈するゲルシンガー副社長 ラウンドテーブル式のQ&Aに出席したゲルシンガー副社長

 その点で言うと、HPCやサーバーは、AMDのOpteronにかなり痛い目にあわされてきた分野だ。しかも、デスクトップPCに比べれば商談に時間もかかる。45nmプロセス時代になり、競争力を高めた製品のアピールを行なう必要性は高いと判断しても不思議はない。

 いずれにしても、製品紹介という点では、かなりハイエンドに偏った印象を受けたが、それでもこれらに関する新しい情報はあまり多くない。その理由の1つは、デジタルエンタープライズグループが、IDF前に情報公開を行なったことにある。今回のキーノートの内容は、この事前情報にほぼ沿ったものであった。米国のメディアに対する配慮とも言われており、昨年の北京IDF前にも行なわれたが、イベントの盛り上がりを殺ぐという点では、あまり好ましいとは言えない。

6コアを持つDunningtonプロセッサ

 MP Xeonプロセッサとして、今年後半にリリースされる見込みのDunningtonについても、すでに情報が公開されていたが、このDunningtonが、メジャーデザインとしては、最後のPenrynファミリとなることが明示された。今後もクロックの引き上げやステッピングの更新はあるのだろうが、Core 2マイクロアーキテクチャを採用した、新しいデザインのプロセッサはこれで打ち止めとなる。

 Dunningtonは、6コアを持つハイエンドのXeonプロセッサだ。コアごとに独立したL1キャッシュ(命令とデータ各32KB)、2コアで共有するL2キャッシュ(現時点で容量は公開されていないが、ダイ写真から見て3MBではないかと思われる)、そして6コアで共有する16MBのL3キャッシュを備える。Dunningtonが6コアになった理由だが、45nmプロセスによるトランジスタ数のバジェットを前提に、4コア+大容量L3キャッシュ、8コア+小容量キャッシュといったオプションも検討した上で、トータルで最も性能が良い、ということで選んだということであった。

□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/

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(2008年4月3日)

[Reported by 元麻布春男]


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