大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

ソーテック、鳥取オンキヨーをPC専業の生産拠点に転換




 ソーテックは、オンキヨーとの業務提携の進捗状況について明らかにした。

 2007年8月に、ソーテックはオンキヨーの子会社となり、経営体質の強化に取り組んでいる段階にある。

菅正雄社長

 2008年2月1日に発表した「新体制下における、オンキヨー株式会社との業務提携の経過に関するお知らせ」によると、オンキヨーのオーディオ機器を生産する国内子会社である鳥取オンキヨーに、ソーテックのPC生産を移管。さらに、修理センターやコールセンターの同拠点への移管、営業拠点の統合などに乗り出すことが明らかになっている。

 リリースからわかるのはここまでだが、実は、この生産拠点移管では、鳥取オンキヨーがこれまで取り組んできたオーディオ機器生産を別工場へと移管し、同拠点をPC専門の製造拠点へと衣替えするという大がかりな取り組みが計画されていることが、このほどわかった。

 果たして、オンキヨーとのシナジーは、どこまで拡大するのか。そして、ソーテックの開発、生産、営業、保守体制はどう変わるのか。ソーテックの菅正雄社長に話を聞いた。

●倉吉発、MADE IN JAPANを目指す

 菅社長によると、ソーテックがこれまで横浜でBTO生産してきた体制を、すでに2007年12月から鳥取オンキヨーに移管しているという。一方、約180人体制で行なっていたオーディオ機器生産を別拠点へ移行しはじめており、最終的には、ソーテックブランドのPCを生産する専業工場へと転換することになる。

 鳥取オンキヨーが、これまで生産してきたスピーカーなどのオーディオ機器は、トヨタに納めるカーナビゲーション機器メーカーに対して、供給してきた製品など。

 「鳥取オンキヨーは、トヨタの取引先の1社として直接指導のもと、トヨタ生産方式(かんばん方式)を導入してきた経緯を持つ生産拠点。そのノウハウを活かして、効率的で、高品質、低コストでの製造が行なえる地盤がある。PC生産を横浜から移管した狙いもここにある」と、菅社長は、鳥取オンキヨーへの生産移管の理由を語る。

 さらに、リペア(修理)センター、コールセンター機能も、鳥取オンキヨーへと順次移管し、2008年6月をめどに、完全業務移管を行なうことになる。

 「リペアセンターは、生産拠点と連動できる場所に設置するのが最適。さらに、現在、外部に委託しているコールセンター機能も内部に取り込み体制を刷新し、オンキヨーのノウハウを活用することが得策と考えた。抜本的な改革を図るべく、人員を一層強化する。さらに生産拠点、リペアセンターと同じ場所におくことで、情報共有のメリットが図れる」と語る。

 今後、横浜の生産拠点やリペアセンター機能の存続については、「未定」とするが、鳥取オンキヨーに一本化する公算が強いと見られる。

 「生産、リペア、コールセンターの3つの機能を1カ所に集中して、最高の性能、機能と最高の品質を目指した『倉吉発 MADE IN JAPAN』モデルを実現する。すべての生産工程を日本人が行なう体制とすることも、高い品質づくりにつながる」。

 ソーテック製PCに対して依然として残っている、品質に対する悪印象を、オーディオ機器生産で高い実績を持つ鳥取オンキヨーへの体制移管によって払拭する考えだ。

●営業領域でもシナジー目指す

 加えて、ソーテックでは、オンキヨーとのシナジー効果の第2弾として、営業拠点の移転統合を進めており、すでに、福岡、名古屋、広島で、オンキヨーの営業拠点との統合を完了している。今後、大阪でも拠点統合を図る考えだ。

 量販店向け営業においては、オンキヨーと重複している部分があったことから、これを共有化することで、営業体制の合理化/最適化のほか、お互いの営業ノウハウを活用できるようになるとしている。

 オンキヨーには、PC向けのオーディオ関連周辺機器を取り扱うオンキヨーマーケティングがあるが、これらの営業部門においてはPCに関する知識が蓄積されていることから、これを利用したPC販売の強化も見込むことができよう。すでに、東京・東日本橋のソーテック本社内に、オンキヨーマーケティングの一部部門が入居するといった動きも出ている。

 また、オンキヨーが開発したオーディオPC「HDC-2.0Aシリーズ」をソーテックの販売ルートを活用することを決定。15日からソーテックルートを通じた販売を開始している。

 HDC-2.0Aシリーズは、オーディオ機能を強化したPCで、「音響マイスター」と呼ばれるオンキヨーの技術者が認定した音質水準を達成しているのが特徴。ソーテックの直販サイトおよび量販店での販売を行なう。

オンキヨーブランドのオーディオPC「HDC-2.0Aシリーズ」

 「量販店において、じっくりと音を聞いていただき、購入する場を提供する」として、PC売り場において、実際に音を聞くことができる形で展示する考えだ。

 ソーテックでは、今後もオンキヨーとの連携を強化していく考えで、シナジー効果による拠点の最適配置や、物流システムの最適化なども検討していくという。

●体質改善に取り組む菅体制

 ソーテックは、昨年(2007年)9月、新社長に元東芝の菅正雄氏が社長に就任してから、オンキヨーとの協業体制を強化しながら、経営体質の見直しに着手してきた。

 菅社長は9月の就任直後に、10~12月の下期決算(決算期の変更に伴い変則的)における黒字転換を宣言。公約通りに、営業黒字を達成してみせた。

 「これまでのソーテックの問題は、約束を実行できないところ。出荷日にしても、ずれるということが多かった。約束したものを必ずやり遂げるという体質を徹底したい。下期黒字化の達成は、それを示したもの」と語る。

 黒字化の要因は、オンキヨーとのシナジー効果による販売管理費の圧縮やコスト削減効果とするが、それに加えて、計画に対する実行度合いおよび進捗状況を、高い精度で、役員、社員が共有することが、業務改善成果として表れたと自己分析する。

 「立てた計画に対して、どう進捗しているのか、どんな効果がでているのか、なにが遅れているのかということを高い精度で、しかも、営業だけでなく、生産、サポート、経理などのあらゆる社員が共有することを徹底している。これにより、早いタイミングで、的確な対策が打て、それを組織的に動かすことができる。結果として、経営のブレがなくなり始めている」

 110人の社員数に留まるソーテックにとって、無駄な動きは命取りになる。

 「大手PCメーカーとは異なり、無駄を省き、効率的に動かなくては生き残れない。また、開発のスピードをあげ、技術トレンドの変化をいち早く捉え、大手PCメーカーに比べて、いち早く、最新技術を搭載した製品を投入することも進めなくてはならない。今後、名実ともに小回りが利く企業体質に変化していかなくてはならない」と語る。

 開発速度の向上、変化への対応をいち早く行なうために、同社が今後1年をかけて取り組んでいくのが、PCのプラットフォーム数の削減だ。

 現在、ソーテックのPCは、ベースとなるプラットフォームの数が、従来機種などを含めて、細かく数えていくと20種類にものぼるという。

 「開発のたびにプラットフォームの検証を行ない、そのためにコストと時間と、品質問題に影響を及ぼしている。自動車では1つのシャーシの上に、複数のボディが搭載されて、異なる車種が生産されている。PCも同じ考え方が可能。プラットフォームを5種類程度に削減することで、機種数を減らすことなく、開発および生産の効率化が図れ、開発速度の向上とコスト低減、品質向上につなげることができる」とする。

 プラットフォーム数を減らすことで、開発速度を高め、製品サイクルを短くする考えだという。

2月13日に発表されたソーテックブランドのデスクトップPC「PC STATION BA」(左)、「同PX」(中央)、ノートPC「WinBook WV2515P」(右)などの春モデル。ソーテック製品は細かく数えるとのべ20種類にものぼるため、今後プラットフォームの絞り込みに取り組むという

 菅社長の試算では、7割ほど開発期間が短くなると予想している。

 一方、菅社長は、「最近のエンジニアは、バイヤーといえる仕事しかしていない。いかに安く仕入れるかという点にしかフォーカスしておらず、設計仕様書よりも、部品の購入仕様書を書いているとはいえまいか。ソーテックの社員は、1つの仕事を専門的にやるのではなく、あらゆる領域に精通していなければ勤まらない。また、それを学ぶことができる点で大手PCメーカーとは異なる。全体を見通すことができるスーパーエンジニアが、PC産業には必要。そうした人材を育てていきたい」と語る。

●新コンセプトPCを年内投入へ

 ソーテックは、オンキヨーのオーディオ技術を取り入れた斬新なデザインの新コンセプトPCを開発することを明らかにしている。 オンキヨーのスピーカーを、ソーテックブランドのPCに取り込むといった動きもあり、ハイエンドモデルでの新コンセプトPCの投入のほか、ローエンドモデルでも新コンセプトPCを投入するという。

 「年内には、新コンセプトPCを形として投入し、ソーテックの顔となる製品を生み出したい」と菅社長は意欲を見せる。

 果たしてどんなPCが誕生するのか。そして、オンキヨーとのシナジー効果は、ソーテックの体質を変えることができるのか、また、ユーザーからの評価を変えることができるのか。

 いずれにしろ、オンキヨーとのシナジー効果によって、ソーテックは着実に生まれ変わろうとしているのは確かなようだ。

□ソーテックのホームページ
http://www.sotec.co.jp/
□オンキヨーのホームページ
http://www.jp.onkyo.com/
【2月1日】オンキヨー、高品位なHDオーディオPC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0201/onkyo.htm
【2007年10月30日】【大河原】就任1カ月のソーテック・菅新社長に聞く
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1030/gyokai222.htm
【2007年7月24日】【大河原】オンキヨー傘下入りの真相を、ソーテック社長に聞く
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0724/gyokai213.htm
【2007年7月2日】オンキヨー、ソーテックを完全子会社化
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0702/onkyo.htm

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(2008年2月25日)

[Text by 大河原克行]


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