2008 International CESレポート【Microsoft編】
次世代Windows Media Center“Fiji”で日本のデジタル放送をサポート
会場:Las Vegas Convention Center 会期:1月7日~10日 米MicrosoftのWindowsマーケティング担当副社長 マイク・シーバート氏は、International CESの開催期間中に記者会見を開催し、同社のWindows戦略などに関する報道関係者の質問に答えた。 この中で、シーバート氏は「いつの時期とは言えないがWindows VistaのWindows Media Center(WMC)で日本の地上デジタル放送をサポートする」と述べ、対応を改めて明らかにした。 また、新しいMedia Center eXtender(MCX)に対応した新しいデバイスなどを公開し、今後もコンシューマ向けのデジタルライフソリューションの拡大に努めていくとアピールした。 ●Windows Media Centerにおいて日本のデジタル放送をサポート MicrosoftがVistaのWMCで日本の地上波デジタル放送に対応する意向を明らかにしたのは、実は今回が初めてではない。2006年5月に米国で行なわれたWinHEC(Windows Hardware Engineering Conference)において、VistaのWMCで日本の地上波デジタル放送をサポートする計画があることを明らかにしている(関連記事参照)。その時には、Microsoftの調布テクノロジーセンター内に専門のチームを用意し、そのチームにより日本のデジタルTVの要件に対応するということがアナウンスされた。 その時点では2007年にはデジタル放送に対応予定としていたが、開発が難航したようで、結局2007年中に実現できなかった。だが、水面下では確実に開発は進んでおり、昨年(2007年)の末にはβテスターの募集も開始されるなど、ある程度形になりつつある。 今回シーバート氏は「いつとは言えないが、弊社はWMCで日本のデジタル放送をサポートする用意がある。WMCはVistaのSKUの中で最も出荷されているVista Home Premiumでサポートされている」と述べ、同社がWMCにおいて日本のデジタル放送をサポートすることを改めて表明した。 これまでは、Microsoftの幹部はこの手の質問に対して“いつかはサポートしたい”というような、やや慎重な受け答えだったのに対して、今回は明確にサポートすると言い切った背景には、前述のように準備がかなり進み、今年中には出荷できるめどが立ったからだろう。 ●次期WMCのアップデート“Fiji”でデジタル放送をサポート PCにデジタル放送の受信機能を搭載することはすでに可能だ。実際ナショナルブランドのPCメーカーはすでに2005年あたりからそうした機能をメーカー独自でPCに実装している。これは、ナショナルブランドのPCメーカーは、ほとんどの場合TVを作ることができるような技術力のあるメーカーであり、TVやHDDレコーダに実装されているような仕組みを独自でPCの中に組み込んでいるからだ。 しかし、そうした技術を持たない海外のPCメーカーや中小のホワイトボックスPCメーカーなどはそこまでのコストをかけることが難しい。海外のPCメーカーは、資金力に余裕があるため、日本の独立系のチューナカードベンダなどと協力して生産可能だが、ホワイトボックスPCメーカーはそうした余裕が無いため、デジタル放送の受信機能を実装できなかった。しかし、OS側、この場合はWMCにおいて標準機能として実装されれば、そうした問題も解消され、ホワイトボックスPCメーカーであってもデジタル放送の受信機能を実装することができるようになる可能性がでてくるのだ。 OEMメーカー筋の情報によれば、Microsoftはこうしたデジタル放送の仕組みを、次世代のWMC、開発コードネーム“Fiji”(フィジー)と呼ばれる製品でサポートする。FijiはVistaに実装されているWMC“Diamond”(ダイアモンド)"に次ぐバージョンとなる。FijiはWinodws XP Media Center Edition 2005(コードネーム“Symphony”)のUpdate Rollup2(コードネーム“Harmony”)のようにWindows Updateを通じて配布されることになる。 Fijiでは、TVチューナの新しいドライバモデルがサポートされる。それがPBDA-KS(Protected Broadcast Driver Architecture Kernel Streaming)と呼ばれるデジタルチューナのドライバだ。PBDA-KSを利用することで受信したデジタル放送を、なんらかの暗号化鍵(日本の場合はB-CASカードになる)を利用して暗号化を解除し、再度Windows Media DRMを利用して暗号化してHDDなどに格納する。HDDに格納されたデータはWindows Media DRMを利用して暗号化されており、ビデオカードから出力される場合には、COPP/HDCPを利用してデジタル出力から出力される場合にもコンテンツを保護する仕組みが採用されている。なお、昨年のWinHECでは、ISDB-Tと呼ばれる日本のデジタル放送向けの機能として、BML、SI/EPG、ライブでのHD/SD変換などの機能があることがすでに明らかにされている。
ただし、課題も残されている。1つには、B-CASカードをどのように提供してもらうかだ。B-CASカードはB-CASから、デジタル放送の要件を満たした企業に対して提供され製品にバンドルされることを許されるが、現在B-CASがB-CASカードを提供している企業はいずれも大企業で、中小のホワイトボックスメーカーなどに提供されるのかは明らかではない。そもそもどのようにすればB-CASカードが発行されるのか、その基準すら公開されていない中で、規模が小さいホワイトボックスメーカーにそれが可能なのかは、正直わからない。 実際、大手OEMメーカーの関係者によれば、現在の大手メーカーのデジタル放送チューナは、マザーボードと一対になっており、他の機器では利用できない(そうしないとB-CASの要件を満たせないのだと指摘する関係者は多い)。こうした対応がホワイトボックスメーカーに可能なのかと言われれば、疑問も残る。そのあたりも課題となるだろう。 しかし、MicrosoftがFijiでこれらをサポートするとした以上、それらに関しても何らかの解答が見つかったのだと考えることができる。今後の動向には期待したいところだ。 ●MCXはv2に進化してローカルでのコンテンツのデコードに対応 このほかMicrosoftのブースではMCXの最新版(v2)に対応したデバイスなどが展示された。Microsoftの展示員によれば、MCX v2と以前のMCXとの違いは、MCXのローカルに動画などのデコーダを持っているかどうかだ。 以前のMCXではPC側でデコードしたものをストリームデータとして転送していた。このため、PCでのCPU負荷率がどうしても上がってしまうという弱点があった。そこで、MCX v2では特定のコーデックに関してはローカルにデコーダを備え、PCからは純粋にデータだけをストリームするので、PC側の負荷は少なくてすむのだ。もちろん、MCXのデコーダでサポートされない形式に関しては、従来通りPC側でデコードされてMCXに送られるので、互換性に関しても心配する必要はなさそうだ。 CESではHPがMCX v2を内蔵したTVを出展したほか、SamsungがTVの拡張スロットに実装するタイプのMCXを、D-Link、Linksys、HPなどがTVに接続するタイプのMCXを展示した。
□2008 International CESのホームページ(英文) (2008年1月11日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
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