2008 International CESレポート【NVIDIA編】 NVIDIA、Hybrid SLI技術を正式発表
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Hybrid SLIについて紹介する、NVIDIA Desktop Technical Marketing DirectorのTom Petersen氏 |
会場:Las Vegas Convention Center
Sands Expo and Convention Center/The Venetian
会期:1月7日~10日
NVIDIAはInternational CESが開催されている米ラスベガスにおいて製品説明会を開催。かねてよりアナウンスがあった、チップセット内蔵グラフィックと外付けグラフィックの組み合わせによるマルチGPU技術「Hybrid SLI」を正式にアナウンスした。このHybrid SLIに対応するチップセットは「nForce 700aシリーズ」で、製品名のとおりAMDプラットフォーム向けの製品となる。
また、DirectX 10をサポートするグラフィックコアを統合したチップセットである「GeForce 8200」も同時に発表。こちらでは、VC-1アクセラレーションなどをサポートする、機能強化されたPureVideo HDをサポートしている。
●目的の異なる2つのモードを持つHybrid SLI
「Hybrid SLI」はチップセット内蔵グラフィックと、PCI Expressスロットに接続した外付けビデオカードを連携して機能させる技術である。従来のSLIが基本的にパフォーマンス向上のみに焦点を当てた技術であるが、Hybrid SLIは消費電力対性能の向上と、パフォーマンスのみの向上という、異なる目的を持った2つのモードをサポートするのが大きな特徴となる。
電力対性能を向上させるモードは「Hybrid Power」と呼ばれるものだ。この機能の要点は、チップセット内蔵“または”外付けビデオカードを選択してレンダリングを行なうというものだ。パフォーマンスを必要としないときはチップセット内蔵グラフィック、パフォーマンスが必要なときは外付けビデオカードによるレンダリングを行なう。内蔵グラフィックを利用しているときは、外付けビデオカードの電力をカットすることで消費電力を抑制することができるのである。
この管理のために、チップセットと外付けビデオカードをつなぐPCI Expressインターフェイス上にSMBUSを設け、特定のコマンドを送ることで外付けビデオカードの電力供給をON/OFFできる。この機構が必要なため、利用においてHybrid Powerに対応したビデオカードが必須となる点には注意が必要だ。つまり、Hybrid Powerは次期製品でサポートされることになる。
ちなみに、Hybrid Powerではレンダリングを行なうGPUを切り替えて利用することになるわけだが、ディスプレイ出力ポートを都度切り替える必要はなく、外付けビデオカード側でレンダリングした内容も、チップセット内蔵グラフィックが確保しているメインメモリ上のフレームバッファへ移動し、ディスプレイへの出力をこちらから行なうことができる。
2つのGPUのどちらを利用するかの切り替えについては、今回の説明会では手動切り替えのデモが実施された。ただし、これは初期ドライバによるものであり、Windows Vistaの電力管理と組み合わせ、こちらの動作モードに合わせて使用するGPUを切り替え可能となる予定だ。さらに将来的には使用するアプリケーションを判断して、自動的にGPUを切り替えられるようにもしたいとしている。なお、このHybrid PowerはWindows Vistaのみでサポートされることになる。
このほか、外付けビデオカード2枚以上を利用して行なう従来のNVIDIA SLIと組み合わせて利用もできる。省電力モード時はビデオカード2枚とも電力がカットされる仕組みになっている。
NVIDIA SLIとHybrid Powerを組み合わせた際の電力メリット。NVIDIA SLIではアイドル時でも大きな電力を消費するが、Hybrid Powerならビデオカード側の電力はゼロにできる | NVIDIA SLIとHybrid Powerの組み合わせは、電力消費が落ちることに加えてノイズ軽減にも効果がある |
もう1つのモードは「GeForce Boost」と呼ばれるもので、こちらは内蔵グラフィック“と”外付けグラフィックの両方を利用してレンダリングを行なうものとなる。つまり、従来のNVIDIA SLIに近いもので、2つのGPUを同時に動作させて別々のフレームをレンダリングさせるモードとなる。
GeForce Boostではパフォーマンス向上にフォーカスしているほか、Hybrid Powerとは異なり、常に外付けビデオカードへ電源供給が行なわれている状態なので、外付けビデオカード側からもディスプレイ出力が行なえるのも特徴だ。もちろん、Hybrid Powerと同じく外付けビデオカード側でレンダリングしたものをチップセット内蔵グラフィックのフレームバッファへ転送して、そちらの出力端子からディスプレイへ送るということもできる。
また、このGeForce Boostは、先のHybrid Powerとは異なり、SMBUSを利用した外付けビデオカードの管理を必要としない。そのため、既存ビデオカードと組み合わせて利用できるのも大きな特徴となっている。
なお、先述のHybrid PowerとGeForce Boostのどちらのモードを利用するかについては、NVIDIA Control Panelに設定が用意されるほか、Vistaの電源管理で指定しておくことで、こちらと連動して切り替えることもできるようになる。Vistaの電力管理との連動を利用すれば、ノートPCで利用するときにも、AC接続時はGeForce Boost、バッテリ駆動時はHybrid Powerに切り替えることが自動化されることになるのである。
Hybrid PowerとGeForce Boostの切り替えは Vistaの電源管理との連動や、NVIDIA Control Panelから行なえる | もちろんノートPCにおけるHybrid SLIも意義が大きいが、現時点では提案のみで具体的な製品計画はコメントされていない |
●Hybrid SLIをサポートするnForce 700aシリーズ
チップセットの紹介を行なった、NVIDIA Desktop MCP Products General ManagerのDrew Henny氏 |
これら、Hybrid SLIをサポートする最初のチップセットとなるのが、nForce 700aシリーズとGeForce 8200だ。いずれもAMD向けプラットフォームの製品となり、Intelプラットフォーム向けの対応製品は今年第2四半期に登場予定。
nForce 700aシリーズは。3-way SLIに対応する最上位モデルの「nForce 780a SLI」、x8×2の2-way SLIに対応する「nForce 750a SLI」、そして、PCI Express x16を1スロットしか持たないローエンドモデルの「nForce 730a」の3モデルがラインナップされる。価格帯はそれぞれ250ドル以上、120ドル以上、80ドル以上のセグメントとなる。
このうち、nForce 730aはGeForce Boostのみに対応し、Hybrid Powerはサポートされない。nForceシリーズはゲーマー向けのATXフォームファクタ製品であり、それなりの性能のビデオカードを装着するのが前提と考えられている。上位モデルではNVIDIA SLIを利用する際に消費電力削減の要求も強いが、SLIをサポートしないnForce 730aでは消費電力削減の要求が小さいと判断したようだ。また、性能をそれほど必要としないユーザーであれば、microATXのGeForce 8200という製品がある。この製品とのセグメント分けをハッキリさせるためにHybrid Powerサポートが省略された可能性も小さくはなさそうである。
nForce 780a SLIのブロックダイヤグラムは、先に登場したIntelプラットフォーム向けの「nForce 780i SLI」同様に、PCI ExpressスイッチであるnForce 200を組み合わせた構成となる。とはいえ、nForce 200の採用は、チップ内でPeer to Peer通信が行なえることで3-way SLIを効率化するためである。nForce 780i SLIとは異なり、nForce 780a SLIのMCPはPCI Express 2.0をネイティブサポートしているのである。よって、nForce 780i SLIとは異なり、nForce 200との接続もPCI Express 2.0となる。
また、メモリコントローラを必要としないAMD向けチップセットであるため、基本機能はMCPのみの1チップで完結する。このこともあって、nForce 750a SLIは完全に1チップでPCI Express 2.0の2-way SLIをサポートできるようになっている。
そのほかの仕様は、USBポート数に違いはあるものの、nForce 780i SLIに近く、管理機構のESAもサポートしている。
そして、これらnForce 700aシリーズは、Hybrid SLIに対応するということで、nForceブランドではあるもののグラフィック機能が内蔵されていることになる。ディスプレイ出力はHDMIもサポートしているが、デジタル出力×1、アナログ出力×1となっており、DVI×2やDVI+HDMIといった構成は取れない。
なお、この内蔵されるグラフィックについては、同時に発表されたGeForce 8200と“パフォーマンスの違いがないもの”という。まったく同じものという可能性もありそうだが、GeForce 8200についてはPureVideo HDサポートが明言されているのに対し、nForce 700aについては、この当たりがコメントされていないなど、姿勢に違いがある。この内蔵グラフィックの仕様については現時点で詳細が分かっていない。
nForce 780a SLIのリファレンスボード。チップセット内蔵のSATA×6に加え、JmicronチップによるSATA×2をIOリアパネル脇に備わっており、eSATA実装を意識した作りになっている | 同リファレンスボードのIOリアパネル。D-Sub15ピン、DVI-Dをそれぞれ備える |
PureVideo HDの新機能の紹介を行なった、NVIDIA PureVideo Marketing ManagerのPatrick Beaulieu氏 |
もう1つのHybrid SLI対応チップセットとなるGeForce 8200は、microATXフォームファクタ用のチップセットで、1チップ構成となる。同社製品で初めてDirectX 10に対応するMotherboard GPUだ。このGPUについては、GeForce 8400 GSと同等のアーキテクチャが採用されているとのことだが、それ以上の、例えばシェーダプロセッサなどの詳しい仕様はコメントを得られていない。
このGeForce 8200はHybrid SLIのHybrid Power、GeForce Boostともにサポート。また、先述のとおりPureVideo HDにも対応するが、このPureVideo HDも機能強化がなされており、第2世代で採用されたH.264のビットストリーム処理の支援に加え、VC-1のハフマン復号処理もハードウェアアクセラレーションできるようになった。
この効果としては、コストメリットが大きくアピールされた。例として示されたのは、200ドルのPhenom 9500に対し、50ドルのAthlon 64 X2 3800+でもコマ落ちなくHDビデオを再生できるとしている。また、このときの消費電力も後者のほうが小さく、冷却機能をシンプルにできることで低ノイズで楽しめるというメリットもある。もちろん、ディスプレイ出力はHDMIもサポートしている。
ちなみに、このVC-1のハードウェアアクセラレーションは、従来と異なるハードウェアエンジンを実装しているわけではなく、G86/84以降で実装されたVideo Processor 2(VP2)とドライバ側のサポートによって実現されている。
GeForce 8200のブロックダイヤグラム。基本的な構成はnForce 700aシリーズと大差ない | GeForce 8200では、同社では初めてVC-1のハードウェアアクセラレーションが可能なPureVideo HDがサポートされ、主要なHD CODECをすべてカバーすることができるようになった |
GeForce 8200を搭載する、GIGABYTEの「GA-M78UM-S2H」 | 同製品のI/Oリアパネル。D-Sub15ピンに加え、DVI-IとHDMI出力を備えており、アナログ/デジタル各1系統のみの出力となるnForce 780a SLIなどに比べ、ディスプレイ出力周りの機能メリットは目立つ |
□2008 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□NVIDIAのホームページ(英文)
http://www.nvidia.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.nvidia.com/object/io_1199686779262.html
□関連記事
【2007年12月27日】NVIDIAが提唱する「ESA」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1227/nvidia.htm
【2007年12月19日】【多和田】3枚のビデオカードで並列描画を行なう「3-way SLI」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1219/tawada123.htm
【12月18日】NVIDIA、Intel CPU向けチップセット「nForce 780i/750i SLI」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1218/nvidia.htm
(2008年1月8日)
[Reported by 多和田新也]