■大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」■ NEC Directが挑む2つの新事業

NECパーソナルソリューション事業部の那須俊彦事業部長

　NEC製のカスタムメイドPCを柱とするPC直販事業を行なう「NEC Direct」が、事業拡大に向けた新たな施策を開始し始めている。

　1つは、今年(2007年)前半から開始したオリジナルPCによる事業拡大。そして、もう1つは、社内で「eライフソリューション」と呼ぶ新たな施策だ。これらの新領域における売り上げ構成比は、2009年度には、NEC Direct全体の3分の1にまで拡大する計画。さらに、これをトリガーに、NEC Direct全体の売り上げ規模も2007年度比1.5倍にまで引き上げる計画だ。

　NEC Direct事業を統括するNECパーソナルソリューション事業部の那須俊彦事業部長は、「カスタムメイドモデルによる直販ビジネスだけでも、年率2桁増の拡大は維持できるものの、それ以上の成長には限界がある。NEC Directの特徴を活かすことができる新たな領域へと事業を拡大することで、2008年度には、NECの全PC出荷台数の約10%を、NEC Directによって占めることができるようになる」と語る。

　今年から来年(2008年)にかけてが、新たな事業に向けた地盤づくりとなる。

●NEC Directオリジナルモデルを強化

　では、NEC Directが取り組む新規事業領域を見ていこう。

　1つめは、NEC Directオリジナルモデルの強化である。

　NEC Directでは、今年2月にレーザーマーキングによるメッセージ刻印サービスを開始したのに続き、6月6日には、サンリオとのコラボレーションPCである「LaVie G ハローキティモデル」を300台限定で発売。10月31日にはこの第2弾モデルを、NEC Direct限定モデルとして販売を開始した。さらに、7月には磁性体塗装を天板に施した3DデザインPCや、レーザーマーキングによるラグナログオンラインPC、10月には日産自動車とのコラボレーションPCを発売。「X-TRAIL」、「マーチ」の2つの車種に展開した。

NEC DirectオリジナルPCのLaVie Gハローキティモデル	日産自動車とのコラボレーションPC「X-TRAIL」(右)と「マーチ」(左)

　「機能、性能といったこれまでのPCの選択肢に、感性軸という選択肢を加えた。デザイン、コンテンツなどの要素を加えることで、これまでにない驚嘆と感動を与えるPCが提供できたと自負している。価格競争に陥らない付加価値ビジネスが展開できる」と那須事業部長は語る。

　実際、NEC Directオリジナルモデルは、台数限定の初代ハローキティモデルを完売。そのほかのモデルも、限定数量とはしていないが、いずれも好調な売れ行きを示しているという。

　同社では、2月に予定しているNEC Directのサイトリニューアルにあわせて、新たに複数のオリジナルモデルを投入するとともに、2008年3月までの間に、4～5機種の新オリジナルモデルを投入する予定。2007年度だけで、合計で約10機種のNEC Directオリジナルモデルを投入する計算になる。

　「2008年度は、さらに多くのNEC Directオリジナルモデルを用意したい」として、自動車メーカーとの協業や、環境支援を視野に入れたオリジナルPCの投入などが見込まれそうだ。

●eライフソリューションによる新たな提案

　もう1つの新たな施策が、社内で「eライフソリューション」と呼ぶ、ソリューション型の販売戦略だ。

　那須事業部長自らが、こだわって命名したというeライフソリューションには、その言葉の通り、PCやインターネットを活用して、より生活を豊かにするための提案が含まれる。

　「もっと趣味を楽しみたい、もっと生活を豊かにしたいといった提案を行ないながら、それに最適な機器をNEC Directとして販売する。『モノ』からの提案ではなく、やりたいことはなにかといった『コト』からの提案へと事業領域を拡大するのが狙い」

　その大きな一歩となるのが、11月30日から開始した「All About」(オールアバウト)との協業だ。

　All Aboutは、ガイドと呼ばれる専門家が、約500のテーマにわたり、ユーザーに情報を提供している生活総合情報サイト。その道のプロと呼ばれる人たちがガイドになっており、生活の知恵や、こだわりの使い方などを提案している。

　今回の協業では、All Aboutのサイト内に、新たに「プロのこだわりPC活用術」を開設。ガイドが、趣味や生活の観点から、PCやデジタル機器を中心とした利用スタイルを提案するというもの。ガイドが推奨するカテゴリーに含まれる製品や、こだわりに最適な製品などを紹介。これをNEC Directとリンクさせて、サイトから購入できるようにする。サイトでは、単体での販売もあるが、ソリューションを実現するためのPC、ソフト、周辺機器、サービスなどを組み合わせたセット提案も行なう。

　「PCを中心とした生活スタイルの提案を通じて、ユーザーの生活や趣味に最適な商品を提供する」という。

　11月30日からは、「写真撮影」、「オーディオ・ビジュアル」、「遠距離コミュニケーション」の3つのテーマでコーディネートした商品を提案。PCやデジタルカメラなどの27品目を、NEC Directから直接購入できるようにした。

　サービスを開始して数週間であることから、成果を問うには時期尚早ともいえるが、それでも「プロのこだわりPC活用術へのアクセスは日に約1万pv。そのうち、NEC Directに誘導できたのは約2,000pv。5%程度をNEC Directに誘導できればいいと考えていたが、それを大きく上回っている」と、予想以上の出足となっている。

　「1月には、ダイニングなどで活用するPCや、名刺によるセルフブランディングといったテーマを追加する予定。その後も毎月2～3テーマずつ追加し、年度内には、約10種類のテーマでの提案が可能になる。さまざまなガイドの方々と話し合うことで、幅広い生活利用提案を行ないたい」としている。

　これにあわせて、周辺機器、ソフト、サービスなどの取り扱い品目を増加。現在、約3,000品目の取り扱いを、来年には3,500品目以上に拡大する考えだ。

　那須事業部長は、「All Aboutとの協業については期間を限定したものとは考えておらず、長期に渡って継続していきたい」という。また、「将来的には、All Aboutのガイドの提案をもとに、オリジナルPCの製品化にもつなげたい」としている。

●店頭での展示を25店舗に拡大へ

　もちろん、カスタムメイドPCの販売強化にも取り組んでいる。

　その1つがNEC Directによる店頭販売の強化だ。

　今年前半にはわずか数店舗だった量販店店頭でのNEC Directコーナーは、現時点では18店舗に拡大。さらに、来年度には25店舗程度にまで拡大することになるという。

　ここでは、店頭在庫は持たないものの、売り場担当者が来店客に商品を説明。店頭からWebを通じて発注するという仕組みを採用している。

　「店頭でしっかりと説明することで、購入につながりやすくなる。また、NEC DirectオリジナルPCに直接触れていただける場としての役割も担っている」という。

量販店店頭のNEC DirectコーナーではオリジナルPCを展示。来年には展示店舗をさらに拡大する予定だ

　さらに、カスタムメイドやオリジナルPCの生産強化のために、NECパーソナルプロダクツの米沢事業場において、NECダイレクト向けの生産ラインを確保。供給体制の確立にも余念がない。

　毎年2月に実施しているサイトリニューアルは、2008年も同時期に予定されており、「一方的に情報を提供するのではなく、双方向コミュニケーションを行なう形でのサイト構築を目指す。ユーザーの意見を継続的にサイトに反映させていくことで、ユーザーとともに成長、進化する総合提案型サイトを目指す」という。

　NEC Directの動きは、ますます活発化しそうだ。

□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□NEC Directのホームページ
http://www.necdirect.jp/
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(2007年12月17日)

[Text by 大河原克行]