MemCon Tokyo 2007レポート【メモリ市場編】
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会期:11月13~14日
会場:東京コンファレンスセンター・品川
「MemCon Tokyo 2007」では初日と2日目の最後に、半導体メモリ市場を展望する講演が組まれていた。いずれも主催社である米国のDenali Software, Inc.のアナリストが講演したものである。
●DRAMの市場規模はすでに飽和
初日の講演は、半導体メモリ市場全体を概観する内容だった。最初に結論から入っており、現在の半導体メモリ市場は、「DRAMとPC」を中心とする市場から、「NAND型フラッシュメモリとコンシューマ(民生/家電)」を中心とする市場へと変化していると述べていた。
市場規模の推移から明確にみてとれるのが、半導体メモリ市場の主役がDRAMからフラッシュメモリに移行しつつあることだ。'90年~2007年の半導体メモリ市場をメモリ品種別にみていくと、DRAM市場は'95年に過去最高の400億ドルを記録した後、ずっと伸び悩んでいる。2006年のDRAM市場規模は300億ドル強である。これに対し、フラッシュメモリ市場は'90年代前半にはほぼゼロだったのが'90年代後半から急速に成長し、2006年にはDRAMには及ばないものの300億ドル弱の市場を築き上げた。特に2000年に入ってからは、フラッシュメモリでもNAND型が成長を牽引した。
講演では次に、テーマを2007年の状況に移した。ビット数換算でみると、DRAMとフラッシュメモリの成長率は依然として高い。ただし価格の変動が金額ベースでの市場規模を大きく左右した。DRAMはビット数換算で82%と高い伸びを示すものの、価格はかなりの勢いで下がりつつある。主力品種であるDDR2の512Mbit品は、65%も値下がりした。ただしDRAM全体での価格低下は40%未満で、特にグラフィックス用DRAMとモバイル用DRAMは10%程度しか下がっていないと指摘していた。
NAND型フラッシュのビット換算成長率は2007年に150%強ときわめて高い。価格は40%程度の値下がりと相当に低下しているものの、ビット数換算での成長が値下がりを補っている。NOR型フラッシュの成長は比較的堅調で、ビット数換算の成長率は25%と推定した。価格は、少なくとも2007年第4四半期までは安定して推移する。
2007年のDRAMとフラッシュメモリの状況。ビット数換算での伸びを示した | DRAMとNAND型フラッシュメモリのチップ単価の推移。DRAMは2007年前半に値下がりし、NAND型フラッシュは2006年後半に値段を下げていたのが2007年前半に値上がりしている |
DRAMとNAND型フラッシュメモリの主役交代は、容量当たりの単価と出荷総容量の推移をみても事実となりつつあることがわかる。かつては最も安価な半導体メモリとは、DRAMのことだった。実際、2000年には1MB当たりの価格(MB単価)はDRAMが0.97ドル、NAND型フラッシュが1.35ドルでDRAMが安かった。両者のMB単価は2000年以降もそれまでと同様に低下していくが、低下のペースはNAND型フラッシュが速かった。2004年にはMB単価がDRAMは0.17ドルだったのに対し、NAND型フラッシュは0.10ドルとなり、最安メモリの地位はNAND型フラッシュのものになる。2007年におけるNAND型フラッシュのMB単価は、DRAMの4分の1に過ぎない。
出荷総容量(チップの記憶容量×出荷チップ数の総計)でも逆転が起こった。2000年の出荷総容量はDRAMが3,000万GB、NAND型フラッシュが110万GBで圧倒的にDRAMが強かった。それが2005年にはほぼ同じ程度になり、2006年にはDRAMが3億4,000万GB、NAND型フラッシュが6億GBと逆転する。今後もその差は開き、2008年にはNAND型フラッシュがDRAMの4倍もの記憶容量を出荷することになりそうだ。
DRAMとNAND型フラッシュメモリの1MB当たりの価格(MB単価)の推移 | DRAMとNAND型フラッシュメモリの出荷総容量(単位:100万GB)の推移 | DRAMとNAND型フラッシュメモリの2008年を予測したもの。DDR3はまだ普及せず、普及期は2009年以降になるとみている |
●NAND型フラッシュの市場拡大が続く
2日目は、今後の半導体メモリの主役となる、NAND型フラッシュメモリに焦点を当てて詳しく論じた講演内容だった。
初めに、NOR型フラッシュメモリとNAND型フラッシュメモリの市場を分析してみせた。2000年以降でみると、NAND型フラッシュの市場は大きく成長しているのに対し、NOR型フラッシュの市場はあまり伸びていない。2005年以降は、NAND型の市場規模がNOR型を上回る状況が続いている。
出荷されるフラッシュメモリ・チップの記憶容量を分析してみると、NAND型とNOR型では大きな違いがある。NAND型で最も出荷数量が多いのは8Gbit品、主流の容量は512Mbit品~8Gbit品となっている。ところがNOR型では主流の容量は16Mbit品~256Mbit品であり、NAND型よりも小さな容量範囲をカバーしているのだ。もともとNAND型はデータ記憶用、NOR型はプログラム記憶用という用途の違いがあった。両者とも、必要な容量が増大していくことは同じであるものの、増加ペースの違いがここまで大きな開きを生んだことになる。
講演では続いてNAND型フラッシュメモリのメーカー動向について解説した。NAND型フラッシュのトップ企業は韓国Samsung Electronicsであり、金額ベースで約45%のシェアを占める。続いて2位の東芝が21%、3位の韓国Hynix Semiconductorと米SanDiskがともに12%のシェアを占めるという順位になっている。
NAND型フラッシュのメーカー動向で目立つのは、設備投資比率の大きさである。2007年の設備投資額は業界全体で103億ドルにも上る。2007年のNANDフラッシュ市場は世界全体で150億ドルと推定しているので、売上高の3分の2に相当する金額が生産能力の拡大に注ぎ込まれることになる。半導体業界は製造業の中では設備投資比率が高いものの、この高さは異常とも言える。ちなみにDRAMの場合、業界全体の設備投資額は125億ドル、市場規模は300億ドル強なので、売上高に占める設備投資の割合は4割前後となる。
□Denali Softwareのホームページ(英文)
http://www.denali.com/
□MemCon Tokyo 2007のホームページ
http://www.denali.com/memcon/tokyo2007JP.html
□関連記事
【11月19日】【MemCon】NANDフラッシュがHDDを追いかける
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1119/mct.htm
【11月16日】【MemCon】デジタル家電がDRAMを牽引へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1116/mct.htm
(2007年11月20日)
[Reported by 福田昭]