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MemCon Tokyo 2007レポート【フラッシュメモリ編】
NANDフラッシュがHDDを追いかける

インテル NAND事業部リサーチサイエンティストの作井康司氏

会期:11月13〜14日

会場:東京コンファレンスセンター・品川



 「MemCon Tokyo 2007」のフラッシュメモリ関連では、NAND型フラッシュメモリを内蔵した外部記憶装置の講演が非常に興味深かった。IntelによるNAND型フラッシュおよびSSDの講演と、ソニーによる業務用ビデオカメラ向けメモリカード「SxS(エス・バイ・エス)」の講演である。

●Intelのフラッシュメモリ技術とSSD

 Intelは講演で、フラッシュメモリの原理とビットエラーの発生メカニズムを最初に説明した。フラッシュメモリの代表的なセルであるフローティングゲート型セルではゲートが2層構造になっており、選択ゲートのほかに、絶縁膜にくるまれた電気的に浮遊している(フローティングな)ゲートが存在する。このフローティングゲートに電荷を注入することでトランジスタのしきい電圧(トランジスタがON/OFFする境目となる電圧)を変え、「1」あるいは「0」のデータを書き込む(プログラミングとも呼ぶ)。

フローティングゲート型フラッシュメモリセルの構造。ゲートが2層構造になっており、上側が選択ゲート兼制御ゲート、下がフローティングゲートと呼ばれている。講演者の作井氏は、絶縁膜にくるまれたフローティングゲートを「蚕の繭」に例えていた フローティングゲート型フラッシュメモリセルの動作原理。フローティングゲートに電荷(実際には電子)を注入してトランジスタのしきい電圧を変え、目的のデータを書き込む

 プログラミング後のしきい電圧が2種類あり、それぞれが「1」あるいは「0」に対応するというのが通常の不揮発性メモリの記憶方式である。1個のメモリセルに1bitのデータを記憶させる。ところがフラッシュメモリでは、1個のメモリセルに2bitのデータを記憶させる「MLC(Multi-Level-Cell)」と呼ばれる記憶方式が考案され、製品化されている。2bit記憶のMLCは、しきい電圧が4通りある。MLCの登場によって1bit記憶方式は「SLC(Single-Level Cell)と呼ばれるようになった。1bit記憶ではしきい電圧のレベルは2通りあるため、厳密にはシングルレベル(1個のレベル)ではないものの、便宜上SLCと呼ばれていると理解してもらえればありがたい。

 メモリセルのしきい電圧が何通りかあるといっても、実際の書き込んだしきい電圧には、ある範囲のばらつきがあり、目標のしきい電圧を中心とした高い山のような電圧分布となる。高い山同士は実際には一定の電圧間隔で離れているため、「1」と「0」のしきい電圧を読み出し動作時に区別できる。

 2bit記憶方式(2bit/セル)の大きな問題点は、レベルが4通りあるために、プログラムしたときの電圧分布をSLCに比べるとばらつきの少ない急峻な山にしておく必要があることだ。MLCではSLCよりも、製造プロセスや書き込み装置などのばらつきを抑えることを意味する。言うのは簡単だが実現はかなり難しく、最初に書き込んだときにはきちんとした電圧分布でも、何年も時間が経過したり、書き換えを数百回〜数千回繰り返したりすると、しきい電圧のばらつきが大きくなり、隣接するレベルにひっかかってしまうことがある。このエラーはRBE(Raw Bit Error)と呼ばれており、エラーの発生率(RBER)をいかに低く抑えるかかがMLCタイプのフラッシュメモリの課題となっている。

 エラー発生率を抑えるための重要なポイントは、ゲート絶縁膜の品質である。データの書き換えを繰り返すと、電子の注入と引き抜きによってゲート絶縁膜にわずかな損傷が発生する。この損傷が積み重なるとリーク電流が増大したり、電子トラップが数多く形成されたりして、書き換え動作がうまくいかなくなり、保持していたデータが失われる。フラッシュメモリでは、ゲート絶縁膜の品質に対する要求は論理LSIやDRAMなどに比べると極めて高い。講演では、エラーが発生するリーク電流の値の違いを具体的な数値を挙げて説明していた。論理LSIで10のマイナス7乗アンペア、DRAMで10のマイナス12乗アンペアであるのに対し、フラッシュメモリでは10のマイナス25乗アンペア(データ保持時間が10年保証の場合)未満しか許されない。

 このため、ゲート絶縁膜の品質改善努力や書き込み装置のばらつき低減などだけでは、Gbitオーダーの大容量NAND型フラッシュメモリでMLCを導入したときのエラー率をSLCなみに低減することは、実際には難しい。エラー訂正回路(ECC)の助けを借りるのが現実的である。

フラッシュメモリにおける不良の発生メカニズム。書き換えを繰り返すことによってゲート絶縁膜にダメージが少しずつ入り、リーク電流や電子トラップの増大を招く 書き換え回数の増加に伴ってビットエラーの発生確率が増える
書き換え回数とビットエラー率(RBER)の関係。実デバイスのデータ。書き換えを繰り返すと、ある回数から急速にエラー率が増えていく エラー訂正コード(ECC)がエラーの発生率を減らす効果。1bitのECCでもエラー率は劇的に改善する

 フラッシュメモリの原理とエラーに関する説明を完了したところで、講演のテーマはSSDに移った。米Intelはフラッシュメモリを含む不揮発性メモリの開発では30年以上の歴史を有しており、特にフローティングゲート型に関して豊富な経験を備えているとのアピールがあった。そしてIntelのNAND型フラッシュメモリ技術とシステム技術が、不揮発性メモリのソリューションであるSSDに結実していると主張していた。またIntelがSSDを手掛けたのは非常に早く、'87年には1MBのSSDを開発していると述べた。

 現在では、主に3種類のSSDをラインナップしている。HDDの置き換えを狙う大容量/高速のSSD(シリアルATA)、比較的小型の外部記憶装置に向けたSSD(パラレルATA)、HDD用キャッシュに向けたSSD(「Intel Turbo Memory」)である。HDDとSSDの消費電力の違いや、SSDにおける書き換え負荷の平準化技術などを誇示していた。

Intelにおけるフローティングゲート型不揮発性メモリ開発の歴史。EPROMの時代を含めると、30年を超える歴史があるという Intelが'87年に開発したSSDのボード写真。32KBのNOR型フラッシュメモリを搭載しており、最大記憶容量は1MB。フラッシュメモリがセラミック封止のパッケージであることといい、周辺回路を含めたICが見える範囲ではすべて挿入実装品であることといい、時代を感じさせる 最新のSSD製品。シリアルATAインターフェイスを搭載し、HDDの置き換えを狙う。外形寸法は2.5インチおよび1.8インチ。記憶容量は80GB
SSD製品のラインナップ HDDとSSDの消費電力の違い。上がHDD、下がSSD(図中にHDDと表記されているのは誤り)。当たり前のことだが、モーターのないSSDは待機時に電力をほとんど消費していない フラッシュメモリにおける書き換えの平準化技術。特定のブロックに消去が集中すると、そのブロックだけ劣化が早まる危険性が高い。そこで論理アドレスから物理アドレスへの変換時に、書き換え回数の少ないブロックを書き換えることで全体の書き換え履歴を平準化し、書き換え寿命を伸ばす。消去回数のばらつきを10%未満に抑えた例

●ソニーの超高速フラッシュメモリカード「SxS」

 続いてはソニーのNANDフラッシュメモリカード「SxS」に関する講演の概要を紹介しよう。製品名を「SxS PRO」と称するこのメモリカードは、業務用ビデオカメラで撮影した映像を格納することを目的に開発された。ソニーとサンディスクが共同で仕様を策定し、ソニーがこの9月21日に製品化を発表している。また「SxS PRO」のスロットを2基備えた業務用ビデオ・カメラ「XDCAM EX」もソニーが同日に発表済みだ。いずれも出荷時期は11月下旬としている。

ソニー テクニカルマネージャの筒井敬一氏 業務用ビデオカメラの映像記憶媒体として開発した。写真は「SxS PRO」対応した最初のビデオカメラ「XDCAM EX」

 「SxS PRO」カードの仕様は、PCI Expressのカード規格であるExpressCardに準じた。PCI Expressを採用したのは、データ転送速度を高めるためである。フォームファクタは、幅が34mmと小さな「ExpressCard/34」を採用した。外形寸法は34mm×75mm(幅×高さ)、ピン数は26ピンとなる。ビデオ・カメラ用途であることから、小型化を重視してExpressCard/34を選択したと講演では説明していた。

ExpressCardの概要。3種類のフォームファクタがある中で、最も小さなExpressCard/34を採用した 「SxS PRO」の概要。動作温度範囲が-25度〜+65度、耐衝撃性能が1,500G(Gは重力加速度)、耐振動性能が15G、落下耐力が150cmと、業務用ならではの高信頼性仕様になっている。カードコネクタには挿抜寿命が3万回の高信頼性品(標準的なコネクタの寿命は1万回)を採用した

 最初に発売される「SxS PRO」には、容量16GBと8GBの製品がある。読み出し時のデータ転送速度は100MB/sec、書き込み時(映像記録時)のデータ転送速度は80MB/secと非常に高い。データ転送速度の向上は非常に重要で、NANDフラッシュメモリの容量が増えていったときには、容量の拡大にあわせてカードを読み書きする速度を高めていくことが不可欠だと述べていた。

 カードへのアクセス制御には3種類のモードがある。読み出し/書き込み両対応、読み出しのみ、アクセス禁止の3つである。使用状況に応じ、モードを変更できるようになっている。

 今後の展開としては、2008年に記憶容量が32GBの大容量品を製品化する計画である。このほか、転送速度や消費電力、価格などが異なる派生品への展開を検討している。

アクセス容量による読み出し性能と書き込み性能の違い。ソニーのPC「VAIO」で測定した。1,024KB以上のブロックにアクセスすれば、100MB/secの読み出し性能と80MB/secの書き込み性能が出せる さまざまなNANDフラッシュメモリのデータ転送速度の比較
SxSメモリーカードの仕様構成。PCI ExpressおよびExpressCardの仕様上に、ホストのデバイスドライバ仕様と記憶メディアのフォーマット仕様を定義した。なおPCI ExpressおよびExpressCardのシミュレーションモデルには、Denali Softwareの「PureSpec」を利用した SxSメモリーカードの通信階層

□Denali Softwareのホームページ(英文)
http://www.denali.com/
□MemCon Tokyo 2007のホームページ
http://www.denali.com/memcon/tokyo2007JP.html
□関連記事
【11月16日】【MemCon】デジタル家電がDRAMを牽引へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1116/mct.htm
【4月16日】ソニー、PCI Express採用の業務用カメラ向けメモリ「SxS」(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070416/sxs.htm

(2007年11月19日)

[Reported by 福田昭]

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