VistaかXP、どちらがいいかと、さほどPCに詳しくない知り合いにまで尋ねられる。個人的にはもうXPには戻りたくないというのが本音だが、理不尽なバグが、まだまだたくさん残っているのも事実だ。SP1が出るまでこの状況は続くのか、あるいは、SP1が出てもこのままなのか。 ●XPのツケ 久しぶりに学校時代の友人からメールが届いた。もちろん同年輩、そして主婦である。何かと思ったら、PCの買い換えの相談だった。今、手元にあるのは、もう10年近く使っているPCだとかで、本人もすでに老衰ご臨終を自覚しているという。 メールによれば、彼女の周りには、VistaよりもXPを勧める人が多いのだそうだ。たぶん、多くのパワーユーザーは、Vistaの不具合を知っているだろうし、導入によるデメリットも理解している。その不具合のおはちが自分に対して回ってくるのはやっかいなので、無難にXPを勧めるのかもしれない。ただ、実際に量販店などでは、もはやXP搭載のPCを見つけるのは難しい。Vista搭載PCはXPにダウングレードする権利があるそうだが、そこまでしてXPに戻すというのも、一般のユーザーにはハードルが高い。 パワーユーザーは、まだXPがいいと思っているだろうが、機が熟すタイミングも見逃さないだろう。それまではXPを使おうと心に決めている。今はXPがいいと思っているから、XPを勧めるのだが、ある時点で、いっせいにVistaに乗り換える。 パワーユーザーの助言に従い、なんとかXP搭載PCを見つけて購入したユーザーがいたとしよう。10年はありえないにしても、彼らは、パワーユーザーよりも、きっと長くPCを使う。そして、ある時点で、なんらかのトラブルに遭遇し、購入時に相談に乗ってもらった知り合いにヘルプを求める。だが、そのときに、その知り合いは、Vistaに移行しているにちがいない。同じWindowsなのだから似ているといえば似ているが、そのころには、XPのことについては記憶の彼方に追いやられているかもしれない。「よくわからないよ」などと言われたり、挙げ句の果てには「Vistaにしたら」とか言われた日には、どうしていいかわからなくなるだろう。でも、それは、いかにもありがちな光景だ。 仕方がなくて書店に向かい、トラブル関連の書籍を探そうとするも、書棚はVista関連ばかりだ。そこまでして自己解決しようとするユーザーは褒めてあげていい。きっと救われるだろう。でも多くのユーザーは他力本願だ。インターネットで検索すらしようとしない。だから、ベンダーのサポートにヘルプを求める。そしてそれがサポートコストを高め、PCの価格に上積みされる。 自分で移行の時期を決め、機が熟すのを待てるのがパワーユーザーだ。いつでもVistaに移行できるし、決めたら行動は迅速だ。でも、初心者ユーザーはそうではない。だからぼくは、どんなに理不尽なことがあろうとも、今の時期にPCを買い換えるのなら、Vista搭載PCにこだわることを勧める。たとえ、それでトラブルに陥ったとしても、それを解決するために身につけたノウハウは、今後のためになるからだ。でも、XP搭載PCのトラブル回避はそうじゃない。 ●大量のパッチが意味するもの 先日、手元のノートPC数台を工場出荷時の状態にリカバリした。それなりに時間のかかる作業だが、メーカー製のノートPCに関しては、そのPCに対して加えた変更をすべて記録しているので、その手順に従えば、仕事をしながら脇に置いて進められる。こうして日常の環境を復元していく。 現時点で、VistaをプリインストールしたPCにOffice 2007を入れた状態で、Microsoft Updateを適用すると、48個の更新が見つかってインストールされる。総ファイルサイズは50MBを超える。ベンダーごと、あるいは出荷時期によって更新プログラムが多少異なるようで、比較的最近のPCでは、最初の初期設定時に1個の更新が組み込まれ、さらに13個が適用され、Officeに対してさらに10個の更新が必要だった。この数字は明日になれば、また増えるかもしれない。大ざっぱな数でいえば、春出荷モデルが50個、夏出荷モデルが30個、秋出荷モデルが25個といったところだ。 VistaプリインストールPCといえども、使い始めるまでには、相当の時間がかかることがわかるだろうか。新品のPCでこれなのだ。もはや、自宅にブロードバンドが引き込まれていなければ、新しいPCを購入しても、まともに使えないといってもよさそうだ。 たとえ、来年になってSP1が出たとしても、各ベンダーが自社製のPCで正常動作するかどうかを検証するのには、それなりの時間がかかるので、春モデルがwith SP1で出荷できるとは限らない。 出荷されて1年のVistaでさえこうなのだから、今、新品のXP搭載PCを購入したら、いったいどのくらいのパッチが適用されるのだろう。それこそ、気が遠くなるほどの時間がかかるにちがいない。それを初心者ユーザーにあてがうのは酷だ。 マイクロソフトとOEMベンダーの契約が、どのようになっているのか、寡聞にしてその状況には詳しくないが、少なくとも、プリインストールのHDDイメージを決定する時点でのホットフィックスは、導入済みの状態で出荷ができるようになっているべきだと思う。製品の出荷時期によって更新プログラムの数が異なることを見ると、当然、そうなっているのだろうと予測できるが、それでもその数の多さには閉口する。ファイルサイズは大きくても、累積パッチが毎月出るようになっていれば、今月のパッチを適用するだけですむのだから、心理的な抵抗は低くなるんじゃないだろうか。 ●バグ退散 いずれにしても、時代は確実にVistaに向かって動いているのであって、企業なども、そろそろ重い腰を上げて移行の準備に取りかかっているはずだ。特に、今月のWindows Updateで配布されたKB941649パッチは、、少し前からダウンロードすることができたが、これによって、かなり安定した印象を受ける。少なくとも、2GBを超えるファイルを削除できないようなあきれたバグは消え失せてくれたようだ。とはいうものの、海外から日本など、レイテンシの高いネットワークで、巨大なファイル(といっても1GB程度)をダウンロードするのに失敗するようなバグは相変わらず残っている。XPならこういうことは起こらないのだから明らかにVistaの不具合だ。こうした細かいバグを、SP1に向けて、どのようにフィックスしていくか、ここはひとつ、マイクロソフトには、昨年の出荷時以上にがんばってほしいと思う。ここが本当の正念場だ。
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(2007年11月16日)
[Reported by 山田祥平]
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