大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

第3世代となった「インターネットAQUOS」の大きな進化
~液晶TVの周辺機器としての訴求も




 シャープが、「インターネットAQUOS」の新製品を発表した。

 実は、第3世代目となる今回の新インターネットAQUOSは、「当社が、AVセンターPCの時代から培ってきた大画面TV接続PCにおける、1つの集大成といえるもの」(シャープ情報通信事業本部通信融合端末事業部新規事業推進センター 笛田進吾所長)と位置付けられる製品だ。

 その集大成の意味には、従来の中心購買層となっていたPCユーザーを対象とした製品仕様に留まらず、TV購買層を強く意識した製品へと進化している点が挙げられよう。

 その進化を象徴する製品が、「PC-AX30V」だ。録画用のHDDを搭載せず、さらに、AQUOSファミリンク対応とすることで、液晶TV「AQUOS」や、HDDレコーダ「AQUOSハイビジョンレコーダー」の周辺機器として商品提案ができる環境を実現。接続可能なAQUOSも、4シリーズ40モデル以上と、一気に拡大を図った。

シャープ 笛田進吾所長 インターネットAQUOSと接続可能なTVのラインナップ

 PC-AX30Vの価格設定を、昨今の液晶TVの急激な値下がりにあわせて、32型液晶TVの実売価格を越えない設定とした点からも、AQUOS周辺機器としての位置付けを強く意識したことが浮き彫りにされる。

 そして、売れ筋モデルの「AX80Vでは、白、黒、赤という3色を用意したのも、AQUOSとの連動性を強める狙いからである。

 これらの観点からも、新インターネットAQUOSが、TV購買層を強く意識した製品となっていることがわかるだろう。

第3世代のインターネットAQUOS

●存在感を増すインターネットAQUOS

 今回のインターネットAQUOSの強化は、同事業が着実に成長していることの証といえる。

 BCNランキングによると、デスクトップPCにおけるインターネットAQUOSのシェアは、昨年(2006年)10月には2.9%だったものが、今年(2007年)10月には5.6%に拡大。インターネットAQUOS が存在感を増していることがわかる。

第2世代のインターネットAQUOSは、店頭でも存在感を示した

 そして、第2世代インターネットAQUOSの購入層の傾向が、第1世代のそれに比べて、大きく変化していることも、シャープの描く方向へと着実に向かっていることを示している。

 第2世代のインターネットAQUOSの変化として、まず挙げるられるのが女性の購入が増えたことだ。

 初代モデルでは16.2%だった女性比率が、第2世代では22.1%にまで拡大している。とくに、24~37歳の女性の購入が急速に増加しているのだ。これらの女性ユーザーは、1人暮らしやプライベートルームで、TVとPCを利用するという用途で購入しているケースが多いという。

 そしてもう1つの見逃せないポイントが、ファミリー層の購入が増加している点である。

 第2世代モデルでは、実に44%がファミリー層の購入。そのうち、51%が32型の液晶TVとセット購入しているのだ。

 PCとしての利用と、TVとしての利用を共存させた使い方が、ファミリーや女性へと広がっていることがわかる。

●TV購買層への新たな用途提案

 新インターネットAQUOSでは、「AQUOSユーザーに対して、TVの新たな使い方、新たな楽しみ方の提案の1つとして、インターネットAQUOSの商品訴求を行なう」として、AQUOSユーザーを、重要なターゲットとしていることを明かす。

 そのための戦略製品が、録画ユニットなしのAX30Vとなる。

 「AX30Vは、フルハイビジョンや大画面のAQUOSを購入したユーザーに対して、TVの新たな価値を提案する製品。ファミリンク対応AQUOSを購入済みのユーザーに対して、単体で販売するといった提案も可能になる」。

 シャープには、国内液晶TV市場で40%台の高いシェアを維持するAQUOSとの連動提案ができるという大きなアドバンテージがある。シャープ同様に、大画面TV接続PCを発売している富士通やソニーにはできない提案ともいえる。そして、このアプローチは、これまでのインターネットAQUOSにはなかった新たな手法となる。

 連動性を高めるために、インターネットAQUOSに付属しているタッチパッドリモコンを利用することで、液晶TVの操作や接続したレコーダの操作も可能になり、ファミリンクならではの特徴を実現している点も見逃せない。

 さらに、PCメニュー画面のインターフェイスを一新するとともに、新たに「ネット動画ナビ」を用意。Yahoo!との提携によって、Yahoo!動画をはじめとするネット上の動画を、700種類のキーワードから、リモコンで検索することができる。TVにおけるネット動画視聴をシームレスに行なえる環境を実現しているのだ。

インターネットAQUOSに付属したタッチパッドリモコンで、PC、液晶TV、AQUOSハイビジョンレコーダーの操作が可能 一新されたPCメニュー画面。リモコンのチャンネルボタンにあわせて12個のメニューを用意している 新たに搭載したネット動画ナビ。TVにおけるネット動画視聴をシームレスに行なえる環境を実現した

 また、接続可能な液晶TVが、これまで32型止まりだったものが、「AQUOS G」シリーズで提供される52型までを接続できるほか、PC-AX30Vでは、「AQUOS R」シリーズとの接続を実現していることから、最大65型の液晶TVまで接続できるようになった。

 「郊外型の店舗では、TV売り場とPC売り場が近い例が多く、連動提案がしやすい。また、都市型量販店でも、AQUOSの周辺機器として、液晶TV売り場にインターネットAQUOSを展示してもらえるような提案を行ないたい」とする。

 店頭展示の多くは、20型のD10ラインとの展示となりそうだが、大画面AQUOSとの展示もいくつかの店舗で見られることになりそうだ。

 もちろん、従来製品からのインターネットAQUOSの主要ターゲット層を狙う製品として、売れ筋となるAX80V、最上位のAX120Vの強化も見逃せない。個人の部屋に、地デジ対応TVと組み合わせて設置できるPCを求めているシングル層や、PCとしての高い性能を求めるユーザーに対して訴求する考えだ。

 インターネットAQUOSは、第3世代への進化とともに、AQUOSの周辺機器という選択肢を用意した。

 「液晶TV、そして“AQUOSハイビジョンレコーダー”とのセット提案という、シャープの総合力を生かした訴求が、インターネットAQUOSの販売増加の原動力になる。第3世代では、ファミリー層の購入比率を過半数に、そして、32型以上との組み合わせを3分の1にまで引き上げたい」と、笛田所長は語る。

 インターネットAQUOSの提案手法は、他のPCにはない領域に入ってきたといえる。

□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□インターネットAQUOSの製品情報
http://www.sharp.co.jp/i-aquos/products/ax120v/
□関連記事
【11月7日】シャープ、TV/レコーダと連携できる「インターネットAQUOS」新モデル
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1107/sharp.htm

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(2007年11月8日)

[Text by 大河原克行]


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