日立GST、容量1Tbit/平方インチが可能なHDDヘッド技術10月15日 発表 株式会社日立製作所と株式会社日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)は15日、1Tbit/平方インチの容量を実現可能にするHDDヘッドの基本技術を開発したと発表した。 今回発表されたのは、次世代のHDD磁気ヘッドの1つとして期待されているCPP-GMR方式(Current Perpendicular to Plane - Giant Magneto-Resistive)のノイズを抑制する技術。CPP-GMRは、ヘッドの素子の膜面に対して垂直に電流を流し、微少な磁界信号を読み取る方式。垂直方向へ流す電流の面積が小さくなるほど、記録密度が向上する。 CPP-GMR方式は微細化に向いているとされるが、外部の磁界信号の変化に対して素子の抵抗が変化する度合い(磁気抵抗変化率)が小さく、実用化にはノイズ抑制などによりS/N比を高める必要があった。そのため、微少な磁界信号から高い出力が得られるTMR(Tunnneling Megneto-Resistive)方式が広く採用されていた。だが、TMR方式にも弱点があり、微細化によってヘッド素子の抵抗が大きくなり、読み取り信号以外のノイズが増加。TMR方式では500Gbit/平方インチを超えると正しい読み出しが行なえなくなるという懸念があった。 今回の技術は、微細化に向いたCPP-GMRにおいて、ヘッドの読み取り信号の出力増強、ノイズ抑制の2つを実現し、記録密度を向上させるというもの。 信号出力の強化には、加える磁界の向きによって電子の拡散の度合いが大きく異なる「高電子スピン散乱材料」を採用。この材料を用いた多層膜材料を開発し、磁界に対する素子抵抗の変化(出力)を強め、従来のCPP-GMRから3~4倍に出力を向上させた。 ノイズ抑制には、絶縁膜中に直径数nm程度の金属の電導領域を新たに設け、薄膜方向へ流れる経路として利用する「電流狭窄ナノ構造膜」を開発。これにより、読み出される信号出力の増大が可能になり、電導領域のサイズや配置で素子抵抗を最適値に調整できるという。 「高電子スピン散乱材料」のみを用いた場合、大きなノイズが発生して高出力化の効果がなくなってしまったが、「電流狭窄ナノ構造膜」を組み合わせることでノイズ抑制に高い効果があったという。 これらの技術により、再生トラックの幅が50nm、同30nmのCPP-GMRヘッドを試作。2.5インチHDD環境での測定結果は、50nmでS/N比40dB、30nmでS/N比30dBだったという。今後、さらなるS/N比の向上が可能としており、30nmクラスのヘッドでは、1Tbit/平方インチの記録密度が実現できる。 □日立製作所のホームページ (2007年10月15日) [Reported by yamada-k@impress.co.jp]
【PC Watchホームページ】
|