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ARM、マルチコアの高性能/低電力組込みCPU
「Cortex-A9」

Cortex-A9のブロックダイアグラム

10月15日 開催



 アーム株式会社は15日、マルチコア構成に対応した高性能/低電力の組込み向けCPUコア「Cortex-A9」の記者説明会を都内で開催した。

 Cortex-A9は4日(英国時間)に発表された、高性能/低消費電力を実現した組込み向けのCPU。マルチコア構成に対応することで高い性能スケーラビリティを持つのが特徴で、高クロックのシングルコアと比較して、安価かつ低消費電力で高性能を実現できるという。

 また、投機的アウトオブオーダー実行と、複数命令発行の8段からの可変長スーパースカラパイプラインを持ち、1サイクルあたり最大4つの命令を実行可能。従来の「ARM MPCoreテクノロジー」との互換性も持っており、従来のOSやミドルウェア、アプリケーションを実行可能。

 Cortex-A9は既にNECエレクトロニクス、米NVIDIA、韓国Samsungなどの複数パートナーから採用が発表されており、搭載製品を順次出荷するとしている。

●高性能/低消費電力/低コストを実現

アーム 代表取締役社長 西嶋貴史氏

 発表会の冒頭では、アーム 代表取締役社長 西嶋貴史氏が挨拶。同氏は、ARMコアを搭載したチップが2006年で24.5億個出荷している実績を掲げ、「これは我々のCPUコアが従来との互換性を保った結果であり、将来に渡って継続するアーキテクチャという保証がされているからだ。2010年にはこの2倍となる50億個の出荷を目指す」と話した。

 また、今回の新製品だけでなく、ARM7/9/11などの従来製品のライセンスも順調に伸びていることを紹介し、「新たにCortex-A9が追加されたことで、さらにライセンス数が増加すると見込まれ、今後も順調に伸びていくだろう」と語った。

 一方で、性能の増加に伴う消費電力の増加も近年の課題としており、「我々は以前から低消費電力に注力してきた。Cortex-A9のマルチコア化によりさらに消費電力を削減できると確信している」と説明した。

ARM搭載チップの出荷数推移と予測 ARMコアのライセンス数の推移 同社は従来から消費電力の問題に注力し解決に向け取り組んできた

 アーム フィールドアプリケーションエンジニアリング ハードウェア担当 マネージャー 五月女哲夫氏は、「Cortex-A9は今日もっとも注目される高性能アプリケーションのために開発したものであり、マルチコア構成により2,000Dhrystone MIPS(DMIPS)以上の演算性能を実現できる。これまでにないパフォーマンスで、さまざまな携帯機器に新しい利用方法をもたらさすことができるだろう」と説明した。

フィールドアプリケーションエンジニアリング ハードウェア担当 マネージャー 五月女哲夫氏 ARMコアロードマップと、それぞれのコアの性能 製品名を解説すると、「Cortex」はファミリ名、「A」はタイプ、「9」は相対性能、「MPCore」はコアバリエーションを示す

 英ARM本社 Program Manager, MultiprocessingのJohn Goodacre氏は、「Cortex-A9のアドバンテージは、マルチコアにより性能スケーラビリティ、バッテリ駆動で有効な低消費電力だけでなく、さまざまなアプリケーションに対応するための豊富なコンパニオン製品を用意している点にもある。浮動小数点演算ユニット(FPU)やアドバンスドL2キャッシュコントローラだけでなく、科学演算向けの特殊用途アプリケーションプロセッサなども用意する」と説明した。

 また、現在PDAや携帯電話などのCPUはシングルコアのものが多いが、今後はマルチコアになるだろうとし、その理由として、「シングルコアと同等の性能を、デュアルコアやトリプルコアではより低コストで実現でき、消費電力も抑えられる。現在のPDAや携帯電話は1,000DMIPS以下の性能しかないが、それでも我々に素晴らしい経験を与えてくれている。しかしそれが将来、2,000DMIPS、3,000DMIPSへと変わった時、新しいアプリケーションが登場し、我々にこれまでにないもっと素晴らしい経験を与えてくれるだろう」と述べた。

英ARM本社 Program Manager,MultiprocessingのJohn Goodacre氏 Cortex-A9の概要。マルチコアのみならずシングルコアも用意される 対応するコンパニオン製品
Cortex-A9が目指すマーケットと性能 マルチコア化により低コスト/低消費電力化を実現

 NECエレクトロニクス マイクロコンピュータ事業本部 第一マイコン事業部 統括マネージャー 新井智久氏も発表会に招かれ、ARMとの緊密なパートナーシップを紹介。Cortex-A9を採用した製品については、「今後市場のニーズに合わせ、コスト重視のものと性能/機能重視の2製品を積極的に展開し、投入していきたい」と語った。

 なお、ARMのプロセッサ技術などを紹介する開発者向けイベント「ARM Forum 2007」は10月16日に東京コンファレンスホールで開かれる。Cortex-A9の詳細についてはこちらで紹介する予定。

NECエレクトロニクス マイクロコンピュータ事業本部 第一マイコン事業部 統括マネージャー 新井智久氏 現在のカーナビ向けCPU「NaviEngine1」をベースに、低コスト向けのものと、高性能/高機能向けの2製品を展開する予定

□アームのホームページ
http://www.jp.arm.com/
□ニュースリリース
http://www.jp.arm.com/pressroom/07/071004.html
□関連記事
【5月31日】【MPF2007】AMCCとARMの新プロセッサ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0531/mpf07.htm
【5月30日】【MPF2007】ARMv7のマルチプロセッサ拡張
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0530/mpf06.htm

(2007年10月15日)

[Reported by ryu@impress.co.jp]

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