村田製作所とエプソン、無接点式の
|
「ワイヤレス急速充電システム」の試作機 |
9月27日 発表
株式会社村田製作所とセイコーエプソン株式会社は27日、充電時間を短縮できる無接点式の急速充電システム「ワイヤレス急速充電システム」の共同開発に取り組むことで合意したと発表した。
電力伝送効率が70%の高効率伝送コイルと、急速充電が可能な入出力特性に優れたリチウムイオン2次電池を組み合わせることにより、無接点式でありながら、短時間での充電を可能としたシステム。伝送電力は15W前後で、主にモバイル機器の充電を対象としている。
村田製作所は主に2次側(バッテリ)モジュールの開発を担当。同社が現在保有する大容量セラミックコンデンサで培った量産技術や、ナノレベル粉体制御技術を活用した材料プロセスの応用により、内部抵抗が少ない入出力特性に優れたリチウムイオン電池を採用。独自のラミネートシール構造や積層構造などにより放熱性を高め、安全性にも優れるという。
バッテリモジュールに搭載される基板においても、村田製作所の小型/薄型部品の開発能力、小型モジュールの構造および電源回路の設計技術、熱温度やノイズ解析によるシミュレーション技術により、小型化と高効率化を実現できるという。
両社それぞれの担当部分 | 村田製作所が保有するさまざまな基盤技術 | 村田製作所が保有する急速充電が可能なバッテリ技術 |
エプソンは主に1次側(充電)モジュールの開発を担当。従来の無接点電力伝送では、伝送効率が30%と低く、急速充電に必要な大電流では大きな熱を発生してしまうなどの問題があった。しかし今回、エプソンが開発した独自の伝送モジュールとコイル駆動技術「AirTrans」を使用することにより70%の高効率を実現し、急速充電を可能とした。
デバイスID認証による機能も組み込まれており、充電電圧が違う製品などへの誤充電を防げる。さらに、金属探知を備えることで異物が充電器上に落下した時に伝送を停止する機能、温度探知を搭載することで過発熱による事故などを防げ、安全性にも配慮した。
両社は、同技術を採用することにより、従来1~2時間を要する既存の充電システムに対して、10~15分程度で充電できるだけでなく、これまで機器ごとに分かれていた充電器を1つにまとめることができ、ユーザーの利便性を向上させられるとした。今後3年以内で実用化を目指し、量産体制も整えるとしている。
エプソンのモジュールにより伝送能力と安全性を確保 | 充電システムの仕組み図 | エプソンの無接点式充電モジュールのロードマップ。0.5W対応品はもうすぐ出荷されるが、今回のシステムは15W対応品で2009年中を予定 |
●従来の不満を解消
発表同日に都内で開かれた記者会見では、村田製作所 執行役員 技術・事業開発本部 統括部長 戸川一也氏が挨拶。同氏は、「近年、機器の高性能化に伴い、駆動時間に対する不満が多くなった。これは単にバッテリの駆動時間そのものだけでなく、充電時間の長さも不満の1つといえる。今回新たに開発した新技術で、より気軽に、そして短時間で充電できるようになるため、後者の不満を解消できると確信している」と説明した。
村田製作所 執行役員 技術・事業開発本部 統括部長 戸川一也氏 | 従来の充電に対する不満を解消する技術 |
エプソン 半導体事業部 副事業部長 武田浩氏は、「我々はモジュールをIC化することにより高効率化を実現しただけでなく、ID認証や金属検知技術なども搭載し、安全性にも十分配慮した設計となっている。村田製作所のバッテリ技術と我々の無接点伝送技術を組み合わせることで、新たな市場を開拓していきたい」と述べた。
新製品のサンプル提供については2008年中、量産体制については2009年中に整えるとした。一方量産ラインについて両社ともに「現時点では何も決まっていない」としており、市場規模などについての見込みも立っていない状態としている。
会場では実際に試作したデモ機が用意され、駆動電圧が4.2Vの電池を15分程度で充電したことを確認できた。試作モジュールは充電側/バッテリ側ともに大型だったが、今後製品化に向けて小型化が進むと考えられる。また、電力密度に関しては現時点で既存の一般的なリチウムイオン電池より低めだが、製品化に向けて改善していくとした。
エプソン 半導体事業部 副事業部長 武田浩氏 | 新開発製品のデモ。右のグラフは充電池の電圧と時間推移、左のグラフは電圧から算出したバッテリ容量と時間推移。赤い線は従来のシステムで、緑の線が新開発の「ワイヤレス急速充電システム」。15分でほぼ満充電になったことがわかる |
□村田製作所のホームページ
http://www.murata.co.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.murata.co.jp/news/2007/070927.pdf
□セイコーエプソンのホームページ
http://www.epson.jp/
□ニュースリリース
http://www.epson.jp/osirase/2007/070927.htm
□関連記事
【2005年10月6日】【元麻布】ケーブルレスで複数機器に充電できるSplashpower
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1006/hot387.htm
【2007年5月23日】サンワサプライ、マウスパッドから給電するワイヤレスマウス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0523/sanwa.htm
(2007年9月28日)
[Reported by ryu@impress.co.jp]