大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

バッファローコクヨサプライがスタート
~弱者と弱者の組み合わせで何が起こるのか




斉木邦明社長

 8月1日付けで、株式会社バッファローコクヨサプライがスタートした。バッファローの親会社であるメルコホールディングスは2月、業務提携を発表。コクヨが資本参加していたアーベルと、バッファローのサプライ部門を統合し、サプライ事業を加速する。

 バッファローコクヨサプライの社長に兼務で就任するバッファローの斉木邦明社長は、「今年度見通しで90億円の事業規模。これを2010年には、200億円の売り上げ規模を目指し、サプライ市場におけるポジションを確固たるものにする」と事業拡大に意欲を見せる。新会社スタートを機に、バッファローコクヨサプライの事業戦略を、斉木社長に聞いた。


バッファローは、2004年6月にサプライ事業に参入しました。今回のバッファローコクヨサプライによる事業開始に至るまでの経緯を聞かせてください。

斉木 バッファローは、3年前にサプライ事業に参入して以来、独自に事業を拡大する方向を探ってきました。マウスでは1つのモデルに3つのサイズを用意し、品質にこだわったものづくりを進めるなど、それなりの存在感を発揮できたと自負しています。

マウス1モデルに付きM/S/USの3サイズを用意し、7色で展開してユーザーの選択肢を広げている

 しかし、これまで以上の事業拡大を考えると、このままでは限界があると感じた。自力でやるには、あまりにも時間がかかりすぎて、むしろ存在感が薄れることにもなりかねない。サプライ事業は、大型店舗における「面取り」(店頭におけるサプライ製品の展示スペース)が、重要な要素になる。面取りができればいいが、それができないとシェアを伸ばすことも、事業を拡大することもできない。この点では、面を持っている先行企業との協業、あるいはM&Aが必要だと考えていました。

大手量販店の再編が進む中、どう量販店店頭の面取りを進めるかは、サプライベンダーの生き残りを左右しますね。

斉木 時間的な猶予がない、もっとスピード感を持ってサプライ事業をやらなくてはいけない、という危機感はありました。そこで、当社ではさまざまな可能性を検討し始めました。今から1年半ほど前のことです。その中で、コクヨとの話し合いの場を持つことができました。

 コクヨが、アーベルに資本参加してから数年しかたっていませんでしたから、こちらにしてみれば、可能性が低い代表格のような位置づけでしたが(笑)、話をしてみると、お互いに多くの分野で補完関係にあることがわかってきた。

 アーベルには、バッファローにはない店舗での面取りの実績がありますし、PC用バッグや、当社が得意とするLANケーブル以外のケーブル分野での品揃えが多く、ラインアップも強化できる。当社の物流管理の仕組みを活用すれば、さらに効率化が図れることもわかった。

 量販店に強く、周辺機器のブランドとして高い実績を持つバッファロー、サプライ事業では歴史があり、店舗の面取りでも実績があるアーベル、オフィス用品の信頼のブランドとして、法人から高い評価を受けているコクヨの3つのブランドを活用することで、サプライ事業を加速できると考えています。

初年度の事業規模はどの程度になりますか。

斉木 旧アーベルで55億円、旧バッファローで35億円。合計で90億円という規模です。しかし、サプライ事業では弱者と弱者の結びつきでしかないですから、単に足し算になるだけでは意味がない。それぞれの相乗効果を発揮し、かけ算にできない限り、この協業の意味はないでしょう。

事業規模で見れば、エレコム、サンワサプライという企業が上位にいます。統合しても、業界2位のサンワサプライの半分の事業規模ですね。

斉木 弱者と弱者を足しても、まだ弱者の領域からは抜け出せない。早い段階で、1位、2位と肩を並べるところにいかなくてはならない。まずは、2010年に、200億円の事業規模を目指す。市場そのものは大きく成長するとは考えられませんから、当社がこの事業規模になれば、2位を争うことになる。とにかく、この3年で結果が出ると考えています。

どんな手を打ちますか。

iPodライクな「BOMU-RHW01/S」シリーズもユニークな製品の1つ

斉木 まずは、弱者の戦略です(笑)。とにかく、ターゲットを絞り込んで、その分野において、徹底してシェアを引き上げる手を打つ。これは、製品のターゲットを絞り込むというよりも、量販店におけるシェアを引き上げる、つまり、面取りの戦略を強化するということを指します。量販店との関係を強化していくことに力を注ぎます。アーベルには、この点での営業力はバッファロー以上のものがある。この力を最大限に発揮したい。

 そして、商品企画にも力を注ぐ。「これ、面白いね」と言われる商品を開発し、市場に投入していかなくてはならないと考えています。目新しいもの、奇抜なものもどんどん投入していきたい。社内には、いろんなアイデアが出ていますから、ぜひ楽しみにしていてください。量販店が展示したくなる商品、そして、エンドユーザーが欲しくなる商品を投入していきます。そして、もう1つは品質です。

バッファローのサプライ製品では、素材や工場の選定などにも力を注ぎ、すでに一定水準の品質を維持しているという見方もありますね。

斉木 バッファローのマウスを分解していただければ、当社が他社とどれだけ違う部品を使っているかがわかっていただけるはずです。しかし、残念ながら、アーベルの品質水準が、バッファローの水準に到達していなかった。

 そこで、今年4月以降この課題を解決するために、素材の選定や、工場の生産体制、品質検査体制の見直しに着手しており、その改善効果が見え始めています。品質は、これからも優先的にこだわっていきたい分野です。

バッファローとアーベルの合併効果はどんなところに出ますか。

斉木 やはりこの業界は数がモノをいいますから、これまで以上に数を追求することができるメリットは大きい。また、コスト削減効果も見逃せない。

 アーベルは、東京、大阪の2カ所に物流拠点を持っていましたが、これをバッファローの名古屋の物流拠点に一本化する。すでに大阪の物流拠点は7月16日に統合が完了した。8月19日には、東京の物流拠点も統合することになります。バッファローは年間3,000万点もの商品を取り扱っている。アーベルは、年間約500万点規模ですから、これを統合する効果は極めて大きい。年間で1億円程度のコスト削減に直結すると判断しています。

アーベルの本社はどうなりますか。

斉木 本社機能は、9月半ばに、名古屋にあるバッファローのハイテクセンター内に移転します。京都にあったアーベルの本社は、営業所として存続させます。社員は100人規模ですが、バッファローから15人程度、コクヨから5人程度が出向しますので、旧アーベルにとっては、約2割が新たな血ということになりますね。

 4月に買収が決定してから、7月には物流拠点の一本化に踏み出しています。これだけ短期間にやるというのがバッファローの力です。これからのバッファローコクヨサプライのスピード感には期待していてください。

製品ブランドはどうなりますか。

斉木 新たな製品は、すべてバッファローブランドで投入することになります。ただ、アーベルブランドが強い領域があり、それによって面取りができているところもある。アーベルブランドの既存製品は、アーベルブランドで継続していく考えです。

 一方、コクヨから仕入れて流通するコクヨブランドの製品もあります。これも継続的に取り扱っていきます。

3つのブランドを維持することで、メーカーとしてのメッセージが分散化する可能性はありませんか。

斉木 それぞれのブランドには、それぞれの特徴がありますから、それはないと考えています。ブランドを越えて、コラボレーションをしていくということも可能でしょう。

 例えば、コクヨが、バッファローブランドの無線LAN機器をオフィスの提案の1つとして取り扱うといったことも増えてくるはずです。松竹梅という言い方ができるかもしれませんが、高いブランド価値を持つコクヨ、やんちゃで、なにが出てくるかわからないバッファロー、そして、一番数が出るような商品を取り揃えているアーベルというような色分けもできるのではないでしょうか。もちろん、バッファローブランドが竹というわけではありませんよ(笑)。松の商品もどんどん出していきますからね(笑)。

今回の新会社のスタートで、上位2社と戦える体制が整ったと判断していますか。

斉木 いや、まだ戦える体制が整ったとは思っていませんよ。まずは、面白いといわれる商品を品揃えしてからですね。しかも、それを間髪入れずに投入できるようにならないと、体制が整ったとはいえません。

 事業の成長ではこれから3年が勝負だと考えていますが、それを左右するのは、この1年でどこまでできるかにかかっていると思っています。新会社のスタートにあわせて、市場にある流通在庫の処分も行なっている。

 今、アーベルの在庫は5カ月、バッファローは、2カ月半。これをあわせて市場在庫2カ月、社内在庫1カ月半という体制にしていかなくてはならない。もし、ここまでできたら、ようやく戦える体制が整った、といえるかもしれないですね。10~11月にかけては、ユニークな新製品を市場に投入できると思っています。これらの新製品を見ると、「バッファローコクヨサプライになって、変わったな」と思ってもらえると思いますよ。ぜひ、楽しみにしていてください。

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【7月13日】アーベル、バッファローのPCサプライ部門と統合
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【2004年6月17日】バッファロー、サプライ市場に参入
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0617/buffalo3.htm
【2005年6月23日】【大河原】バッファロー、サプライ事業1年の反省と反攻
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0623/gyokai129.htm

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(2007年8月1日)

[Text by 大河原克行]


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