●意外に少ないOutlook以外の同期ソフト 2005年の7月をもって、ソニーがPalm OSベースのPDAである「CLIE」の生産を完了、この分野から撤退してしまったのは、筆者にとっては大きな痛手だった(個人的にMyloはちょっと違う)。一時は、生産完了前に予備を購入しておこうかとも考えたのだが、結局それは止め、何とかPocket PCの世界への移行を敢行することにした。 CLIEシリーズを使っていた間も、時折、Windows Mobile/CEベースのPDA(以下、この種のデバイスをここではPocket PC機と呼ぶことにする)は評価のために試用する機会があったし、実際購入もしてきた。ウィルコムのスマートフォンであるW-ZERO3[es]も、あまり活用しているとは言い難いが、とりあえず持っていたりする。 それにもかかわらずCLIEをメインに据えていたのは、Outlookが好きではないからだ。Exchangeのクライアントとして使うのであれば、このソフト以外に選択肢はないのかもしれないが、筆者の好みには合致しない。PDAをCLIEからPocket PC機に変更する際に最大のポイントとなったのが、Outlookを使わずにどうやってPocket PC機を使うか、ということであった。 もちろんOutlookを使わない以上、サードパーティ製のアプリケーションを活用せねばならない。一口にPocket PC機といっても、そのOSには細かいバージョンの違いによる機能や仕様の差、特にセキュリティ関連の仕様には違いがある。加えて、組み込み機器用OSという性格上、同じバージョンであっても、機器メーカーが異なると、100%同じ仕様とは限らない。こうした細かな違いが、サードパーティ製のアプリケーションを用いて、PCとのデータ同期を行なう際の大きな障害となる。こればっかりは実機でテストするまで分からない。 ●Mac用「Missing Sync」を試す まず最初に白羽の矢を立てたのは、Macとサードパーティ製の同期ソフトである「Missing Sync for Windows Mobile」の組み合わせであった。Palmからの乗り換えで、いきなりMacかよ、という声が聞こえてきそうだが、この時点でPocket PCと同期可能なOutlook以外のWindowsアプリケーションが見つからなかったのである。かつてはPIMソフトというジャンルはそれなりに賑わっていたのだが、今や有力なソフトはOutlookに駆逐された印象が否めない。Lotusのオーガナイザ、ジャストシステムの「Sasuke」といったアプリケーションが更新されなくなって久しい。
その点、MacであればOutlookそのものが存在しない。Office Macには、Outlookに近いものとしてEntourageというアプリケーションが付属しているが、Outlookほどの勢力にはなっていない。代わりにMac OS Xには、標準でスケジュール管理ソフトの「iCal」、連絡先を管理するアドレスブックといったアプリケーションが標準添付されており、これらを使うのが一般的だ。Missing Sync for Windows Mobileも、これらの標準アプリケーションとPocket PC機を同期するようになっている。 ただ、手持ちのPocket PC機と同期を試みたところ、すべてのマシンで同期できたわけではなかった。下の表にある5種類の手持ちのPocket PC機のうち、最新の日本HP「iPAQ rx4240」だけはどうもうまくいかない。うまく同期できる[es]とOSのメジャーバージョンこそ同じだが、rx4240のOSには「Messaging and Security Feature Pack」の記述がある。要するに、通常のWindows Mobile 5.0よりセキュリティを強化してある、ということのようだ。
【表】テストに用いたPocket PC機
Missing Syncが出すエラーメッセージにも違いが見られる。うまくいった[es]では、最初に同期を試みた際、Mac OS上に「デバイスコンポーネントをインストール」と題したダイアログが表示され、この時[es]の画面上にはMissing Syncと同期を行なうエージェントのインストールを許可するかどうかのダイアログが表示された。エージェントがCABファイルとして[es]に転送され、それを[es]上で実行することでエージェントのインストールが行なわれる。
ところがrx4240ではこのインストール許可を求めるダイアログが表示されず、やがてタイムアウトを告げるエラーメッセージが表示された。どうやらrx4240側のファイアウォールがCABファイルの転送を拒んでいるようで、これでは同期できるハズがない。筆者は現時点で最新のVer 3.0.2を使っているが、このバージョンのサポートデバイスリストにもrx4240は掲載されていないから、どうやら問題はまだ解決していないようだ。
というわけで、最新のrx4240を諦めれば、Missing Syncを用いてMac上でPocket PC機の運用が可能であることが分かった。が、しばらく使っていて、足りないものがあることに気づいた。筆者はCLIE上でパスワードのような、見られては困るデータの管理に「SplashID」というソフトウェアを使っていた。幸いSplashIDにはPocket PC版もあり、そのままデータを移行できるのだが、PalmOS版、Pocket PC版とも、Windowsでしか動作しない。 Missing SyncでPocket PC機と同期可能で、なおかつパスワードなどの管理が可能なMac上のアプリケーションを探して切り替える、という手もあるのだが、データの移行作業が面倒だ。やはりSplashIDを使い続けたいということで、Macの仮想環境上にWindows XPをインストールし、そこにSplashIDをインストールして、パスワードなどだけ仮想環境内でActiveSyncを使って同期することにした。 これで一応、Outlookを使わずにPocket PC機を運用する体制ができたわけだが、いかにも無理矢理である。特に仮想環境まで持ち出しているあたりが見るからに不憫だ。もう少しスマートな同期ソリューションが欲しい。ということで探索を継続していたら、ついにWindows上で使えそうなアプリケーションが見つかった。(続く)
□関連記事 (2007年6月25日) [Reported by 元麻布春男]
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