デルのビジネスノート「Latitude」シリーズに、Intel GM965 Expressおよび新Core 2 Duoを採用した新モデルとなるLatitude D830が追加された。「Latitude D820」の後継モデルとして位置付けられた、ビジネスノートのハイエンドモデルとなる。 ●最新チップセットおよび新Core 2 Duo採用でパフォーマンスアップを実現 Latitude D830の最大の特徴は、Intelの最新チップセットおよび新Core 2 Duoを採用しているという点だ。 搭載されるチップセットは、Intel GM965またはIntel PM965となる。2007年6月11日現在では、チップセットとしてグラフィック機能内蔵のIntel GM965 Express搭載モデルのみの販売となっているが、今後Intel PM965 Express搭載モデルの登場も予定されている。 CPUは、FSBクロックが800MHz動作のCore 2 Duo T7xxxシリーズが搭載される。搭載可能モデルは、Core 2 Duo T7100からCore 2 Duo T7700までの4種類で、T7xxxシリーズ全モデルが選択可能となっている。Latitude D820で選択可能だったCore 2 Duoと比較して、CPU自体の動作クロックが底上げされているのに加え、FSBクロックが800MHzに上昇したことによりシステム全体のパフォーマンスアップが実現されている。 搭載されるメインメモリは、PC2-5300対応のDDR2 SDRAMだ。メインメモリはオンボードでは搭載されず、2スロット用意されているSO-DIMMスロットを利用して搭載することになる。同容量のSO-DIMMモジュールを2枚取り付けることによって、メインメモリのデュアルチャネル動作も可能となる。ただし、ユーザーがアクセスできるSO-DIMMスロットは1スロットのみとなっている。デュアルチャネル動作を実現したい場合には、あらかじめデュアルチャネル動作構成で購入するか、本体内部のSO-DIMMスロットに取り付けられているSO-DIMMモジュールと同容量のモジュールを増設するしかないので要注意だ。メインメモリの最大搭載容量は4GBとなっている。 ちなみにLatitude D830では、無線LANモジュールとして、IntelのIEEE 802.11nドラフト準拠モジュール「Intel Next-Gen Wireless-N」だけでなく、IEEE 802.11a/b/g対応の「Intel Pro/Wireless 3945ABG」、デルのIEEE 802.11nドラフト準拠モジュール「Dell Wireless 1505」およびIEEE 802.11a/b/g対応の「Dell Wireless 1490」なども選択可能となっている。今回試用した評価機ではDell Wireless 1505が搭載されていたため、Centrino Duoロゴは取得されていない。
●最大WUXGA表示対応の15.4型ワイドTFT液晶を搭載 搭載される液晶ディスプレイは、アスペクト比が16:10の15.4型ワイドTFT(UltraSharp)液晶を採用している。解像度は、1,920×1,200ドット(WUXGA)、1,680×1,050ドット(WSXGA+)、1,280×800ドット(WXGA)の3種類から選択可能だ。 堅牢性重視のビジネスノートである「Latitude ATG」に搭載される液晶ディスプレイのような高輝度バックライトは採用されておらず、輝度は200cd/平方m(nit)と、一般的なTFT液晶同等だ。とはいえ、発色や視認性は悪くなく、表示品質は十分満足できる。また、光センサーを利用した自動輝度コントロール機能も盛り込まれている。ただし、キーボードの[→]ボタンには、[Fn]キーとの併用によるキーボードライトのショートカットが刻印されているものの、Latitude D830にはキーボードライトは搭載されていないため、この機能は利用できない。 グラフィックチップは、チップセット内蔵のIntel GMA X3100が利用される。Latitude D820に搭載されていたIntel 945GM Express内蔵のIntel GMA 950と比較して、動作クロックの向上もあり3D描画能力がアップしている。もちろん、Windows VistaのAeroにも対応しており、実際に非常にスムーズな描画を体感できた。 ちなみにIntel GMA X3100は、現時点ではDirectX 9サポートとなっているものの、将来ドライバのアップグレードによってDirectX 10サポートになるとされているため、DirectX 10ベースのアプリケーションの利用も十分視野に入れられる。 また、チップセットにIntel PM965を搭載するモデルでは、当然外部GPUが搭載されることになる。現時点ではIntel PM965 Express搭載モデルはまだ投入されていないものの、外部GPUとしてNVIDIA Quadro 135M/140Mが搭載されることが公表されているため、より高い3D描画能力を必要とする用途に利用したいのであれば、Intel PM965 Express搭載モデルが登場するまで待つというのも1つの選択肢となるだろう。
●Intel Turbo Memory搭載 Santa Rosaの特徴の1つである「Intel Turbo Memory」。Latitude D830には1GBのIntel Turbo Memoryが標準搭載されており、Windows ReadyBoostおよびWindows ReadyDriveとしてそれぞれ512MBずつが確保されている。 Intel Turbo Memoryは、フラッシュメモリをキャッシュメモリとして利用することでHDDのアクセス性能(特にランダムアクセス性能)を向上させるためのものだ。Windows Vistaでは、高速なUSBメモリをキャッシュメモリとして利用するWindows ReadyBoostや、フラッシュメモリを搭載するハイブリッドHDDを利用可能とするWindows ReadyDriveという機能が盛り込まれているが、Intel Turbo MemoryはVista上ではWindows ReadyBoostおよびWindows ReadyDriveとして利用されることになる。 このIntel Turbo Memoryの効果だが、Intel Turbo Memoryの動作をONにした状態とOFFにした状態とで、PCMark05に含まれるHDD Test Suiteを行なってみたところ、以下のような結果が得られた。
【表1】Turbo Memory ON/OFF測定
この結果を見ると、XP Startup、Application Loading、General Usageなど、基本的にHDDへのランダムアクセスとなるテストでIntel Turbo MemoryをONにした方がパフォーマンスが優れていることがわかる。この結果からも、Intel Turbo MemoryによってHDDへのランダムアクセス性能が向上していることがよくわかるはずだ。ちなみに、HDDへのシーケンシャルアクセスとなるVirus Scanや、HDDへの書き込みテストとなるFile Writeの結果はIntel Turbo MemoryのON/OFFに関わらずほとんど違いが見られなかった。 ちなみに、実際に試用機を使っての体感では、Intel Turbo MemoryのON/OFFでそれほど大きな差は感じられなかった。これは、今回の試用機がメインメモリを2GB搭載していたためと思われる。おそらく、メインメモリの搭載量が1GB程度であれば、Intel Turbo MemoryのON/OFFで体感できるほどのアクセス速度の差が感じられることになると思われる。
●その他の仕様はLatitude D820を踏襲 チップセットやCPUなどの仕様以外に関しては、多くがLatitude D820を踏襲している。 搭載されるHDDは、2.5インチのシリアルATAドライブで、試用機では120GBのものが搭載されていた。ちなみに、製品発表時には、HDDとしてフラッシュメモリ搭載のハイブリッドHDDも選択できるとされていたが、今回確認した限りではBTOメニューにハイブリッドHDDは用意されていなかった。Intel PM965 Express搭載モデル同様、将来用意されることになると思われる。OSは、Vista Home Basic/Business/Ultimate(32bit版のみ)に加え、英語版のVista(選択できるエディションは日本語版と同じ)、さらにWindows XPも選択可能だ。 本体右側面には、着脱式の光学ドライブを取り付けるベイが用意されている。搭載可能な光学式ドライブは、2層書き込み対応のDVD±R/RWドライブに加え、DVD-ROM/CD-RWコンボドライブやCD-ROMドライブなどを選択できる。また、光学ドライブを外してダミーカバーを取り付けたり、セカンドHDD、セカンドバッテリを搭載することも可能だ。 本体左側面には、Type2 PCカードスロット×1とExpressCard/54スロット×1、IEEE 1394ポートを用意。また、内蔵無線LANおよびBluetoothを切り離すスライドスイッチも用意されている。このスライドスイッチは、周囲の無線LANアクセスポイントを検出するツールの起動ボタンを兼ねる点も従来同様だ。 本体背面には、Gigabit Ethernet、モデム、シリアルポート、ミニD-Sub15ピン、Sビデオ出力などの各ポートを用意。加えて、電源供給端子を備えるPowered USBコネクタも1ポート用意されている。ちなみにUSB 2.0ポートは本体右側面にも2ポート用意されている。
キーボードは、他のデルのA4サイズノートに搭載されているものと同じ、18mmピッチのフルサイズキーボードを搭載。アルファベットキーは縦横のピッチに差がなく、いわゆる7列キーボード配列でキー数が多く、非常に扱いやすい。タッチは適度な重さがあり、デスクトップ用キーボードを使い慣れている人にも違和感なく扱えるだろう。
ポインティングデバイスは、キーボード中央に配置されたスティックタイプの「トラックスティック」と、パッドタイプの「タッチパッド」の2種類が搭載されている。クリックボタンは双方に対応するよう2系統用意されており、好きな方を使い分けることが可能。もちろん、双方を同時に活かして利用することもできる。使い勝手も、双方とも申し分ない。 タッチパッド側のクリックボタン中央には、指紋認証用のセンサーが配置される(オプション)。また、TPMセキュリティチップおよび接触型スマートカードリーダも全モデル標準で搭載されている。ビジネスノートではセキュリティ機能もチェックポイントとなるが、これだけ充実していれば全く問題ないだろう。
バッテリは、容量56Whの6セルリチウムイオンバッテリまたは容量85Whの9セルリチウムイオンバッテリを選択可能。試用機では9セルリチウムイオンバッテリが搭載されていた。ただし、バッテリ駆動時間は公表されていない。もともと、本体サイズがかなり大きく、重量も2.71kg(最低重量)とかなり重いため、モバイル性はあまり重視されないとは思うが、9セルリチウムイオンバッテリ搭載時には、6~8時間程度の比較的長時間のバッテリ駆動が可能と考えていいだろう。
●3D描画能力を重視するならIntel PM965搭載モデルの登場待ち では、いつものようにベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。 結果を見ると、さすがにハイエンドモデルだけあり、非常に優れた結果が得られている。唯一見劣りするのはグラフィック性能だが、こちらもIntel 945GM搭載のIntel GMA 950(Latitude ATG D620)の結果と比較するとかなり向上していることがわかる。とはいえ、3Dグラフィックスソフトを快適に活用できるまでにはほど遠く、今回試用したIntel GM965搭載モデルは、それほど高いグラフィック能力を必要としない用途に活用したい。もし高い3D描画能力が必要ならば、7月に登場予定となっている、Intel PM965搭載モデルまで待つべきだ。 とはいえ、全体的なパフォーマンスは非常に優れており、どのようなビジネスシーンにも柔軟に対応できるポテンシャルを秘めていることは間違いない。ハイエンドモデルのため、最小構成で192,675円から(2007年6月7日現在、特定構成のパッケージ価格では134,980円から)と、デルのノートとしては価格はやや高めの設定となっているが、優れたパフォーマンスと充実したセキュリティ性も含め、ビジネスシーンで利用するデスクノートとして非常に魅力が高い製品と言っていいだろう。
【表2】ベンチマーク結果
□デルのホームページ (2007年6月12日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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