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Intel 3シリーズチップセット発表会レポート
~各市場に合わせた最強の製品群

発表会場で配られた記念品の熊。もちろん“Bearlake”の開発コードネームにかけられた洒落だ

6月6日 開催



 Intelは、6日(現地時間)にCOMPUTEX会場近くで記者会見を開催し、“Bearlake(ベアレイク)”の開発コードネームで呼ばれてきた「Intel 3シリーズ チップセット」を正式に発表した。

 昨年の発表会では“我々は帰ってきた”とアピールしたIntel チップセット事業部のトップであるリチャード・マリノウスキー氏だが、今年はさらに強気に“今年のチップセットはIntel史上最強だ”と宣言した。Intel 3シリーズ・チップセットと、今年後半に出荷が予定されている45nmプロセスルールで製造される新しいプロセッサ(開発コードネーム:Penryn)との組み合わせで、ライバルに大きな差をつけることができるとアピールしたのだ。

●各セグメントの要求に合わせて作られたチップセット

 壇上に立った、Intelモビリティ事業本部チップセット事業部副社長兼チップセット事業部共同ジェネラルマネージャのリチャード・マリノウスキー氏は、「従来のチップセットは、まずハイエンドでリリースしたものが徐々に低価格のレンジに落ちていくという“ウォーターフォールモデル”と呼ばれる仕組みになっていた。しかし、この製品はそうではない。この製品は各セグメントごとのニーズに合わせて、それに合致した仕様に作られている」と述べ、3シリーズの製品ラインナップが従来とは異なる成り立ちであることをアピールした。

 Intel 3シリーズ・チップセットの大きな特徴は、従来製品では1つのダイから複数の製品ラインナップ(SKU)を作り出しているのに対して、実に4つのダイが用意されていることにある。X38、G35、G33、G31はそれぞれ異なるダイなのだ。

 これまでIntelが1つのダイをベースにしていたのは、現在のように市場が細分化されておらず、PCの大部分がビジネス用で、ごく一部が家庭用という状況だったからだ。しかも、早い時期から家庭用市場が立ち上がっていた日本などを除けば、家庭用市場が立ち上がったのはごく最近のことだ。

 しかし現在の市場は、エンスージアスト向け、家庭向け、ビジネス向けと細分化し、さらに各分野でメインストリームとローエンドが存在している。

 たとえば、家庭用にはそれなりの3D性能が必要だが、管理機能は必要ない。逆にビジネス向けには3D性能は最低限で良いが、管理機能は必須である。このように、各セグメントで求められる機能はずいぶんと異なってきているのだ。3シリーズは、そのような市場の変化に応えた製品群と言えるだろう。

Intel モビリティ事業本部 チップセット事業部副社長兼チップセット事業部共同ジェネラルマネージャ リチャード・マリノウスキー氏。手に持つのはIntel 3シリーズ・チップセット 一挙に7製品ものラインナップが発表される

各製品の位置づけを示すチャート すべての製品が45nmプロセスルールで製造される次世代CPUに対応する

●前世代に比べ消費電力が半分になったQ35

 3シリーズの基本は、グラフィックス内蔵型のG33であり、そこからP35(内蔵GPU無効版)、Q35(サウスブリッジにICH9DOをサポート)、Q33(ビジネス向けだがICH9DO未対応)の各製品が派生している。

 P35以外の製品は、「Intel GMA 3100」と呼ばれるDirect X9世代のGPUを内蔵しており、サウスブリッジはICH9世代となる。Intel GMA 3100は、Intelが“Gen3.5”と呼ぶIntel 945Gなどに採用されていた内蔵GPUの発展系だ。

 これは、昨年のIntel G965/Q965に搭載されていた“Gen4”という、プログラマブルな演算器を採用した最新の内蔵GPUに比べると性能は劣るものの、Windows VistaでWindows Aeroを有効にするには十分な性能を持っている。ハイエンドの製品を必要としないメインストリーム市場やビジネス向けとして開発されたものだ。

 やや電力食いのGen4に比べると、Gen3.5は消費電力が低く、「Q35は前世代のQ965に比べてピーク時の電力やアイドル時の電力が半分近くになっている。このため、大幅に省電力に貢献する」(マリノウスキー氏)との言葉通り、Intelのチップセットとしては省電力になっているのが特徴だ。このほか、ICH9シリーズでは、ディスクI/O周りの性能改善がアピールされた。

G33の特徴を説明するスライド P35の特徴を説明するスライド

サウスブリッジのICH9を説明するスライド、ディスクアクセスが高速になり、eSATAなど新しい機能にも対応している Q35とQ33の特徴を説明するスライド、前世代に比べて圧倒的に省電力になっている

●オーバークロッカー向けツールも用意されるX38

 次に紹介されたのは、エンスージアスト向けチップセットの「X38」だ。

 X38は、PCI Express Gen2、DDR3-1333、2つのPCI Express x16スロットなどの特徴を備えた、まさにスーパーハイエンドチップセットだ。今のところ、DDR3のメモリは非常に高価であるし、PCI Express Gen2をサポートしたビデオカードは存在しない。

 しかし、マリノウスキー氏は「多くの人が新しい技術は必要なのかと聞く。我々がRDRAMで体験したように、確かに失敗するリスクはある。しかし、誰かが始めなければ、何も始まらないのだ。'96年にUSBを始めた時のことを思い出してほしい、あのとき何もデバイスはなかったが、我々はチップセットに機能を実装した。今、PCにUSBポートがついていることに疑問を感じる人はいないだろう」と述べ、新技術にチャレンジすることの重要性を訴えた。

 さらにマリノウスキー氏は「このチップセットは現時点で地球上で最高の性能を持つチップセットだ、それに対して全く疑いはない」とし、その性能に自信を見せた。そして、X38のA0ステッピングで計測したベンチマークデータを公開し、その言葉を裏付けた。現在のIntelのハイエンドチップセットであるIntel 975Xに比べて、全体的に10%の性能向上がみられ、メモリ周りのベンチマークでは実に60%もの性能向上を実現しているという。

 また、X38にはこれまでIntelのチップセットでは実装されてこなかったメーカー純正のオーバークロックツールが用意されているという。「我々はシリコンの技術でナンバーワンであることに自信を持っている。これまでは、そうした技術をどちらかと言えば品質をあげていくことに利用してきた。しかし、昨今ユーザーの意見を参考にした結果、戦略を変更しオーバークロックにもチャレンジしていこうということにした」(マリノウスキー氏)という。

 今後はIntelとしてもハイエンドユーザーのニーズに応える意味で、オーバークロックツールを積極的に提供していくという。こうしたオーバークロックツールは、NVIDIAが同社のチップセットであるnForceシリーズで積極的に展開しており、ユーザーの人気を集めている。この状況を見て、Intelとしても黙っていられなくなったということだろう。

 X38には2つのツールが提供されるという。それが「Intel Extreme Tuning」と「Intel Extreme Memory」だ。前者はFSBを含めたシステム全体のチューニングを行なうツールで、マニュアルモードとオートマチックモードの2つのオーバークロック機能が提供される。後者はメモリをオーバークロックするためのツールだという。なお、マリノウスキー氏によれば、すでにIntelのラボではFSBを2GHz、DDR3を2GHzにするというオーバークロックに成功しているそうで、マニア層にとってX38はかなり期待できる製品といえるだろう。

X38の特徴を説明するスライド X38とIntel 975Xの性能比較

X38ではIntel Extreme TuningとIntel Extreme Memoryというオーバークロック機能が提供される X38を利用したゲームデモの様子。45nmプロセスルールのクアッドコアYorkfiled、AMD(Intelの関係者は絶対にAMDといわず、ATIと言う)Radeon HD 2900をCrossFireモードで動かしている

●メインストリーム向けのG35

 G35は、Intel G965とピン互換になっており、メモリもDDR2のみ、ICHも前世代のICH8になる。G35の特徴は、「Intel GMA X3500」という、新しいブランドのGPUを搭載していることにある。

 すでに明らかになっているとおり、G35のダイそのものはIntel G965とほぼ共通で、「非常に多くのソフトウェアによる機能向上を実現している」(マリノウスキー氏)という。G965のGMA X3000をベースに、ソフトウェア(つまりはドライバ)の更新により、DirectX 10への対応など新しい機能が実現される。

 ただ、マリノウスキー氏は「リリース時にはピクセルシェーダ3.0までの対応となり、ゲームでの互換性や性能などが大幅に向上する。DirectX 10のサポートは後日の対応となる」とし、登場時はDirect X10には対応しないことを明らかにした。

 発表会では、シェーダモデル3.0に対応したベータドライバを利用して、Athlon 64 X2+AMD690G、Core2 Duo+G35でゲームベンチを行ない、AMD690Gは10fpsにも達しないのに、G35は23~24fps以上をたたき出しているとアピールした。なお、この最新ドライバはG965でも利用可能とのことで、数週間のうちに公開される予定だという。

 また、「Intel Clear Video Technology」も大きくアップデートされる。特にビデオの再生クオリティが大きく向上しているという。実際デモでは、AMD690GとHQVベンチを利用して、再生品質を比較し、G35の方がジャギーが少なくなめらかに再生される様子がデモされた。

G35の特徴を説明するスライド Call of Dutyを利用したベンチマーク。AMDの側はAthlon 64 X2+AMD690G(AMDのサイトで公開されていたドライバ)、Intelの側はCore2 Duo+G35(新ドライバ)という仕様(CPUのSKUやクロックは公開されていない)。AMD690Gは9fps、G35は23fpsとなっている AMD690GとG35とで同じHQVベンチのテストを行なっているところ。G35の方がジャギーが少なく再生できていた

●かつてないほど強力な製品群

 マリノウスキー氏によればP35とG33はすでに百万を超える数をOEM/ODMに対して出荷済みであり、この四半期の終わりの段階でIntelチップセットとして過去最高の立ち上がりをするだろうと述べた。

 「Intel 3シリーズ・チップセットの状況は非常に健全だ。第3四半期にはすべてのチップセットを発表、出荷することができるだろう」とし、製品出荷のスケジュールに自信を見せた。

 ビジネス向けのQ35は今週からOEMへの出荷を開始し、G35はウェハの製造がすでに始まっており、現在はドライバの開発が進められている段階だという。X38も最終製品版のテープアウト(最終設計)が終わっているとのことだ。

 マリノウスキー氏は最後に、「昨年、Intelチップセットは帰ってきたと宣言した。そして、今年はかつてないほど強力な製品を持ってきたということができるだろう」と語り、その成功に自信を見せた。

□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/20070605comp.htm?iid=homepage+news_3series
□ニュースリリース(和訳)
http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press2007/070606.htm
□関連記事
【6月6日】Intel、3シリーズチップセットを正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0606/intel.htm
【COMPUTEX】【6月7日】Intel X38/G35/G31 Express搭載マザーを総ざらい
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0607/comp07.htm
【笠原】【3月18日】Intelの次世代チップセットの謎と課題
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0318/ubiq178.htm

(2007年6月7日)

[Reported by 笠原一輝]

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