NEC、PC事業は2006年度通期黒字に
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NEC 小野隆男執行役員常務 |
NECは21日、2006年度連結決算を発表した。
これによると、売上高は前年比5.6%減の4兆6,526億円、営業利益は3.5%減の700億円、経常利益は9.3%増の163億円、当期純利益は前年の101億円の赤字から91億円の黒字に転換した。
「KDDIへの次世代ネットワークシステムの導入など、NGNに対する先行投資案件の獲得によるNGN市場においてポジションを確立できたこと、特色ある新製品および技術の投入を達成したこと、モバイルターミナル事業の下期回復などの成果があがる一方、半導体事業の回復の遅れ、IT/ネットワーク事業における成長スピードが期待にそぐわず、同事業の経常利益が前年に比べて若干減少した」(NECの小野隆男執行役員常務)という。
2006年度の業績 | セグメント別の実績 |
●PC事業は黒字化
モバイル/パーソナルソリューション事業の業績。PCは原価低減により黒字化 |
セグメント別では、PCを含むモバイル/パーソナルソリューション事業は、売上高が前年比22.8%減の9,650億円、営業損益は前年の赤字から218億円改善したものの、マイナス335億円の赤字となった。
PCおよびビッグローブ事業で構成されるパーソナルソリューション分野は、売上高が20.1%減の6,151億円。営業利益は約20億円の黒字となった。
欧州における個人向けPC事業を展開しているパッカードベルの売却のほか、国内PC市場の伸び悩みが減収に影響していたが、「部材コストの削減努力、品質の強化によるサポートコストの減少などが黒字につながった」としている。
PCの国内出荷台数は、2006年度実績で前年比6%減の272万台。Windows Vistaが発売となった第4四半期の国内PC出荷は、81万台と前年並みの実績となった。
第4四半期のパーソナルソリューションの売上高は、前年同期比25%減の1,492億円となったが、上期の赤字幅をカバーするだけの利益を生んだ模様で、第3四半期の20億円をさらに上回ったようだ。
携帯電話端末事業のモバイルターミナル分野は、売上高が前年比27.2%減の3,499億円。海外における2.5G事業の収束をはじめとする海外事業の縮小などのリストラの影響および、国内向け出荷台数が約3割減少したことが影響して、約350億円の赤字となっている。
ただし、「下期にはブレイクイーブンの段階にまで回復。通期でも、リストラ費用を除く通常オペレーションベースでは、計画を上回る数十億円の黒字」(小野隆男執行役員常務)としており、来期以降の黒字化を確実にする計画だ。
携帯電話の出荷台数は、560万台。そのうち、490万台が国内。2007年度は500万台強の出荷を目指す。
●半導体は売上伸びるも赤字
IT/NWソリューションは、売上高が前年比0.1%減の2兆7,588億円、営業利益は14.9%減の1,541億円。
IT/NWソリューションのうち、ITサービス/SI分野の売上高は前年比0.6%増の7,756億円。営業利益は前年同期の約500億円。ITプラットフォーム分野の売上高は、前年比4.7%減の6,514億円、営業利益は100億円弱。ネットワークシステム分野の売上高は3.4%増の10,263億円、営業利益は800億円弱。社会インフラ分野は、売上高が2.9%減の3,055億円となった。
エレクトロンデバイス事業は、売上高が前年比5.5%増の8,610億円、営業損失は78億円改善したもののマイナス230億円の赤字となった。そのうち、半導体分野の売上高は前年比7.2%増の6,923億円、電子部品その他は0.7%減の1,687億円となった。
IT/NWソリューション事業の業績。売上高は前年並み | 半導体(NECエレクトロニクス)、電子部品のエレクトロンデバイス事業は赤字も損失を改善 |
●2007年度は全事業で黒字に
大手電機では三洋電機の連結決算発表が来週に控えているが、これまでの発表のなかでは、唯一、NECだけが減収となっている。小野執行役員常務は「大変残念である」と前置きしながら、「欧州のPC事業の売却や携帯電話事業の海外事業の撤退などの特殊要因によるもの。それを除けば、そこそこのレベルである」とした。
なお、2007年度の通期見通しは、売上高が前年比1.0%増の4兆7,000億円、営業利益は85.8%増の1,300億円、経常利益は389.4%増の800億円、当期純利益は228.7%増の300億円とした。
成長戦略への取り組みとして、先行商談を獲得したNGN関連システムが、2007年度下期から商用利用の開始につながることから、さらに事業を拡大できると想定。2006年度には、1,300億円の受注、900億円の売り上げ実績だったNGN関連事業を、2007年度を2倍に拡大するほか、新規市場の創造や海外パートナーとの提携強化、約200億円の戦略的費用の投入によるグローバル戦略の強化などを進める計画。また、モバイルターミナル事業の黒字化の定着、NECエレクトロニクスの黒字化などを課題としている。
2007年度の業績予測。営業利益、純利益の大幅改善を見込む | PC事業はAV機能の強化、新コンセプト製品で需要喚起を狙う | セグメント別の売上損益と予測 |
モバイル/パーソナルソリューション事業は、売上高が前年比8%減の8,900億円。営業利益は60億円の黒字転換を狙う。そのうち、パーソナルソリューション分野では30億円の黒字を見込む。
「モバイルターミナルは、国内市場に特化した体制が確立でき、さらに黒字の定着を最大の目標とする。また、パーソナルソリューションは、地上デジタル放送対応をはじめとするAV機能のさらなる強化や、新コンセプトPCの投入により需要喚起を図るとともに、生産革新、原価低減活動などによって、黒字継続を目指す」とした。
国内PC出荷台数は前年並みの270万台を見込んでいる。業界全体が前年比5%前後の出荷見通しになっていることに比べると慎重な計画。だが、「業界全体の伸びを下回るとか、シェアを下げるといったことは考えていない」としている。
IT/NWソリューションは、売上高が前年比4%増の2兆8,700億円、営業利益は13%増の1,740億円。エレクトロンデバイス事業は、売上高が前年比1%増の8,700億円、営業利益は30億円への黒字転換を予定している。
同社では、近いうちに、矢野薫社長による2007年度の経営方針説明会を開催する予定だとしており、その場で、今年度の具体的な方針などがより明らかになる。
□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0705/2101.html
□関連記事
【5月16日】NECエレ、2006年度は2年連続の営業赤字
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0516/necel.htm
【2006年5月11日】NEC、2005年度連結決算を発表(Enterprise)
http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/topic/2006/05/11/7782.html
(2007年5月21日)
[Reported by 大河原克行]