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【IDF 2007レポート】

2009年の実現を目指す
マルチバンドワイヤレス対応のプラットフォーム

Intelシニアフェロー兼コミュニケーションテクノロジーラボ・ディレクターのKevin Kahn氏

4月16日(現地時間) 実施



 中国北京で開催されるIDF 2007の前日(16日、現地時間)は、IDFでは恒例になっている同社が研究中の技術に関するセッションが開かれた。この中で同社シニアフェローのKevin Kahn氏は、2009年に実現を目指しているというマルチ無線モバイルプラットフォームについて紹介。1つのプラットフォームで複数の無線をサポートするための技術などを紹介した。

●6バンド以上に対応するモバイルプラットフォーム

 最初にノートPCへ無線LANが搭載されたときは、2.4GHz帯を使用するIEEE 802.11b対応モジュールのみだったが、現在は5GHz帯を使用する802.11aのモジュールも搭載されたほか、今後はWiMAXや3Gを使った広域無線ネットワーク、Wireless USBに代表されるUWBなど、さまざまな帯域を利用した無線ネットワークがPCで使われていくと思われる。

 Intel Senior FellowのKevin Kahn氏が行なったプレゼンは、こうした状況を見据えた同社の研究の紹介だ。マルチバンドに対応した無線ネットワークモジュールだけでなく、それをモバイルプラットフォームとして提供していくための技術を開発しているという。同氏はこれを「Multi-Radio Mobile Platform」と呼び、6個を超える無線ネットワークに対応したプラットフォームを2009年に登場させたいとしている。

Kahn氏が紹介したMulti-Radio Mobile Platform。複数の無線ネットワークをプラットフォームとして提供する 無線ネットワークモジュールの構成。当面はモジュールの形だが、将来的には一部をチップセットに埋め込んでいくことになるのだろう

 多くの帯域へ対応させるためには、無線通信モジュールの構成を全面的に見直す必要がある。1つはアンテナだ。多くの帯域へ対応させるアンテナとしては、ブロードバンド(広帯域)アンテナ、マルチバンドアンテナなどを使うことが多いが、これらはゲインを上げるとノイズが増し、ノイズを抑制しようと思うとゲインを下げざるを得ない、と非常に効率が悪い。また、前者は広帯域に対応するが範囲内で一定の感度を得られるわけではない。後者は、そもそも複数のバンドに対応させるために実装面積が大きく、対応させる周波数帯によっては相互干渉が発生してしまうので、それを防ぐためにより面積が必要になる。

 そこで、開発しているのが、帯域の再設定が可能なアンテナ(Reconfigurable Antenna)である。これは、FETを用いたスイッチによって、アンテナが対応する周波数を切り替えることができるというもの。これならば、利用している範囲の周波数帯以外は電波を拾わなくなるわけで、ゲインを上げてもノイズを抑制できることになり効率がいい。ただし、一時的には特定の周波数帯だけしか対応しないので、別の周波数帯を利用する無線通信の同時処理は不得手となる。

 ちなみに、このReconfigurable Antennaを搭載したノートPCを、IDFの展示会場となるShowCaseでデモンストレーションしており、Windows上のアプリケーションから対応周波数帯を切り替えることができる。ただし、このソフトウェアはデモ用のもので、将来的には利用するモジュールに応じて動的に切り替えられるようにしていきたいそうだ。また、アンテナは液晶の天板部に3枚を実装しているが、非常に薄型になっている点もアピールしていた。

アンテナが対応する周波数を動的に切り替えることができるReconfigurable Antenna ブロードバンドアンテナは広い範囲に対応できるので同時利用性は高いが、対応周波数帯でもゲインが安定せず、ノイズも多い マルチバンドアンテナは複数の帯域に対応できるアンテナだが、やはりノイズが多めで、近接した周波数帯からの干渉を防ぐ仕組みも必須
Reconfigurable Antennaは複数の周波数帯に対応するマルチバンドアンテナの良さと、使用していない周波数帯からのノイズ干渉が少ない狭帯域アンテナの良さを兼ね備えるが、同時利用性は落ちる Reconfigurable Antennaを利用したコンセプトモデルの構成図。Wi-FiとWiMaxモジュールを持ち、3個のアンテナを切り替えて利用する コンセプトモデルのデモをより具体的に表した図。3つの周波数帯から任意に選んでアンテナの対応周波数を切り替える
こちらは切り替えソフトウェア。あくまでコンセプト段階なので手動で行なっているとのこと。将来的にはドライバなどによる自動処理を実現していくそうだ コンセプトモデル。アンテナは天板部に3個収納されているが、薄さをアピールしていた こちらがReconfigurable Antenna。薄いアンテナと細いケーブルにより実装スペースを節約できるとしている

 続いては、フロントエンドモジュールの改良である。フロントエンドモジュールでは信号の増幅や特定周波数以外をカットするなどの作業を行なうが、これまでは、各周波数帯に対して独立した回路を設ける必要があり、回路の実装面積を小さくするのが難しかった。しかし、フロントエンドモジュール内のアンプやフィルタなどが対応する周波数帯を任意に調整できるようにすれば、先のReconfigurable Anntenaと組み合わせることで回路を大幅に削減することができるようになる。

 それを実現したのが、冒頭で掲載した写真に写っているKahn氏が手に持っているもので、Wi-FiとWiMAXの両方に対応したフロントエンドモジュールを10平方mmに集積したものだ。今後は、より多くの周波数帯をサポートする方向で開発が進めらめると思われる。

中央の四角い物体がWi-FiとWiMAXに対応したフロントエンドモジュール。10平方mmでペン先と比べてみると、その小ささが分かる このフロントエンドモジュールの顕微鏡拡大写真 こちらはフロントエンドモジュールの内部構成図。下から順に、赤い部分がパワーアンプ、中央両脇の黄色い部分がスイッチ、中央がローノイズアンプ、上部両脇の青い部分がバンドパスフィルター、中央がコントロールロジックとなる。コストは2ドル以下という

 もう1つ紹介された開発中の機能は、複数の規格に対応するMAC層を切り替えて利用する方法だ。1つのチップ内に複数の無線規格を混在させると、周波数帯の干渉などにより同時利用ができないものがあるが、この同時利用を実現しようというものだ。ワンチップ内に複数規格MACを実装しておき、周波数帯の影響で同時処理できない複数のプロトコルからの要求を、ハードウェア側でうまく割り振って処理し、同時に利用できるようになる。当然ながらオーバーヘッドは増えるのだろうが、2.4GHz帯Wi-FiとBluetoothの同時利用を可能にするなどメリットを実現できる研究であり期待したい。

複数の無線規格を利用する場合は周波数の干渉がつきものだが、その影響をマトリクスで表したもの MAC Coordinationは複数の規格の処理をスケジューリングすることで、同じ周波数を利用する規格の同時利用を実現するもの

□IDF 2007のホームページ
http://www.intel.com/idf/
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【4月9日】インテル、WiMAX技術進捗の好調をアピール
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0409/intel3.htm
【1月31日】【笠原】WiMAXはノートPCの標準機能になるか
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0131/ubiq170.htm

(2007年4月17日)

[Reported by 多和田新也]

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