●より進化したBootCamp Intel Mac上でWindowsを動かす方法のうち、最も互換性が高く、性能上のペナルティがないのは、Appleが提供するBootCampを用いてWindowsをネイティブ動作させることだ。本来は次期Mac OS X(Leopard)の一部機能として提供される予定だったBootCampだが、パーティション設定などの混乱を防ぐためもあってか、先行してβ版が公開されている。BootCampは、Macのファームウェア(EFI)でWindowsを起動するためのブートローダー、パーティション設定ツール、MacのハードウェアをWindowsで利用するためのデバイスドライバで構成されており、BootCampを利用してインストールされたWindowsは、通常のPCと同じように、Macのハードウェア上で直接動作する。 当初はAppleがこのようなツールをリリースすることについて、いぶかる声もあったが、最初のβ版公開以降も、基本的に新しいIntel Macのリリースやモデルチェンジ毎にBootCampのアップデートも行なわれ、Intel MacすべてのモデルでBootCampが利用可能な状態が維持されてきた。要するにAppleは、Intel Mac上でWindowsを動かすことに結構本気らしい。その真意はともかく、定期的なアップデートから、やると決めたことはきちんとやる、という姿勢がうかがえる。 そのBootCampの最新版となるVersion 1.2(β)が3月末にリリースされた。このタイミングで新たに発表されたIntel Macはなく(MacProのBTOオプションに4コアのXeonが追加されたが)、いよいよリリースに向けて、細かな調整に入ったものと思われる。BootCampを搭載するLeopardのリリース時期は2007年春とされており、予定に変更がなければもう間もなくと考えられるからだ。 BootCamp β1.2の新機能として挙げられているのは次の9つ。 ・Windows Vistaへの対応 従来、BootCampがサポートしていたWindowsは、公式にはXPのみであった。このβ1.2版でサポートOSにVistaが追加されたわけだが、BootCampは仮想環境ではないのでHome BasicやHome Premiumを利用することもできる。この点がBusiness以上が必要となる仮想化ソフトウェア、Parallels Desktop for MacやFusionと異なる部分だ。ただしいずれの場合も、アップグレード版は利用できない点に注意が必要となる。 BootCampによるWindowsのインストールは、BootCampアシスタントユーティリティによるWindowsパーティション設定、ドライバCDの作成、WindowsのインストールディスクによるOSインストール、作成したドライバCDによるドライバインストールの順に進む。ドライバCDはWindows XPとWindows Vistaで共通で、OS別に作成する必要はない。 このドライバCDによるデバイスサポートも、ほぼ完了しているようで、今回テストマシンとして用いたMac miniの場合、Vista上のデバイスマネージャーでクエスチョンマークがつくデバイスはなかった。上の新機能の項にあるApple USBモデムは所持していないため動作を確認していないが、従来サポートされていなかったApple Remoteが利用できることは確認できた(Vistaのみ、XPでは未サポートとなっている)。Windows上でもMacBookやMacBook Proが内蔵するトラックパッドで、Mac OS X上と同じように2本指によるスクロールや右クリックの代用を行なうことができる。
良く分からないのは、各国語のキーボードへの対応という項目で、日本語のドキュメントにはどのあたりが改良されたかについての記述がない。Apple純正キーボードにある、イジェクトキーをはじめとするメディアキーは、従来のBootCampからサポートされているし、「各国語」というカテゴリには該当しない。というわけで、とりあえず触ってみたところ、Apple日本語キーボードにある「英数」キーと「カナ」キーのサポートが加わっていることが確認できた(この機能はタスクトレイでApple Keyboard Supportのチェックを外すことで無効にすることもできる)。 いずれもPC用の106キーボード(Windowsキーなどが加わった108キーボードや109キーボードも同じ)の類似したキーとはスキャンコードが異なるため、以前は全く利用できないキーだったが、このBootCamp 1.2ではApple日本語キーボードの「英数」キーが106キーボードの「無変換」に、Apple日本語キーボードの「カナ」キーが106キーボードの「ひらがな」にそれぞれマップされている。キーがマップされ利用可能になっていれば、あとはIME等のキーカスタマイズでいかようにもアレンジできる。 余談になるがVistaに付属するMS-IMEでは、106キーボードのCapsLockキーを単独で押すことでIMEのON/OFFができるようになっており(なぜかIMEのヘルプにも書かれていないが)、Apple日本語キーボードに106キーボードでいう半角/全角キーがないことは、大きなハンデにはならなくなっている。「英数」キーと「カナ」キーのサポートが加わったことで、BootCampの日本語入力環境は大幅に向上したといえるだろう(仮想環境はまた別の話なのだが)。 こうしたデバイスドライバやユーティリティをインストールするインストーラだが、以前のものはデバイス毎にいちいちWindowsのチェックにひっかかり、そのたびにOKボタンをクリックする必要があった。しかし、このBootCamp 1.2ではインストールを開始すれば、最後にリブートの確認を求められるまで、ユーザーの手をわずらわせることなく、インストールは進行する。ヘルプファイルが添付されるようになったことを含め、着実に製品レベルに近づいている感じだ。
□関連記事 (2007年4月11日) [Reported by 元麻布春男]
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