●Vistaのハードルを簡単にクリアできる昨年のPC Windows Vista Premium Ready PCの最小構成は、次のようになっている。
・1GHz 32bit (x86)または64bit(x64)のプロセッサ この基準を満たすノートパソコンとして、「LaVie G Type C (PC-GL18ES1M5)」を用意した。 スペックはリンク先の製品情報を参照してほしい。発表は2006年夏で、すでに出荷は停止されている。 ただし、事前の変更としてメモリを追加し、2GBとしてある。HDDの容量は80GBだ。 Windows XPが搭載されたNECパソコンの場合、工場出荷時、ドライブは3つの領域に分割されている。総容量が80GBの場合、Cドライブは約54GBで、Dドライブが約6.5GBとなっている。さらに、リカバリ用に約11GBが確保されているが、この領域はドライブ文字がついたドライブとしては見えない。 2つのドライブに分割されるのを嫌うなら、リカバリ機能を使うことで、CとDをまとめ、Cドライブだけの状態にすることもできる。今回は、この機能を使い、Cドライブのみにした状態でアップデートを試みた。
●ワンストップとはいかないVista導入 とりあえず、何かがあったときのために、プリインストールされている再セットアップディスク作成ツールを使い、DVD-Rを3枚作成した。これがあれば、MBRが変更されるようなことがあっても必ず、工場出荷の状態に戻すことができる。まず、試しに、Windows Vista Ultimateを、クリーンインストールしてみた。この製品はおかしくなるところが思いつかないくらいに素直な構成なので、特に問題もなくあっさりとインストールはできたが、ポインティングデバイスであるNXパッドのユーティリティはないし、Fn+ファンクションキーでの輝度調節などもできない。特に、携帯を前提とした製品でもなく、気にしなければいいのだが、やっぱり不便は不便だ。 NECのXP PCをVistaにアップグレードするには、NECが保証する対象製品であることを前提とし、さらに同社が有償で販売しているDVDパッケージ「NECパソコンへのWindows Vista導入ガイド」(5,250円、送料別)が必要になる。 同社では、Windows Vista Premium Ready PCであろうが、なんであろうが、アップグレードには、必ずこのパッケージが必要で、NECとしては、クリーンインストールはサポートしない。必要なドライバ類の配布も予定されていないという。もちろん、このパッケージの他に、アップグレードに使うWindows Vistaが必要だ。 このパッケージ内には、ドライバ類が収録されているわけではない。だから、クリーンインストールした上で、必要なドライバをDVDから探し出すというわけにもいかない。 パッケージには約60ページのマニュアルが添付され、それを読めば、手順について迷うこともないが、それでもけっこう煩雑な作業が必要だ。 アップグレードの流れは次のようなイメージだ。
1. XPが稼働している状態で、Vista非対応のアプリケーションをアンインストール NECパソコンでは、購入時に添付されているアプリケーションはたくさんあるが、そのすべてがインストールされているわけではない。ソフトインストーラと呼ばれる専用のインストーラを使って、インストール/アンインストールが簡単にできるようになっている。ただし、プレインストールされているにもかかわらずVistaには非対応のソフトもある。さらに、再起動を伴わなければならないアプリケーションが少なくないなど、結構手間がかかる。 また、再インストール用のDVDも、Vista移行後には作れなくなってしまうので、必要な場合は、XPが稼働しているうちに作成しておく必要がある。説明だけを読んでいると、移行をためらってしまいそうだ。 導入ガイドDVDをドライブにセットするとオートスタートし、使用許諾書に同意すると、機種名が自動的に調べられ、インターネット経由で、その機種のアップデートに必要なファイル類のダウンロードを始める。また、自分自身のバイナリも、HDDにコピーする。BIOSのアップデートが必要な場合は、この段階で行なわれるが、この製品ではBIOSアップデートはなかった。 Vistaへのアップグレードは、ポインティングデバイスの互換性がないといったメッセージが表示されるものの、特に問題なく完了する。ただし、Vistaの起動時には、ビデオドライバ用のユーティリティの非互換性の警告が表示されるが、この段階では無視するようマニュアルに記載されている。 5. でUACを無効にして再起動すると、HDDにコピーされたアップグレード用のユーティリティが動き出し、必要なドライバ類のインストールを始め、数度の再起動を繰り返したら作業は完了だ。クリーンインストールは30分かからないが、この手順でのアップデートには、事後処理を含めて3時間程度を要した。まったくノータッチでというわけにはいかないだけに、ちょっと面倒だ。 ちなみに、この導入ガイドDVDは、クリーンインストールしたVista上では作動しない。もしかしたら、アップグレード前に、準備されたHDD上のファイルを待避しておき、クリーンインストールした環境に戻して実行すればうまく騙されてくれるのかもしれないが、今回は、そこまでは試さなかった。
●Premium Ready PCなら生まれ変わりたいはず メーカー製のPCでは、ほとんどの場合、メーカーごとに個別の修正パッチが存在する。また、各種の添付ユーティリティが使うメーカー専用の共通モジュールが存在する場合もある。だから、クリーンインストールをして、ドライバを入れただけでは、本当に問題のない状態になるのかどうかわからない。問題が起こらなければラッキー程度のことでしかないわけだ。ちなみに、NEC Directでは、ユーザーのPCを預かって作業するOSアップグレードサービスを提供している。 現在は申し込みを中断しているが、5月中旬に再開されるという。 また、導入ガイドも当分は販売されるだろう。だから、秋頃になって重い腰を上げてVistaにアップグレードというようなことになっても大丈夫そうだ。でも、欲をいえば、ノンサポートでかまわないから、この導入ガイドDVDの内容とマニュアルに関しては、ダウンロードで無償入手できるようにしておいてほしかったと思う。 NECでは、2007年3月31日の段階で、2006年10月26日以降に購入したPCの優待アップグレードキャンペーンの受付を終了しているので、今後、気が向いてVistaにアップグレードしたいと思った場合は、OSと導入ガイドを併せて数万円の出費が必要になる。まして、メモリを追加するようなことがあればもっと出費は大きい。かくして、その出費をためらいつつ、ライフサイクルを終えるWindows Vista Premium Ready PCは、どのくらいあるのだろうか。 個人的には、Windows Vista Premium Ready PCには、HDD内のリカバリ領域を含めて、丸ごとVistaプレインストール状態にアップデートするサービスが用意されていてもよかったんじゃないかと思う。あたかも、Vistaプレインストール状態で購入したかのような状態にするサービスだ。OSのメジャーアップデートなのだから、そのくらいのことがあってもよさそうなものだ。ユーザーは、自己責任でデータを待避して、アップグレード後に書き戻す。それが不安なユーザーは、作業を任せる追加料金を支払ってもらうわけだ。 OSが足踏みしている間に、ハードウェアは大きな進化を遂げている。十分にVistaが快適に稼働するPCが、新たなOSの恩恵を受けられずに、そのライフサイクルを終えるというのは、ちょっと悲しい。
□121ware
(2007年4月6日)
[Reported by 山田祥平]
【PC Watchホームページ】
|