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PCのライフタイムとVistaの関係




 PCは壊れるまで使い続けるべきものなのだろうか。人それぞれで価値観は異なるだろうが、機械である限りいつかは壊れるし、壊れたものを修理するためには、それなりの投資が必要だ。直すための投資額があまりにも高価であれば買い換えを検討する。果たしてそれでいいのかどうか。それで失うものはないのだろうか。

●古いPCにVistaを入れる

 パナソニックがWindows Vista サポート評価情報を更新、新たに第4世代のLet'snote用のWindows Vista対応キットを公開した。ぼくの手元には、Let'snote R4(CF-R4GWKHXP)があり、2006年の5月頃にVistaのβ版を入れ、その後いくつかのCTPを経て、RTMに至るまで、何度もクリーンインストールを繰り返し、今も現役で使用している。

 このPCを入手したのは発売直後の2005年5月だったので、もうすぐ丸2年が経過しようとしているわけだ。プロセッサはPentium M 753(1.2GHz、ULV)、チップセットはIntel 915GMS Expressで、80GBのHDDとオンボード512MBに加えて512MBのPC2-3200 DDR2 MicroDIMMを増設し、計1GBとしている。なお、2005年の11月にはIEEE 802.11aの周波数変更対応アップグレードプログラムが公開され、W52対応することができた。とにかく、この10年間ほどの間、ここまで長期間、第一線の現役で使い続けたPCは初めてだ。

 2年も前のPCだが、Vistaを入れても、それなりの期待に応えてくれた。915チップセット内蔵グラフィックスなので、VistaのAeroGlassには対応できないが、その他の点では特に不自由することはなかった。

 XP時代には9時間というバッテリ運用時間は、ほぼ仕様通りだと感じていた。だから、エコノミーモードをONにし、バッテリの充電を80%に抑えていたが、それでも6時間は使える印象で、毎日の外出に持ち歩いても、不安になることはあっても困ったことはなかった。出先でバッテリが空になり、長引いたミーティングの終盤近くで休止状態に入ってしまったのは記憶にある限り2回だけだ。

 パナソニックがサポートする前の段階でクリーンインストールしたVistaは、けっこうな不便を強いた。まず、ホットキーの一部が使えなくなってしまったため、ディスプレイの明るさを調整できなくなってしまっていた。R4では、電源接続時とバッテリ運用時の設定済み輝度を、ハードウェアが記憶するようになっているので、いったんXPに戻して、電源接続時は最大、バッテリ運用時は中間よりちょっと下に設定した上で、再びVistaをインストールしてしのいだ。ただし、稼働中に電源状態が変わっても、輝度は変わらない。シャットダウン状態または休止状態にした状態で電源状態を変更して輝度を変えていた。

 公開されたキットに含まれる手順書は懇切丁寧で、アップグレード中に起こるさまざまな事象が事細かに記載されている。この手順では、XP環境からのアップグレード方法が記載されているが、ぼくは個人責任でズルをして、現行稼働しているVistaに、公開されたドライバやユーティリティ類を入れていった。作業は、何度かの再起動を伴いながら、1時間程度で終わった。輝度問題を含め、感じていた不便はすべて解消された。

●256MBのメモリがものをいう

 2年前のPCでのVistaだが、やっぱりバッテリが持たないことを痛感する。エコノミーモードの使用をやめて同等といったところだろうか。つまり、2割ほど多く電力を消費する印象だ。

 また、ぼくは、特に必要がない限り、PCのワイヤレスLANをOFFにしない。Vistaのβ時代はそれでも特にバッテリでの稼働時間に変化がなかったからだ。ところが、RTMでデフォルト設定が変更され、バッテリ運用時に、ワイヤレスの省電力モードがOFFになったことで、それがけっこうな電力を消費するようなのだ。Microsoftのサポート情報に、この件に関する解説があるので参照してほしいが、省電力モードを使わないことで、バッテリでの稼働時間が2~9%短縮されているということだ。試しに、手元の環境では、バッテリ運用時、省電力をONにしてみた。これで困ることがないかどうか、しばらく様子を見てみることにしよう。

 Vistaとほぼ同時に、Officeも2007に入れ換えた。これがクセモノだ。WordやExcelはともかく、Outlookが異様に重い。データファイルのサイズが6GB近くあるのも悪いのだが、今さらこれをシェイプアップする気にもなれず、そのまま使っている。

 いずれにしても、HDDへのアクセスがとても多いのには閉口する。ただ、ほぼ同じ環境で使っているNECの「LaVie J」は2005年末の発売で、プロセッサは同じなのにLet'snoteよりもずっと軽快に使える。チップセットは915よりも古い82855GMEで、メモリもPC2700だから性能は劣るはずだ。

 違いはメモリの搭載量にある。Let'snoteは1GBだが、LaVieにはオンボード256MB+増設1GB=計1.25GBを搭載している。どちらも仕様上の最大搭載量だが、ぼくの使い方ではこの256MBが大きく影響するようだ。つまり、Vista+Office 2007は、XP+Office 2003よりも、256MB分、余計にメモリを要求すると考えてよさそうだ。現状でVistaを快適に使うには、プロセッサのスピードよりもメモリの量がものをいうというわけだ。

●優雅にPCを使いたい

 パナソニックがWindows Vista Capableのロゴもない2年も前の機種にこれだけ手厚いサポートができるのは、企業としての姿勢もさることながら、PCの構成がシンプルであることも功を奏しているのだろう。

 ただ、Vistaを入れて使ってみて、ようやく新しいPCが欲しいというモチベーションがわいてきたことも事実だ。できればメモリは2GB欲しいし、HDDの容量にも余裕があったほうがいい。もちろん、プロセッサは速いに越したことはない。それに、なんだかんだといいながら、Windows Aeroは、PCを使っているときの気分をそれなりによくしてくれる。実際、手元で評価を始めようとしているVistaプリインストールのノートPCは、やはり、使っていて気持ちがいい。Vistaさえ稼働すれば、2年前のPCでもまだやっていけると感じていたが、いざ、最新のPCを実際に使ってみると、いろいろな点で快適だ。

 PCはパーソナルなものなのだから、持っていてうれしい存在であってほしいし、コンパニオンとして、自分の期待に応えてくれるものであってほしい。最近は、Vistaについて人に聞かれるたびにこう答えている。XPが4ナンバーのライトバンなら、Vistaは3ナンバーのステーションワゴンだと。あるいは新幹線のグリーン車と普通車の違いのようなものか。たどりつける場所は同じでも快適さが違う。どうせなら優雅にPCを使いたい。少なくともぼくはそう思う。

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【1月19日】【山田】Vistaのお気に召すまま
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0119/config142.htm

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(2007年3月16日)

[Reported by 山田祥平]


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