ISSCC 2007前日レポート 最先端のプロセッサとメモリが続出カンファレンス会期:2月12日~14日(現地時間) 会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコ ISSCC(International Solid-State Circuit Conference)は、半導体回路技術に関する世界最大の国際会議である。プロセッサやメモリ、ワイヤレス、アナログなどの最先端半導体チップが半導体メーカーや大学などによって披露される。PCの将来を左右するさまざまな半導体チップの行方を把握するためには、非常に重要な国際会議と言える。毎年2月に米国サンフランシスコで開催されており、今回も現地時間の2月11~15日に会議が予定されている。 ISSCCがどのくらい大きな会議かというと、30を超えるカンファレンスセッションが3日間で開催されること、3,000名を超える技術者が参加する(2006年のISSCC参加者は3,538名)ことから想像していただけるとありがたい。午前あるいは午後が1回のセッションとなっており、初日の午前はプレナリセッションの1セッションだけであることから、残りは2日半、すなわち5回に振り分けられることになる。仮にプレナリセッション以外を30セッションとすると、常に6セッションずつを同時並行で開催しなければ消化できない。1人が聴講できる講演の数は、フルに参加しても全体のおよそ6分の1である。 またISSCCでは、投稿された論文から、優れた成果と認められたものだけが披露される。採択率は半分に満たない。前回(2006年)のISSCCでは680件の投稿論文の中から、253件が採択された。採択率は37%である。今回のISSCCでは、637件の投稿論文から、234件が選ばれた。採択率は37%であり、選択の厳しさは前年と変わらない。 それでは今回のISSCC(「ISSCC 2007」)で披露される最先端技術の内容をまとめて紹介しよう。ISSCC 2007は、2月11日と15日がセミナーの開催日、2月12~14日がメインイベントであるカンファレンスの開催日となる。本稿では、カンファレンスからPCユーザーに関連しそうな講演を事前にお伝えする。 ●2月12日午前:プレナリセッション カンファレンスは例年と同様に、プレナリセッションで始まる。このセッションはアジア、北米、欧州から1件ずつ、合計3件の招待講演で構成されている。1件目は台湾TSMCによる半導体ファウンドリの将来に関する講演、2件目は米Analog Devicesによるアナログ/デジタル混在半導体に関する講演、3件目は仏STMicroelectronicsによるナノエレクトロニクスに関する講演である。 ●2月12日午後:プロセッサの発表が相次ぐ 2月12日の午後から、一般講演が始まる。6個のセッションが並行して開かれる。各セッションのテーマは「光通信」、「エマージングデバイス」、「RFビルディングブロック」、「マイクロプロセッサ」、「UWB通信とミリ波通信」、「ディスプレイ」である。 「マイクロプロセッサ」のセッションでは、大手プロセッサベンダーによる最先端プロセッサの講演が並ぶ。米IBMがまず、次世代サーバー用マイクロプロセッサ「POWER6」の概要を発表する(講演番号5.1)。続いて米Intelが、80個の演算ユニットを内蔵した並列プロセッサの試作結果を述べる(講演番号5.2)。ルネサステクノロジは、SuperHアーキテクチャのプロセッサコアを4個内蔵したマルチコアプロセッサについて講演する(講演番号5.3)。米AMDは、x86アーキテクチャのプロセッサコアを4個内蔵したマルチコアプロセッサを発表する(講演番号5.4)。米P.A.Semiは、POWERアーキテクチャのデュアルコアプロセッサを試作した結果を述べる(講演番号5.5)。Intelは、モバイル用プロセッサ「Core 2(コード名:Merom)」の実装について解説する(講演番号5.6)。米Sun Microsystemsは、8個のプロセッサコアで同時に総計64個のスレッドを処理するSPARCプロセッサ「Niagara 2」について述べる(講演番号5.7)。 「UWB通信とミリ波通信」のセッションでは、WiMedia(MB-OFDM方式)準拠でアクティブエリアが0.4平方mmと小さなトランシーバチップをオランダのPhilipsとNXP Semiconductorsが共同で発表する(講演番号6.1)。周波数帯域は3GHz~8GHz。 ●2月13日午前:低消費のワンセグTVチューナ 中日である2月13日の午前は、7個のセッションが同時に予定されている。テーマは「バイオメディカル」、「クロック回路」、「ミリ波トランシーバ」、「TVチューナ/RF ID」、「Gigabit CDRとイコライザ」、「アナログ/デジタル変換」、「ベースバンド信号処理」である。 「TVチューナ/RF ID」では、シャープがモバイル機器向けのワンセグ準拠TVチューナ用チップセットを発表する(講演番号11.4)。チップセットは、RFチップとベースバンドチップで構成される。消費電力が最大105mWと低いのが特徴である。 ●2月13日午後:0.5Vで16MHz動作の32bit RISCコア 2月13日の午後は、6個のセッションが並行して開催される。テーマは「マルチメディア信号処理と並列信号処理」、「電源分配と電源管理」、「アナログとPLL」、「SRAM」、「携帯電話およびマルチモードのトランシーバ」、「データと電力の非接触伝送」である。 「電源分配と電源管理」のセッションでは、台湾のNational Chung-Cheng Universiyが電源電圧0.5Vのときに16MHzで動作する低電圧32bit RISCプロセッサコアを発表する(講演番号16.5)。続いて日立製作所とルネサステクノロジが、2個のプロセッサコアと2個のアクセラレータコアを内蔵したシステムLSIで動作周波数とデータ転送速度を動的に制御する技術について述べる(講演番号16.6)。IBMは、POWER6プロセッサの電源供給アーキテクチャを検討した結果を発表する(講演番号16.7)。 「SRAM」のセッションでは、IBMと東芝、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が「CELL Broadband Engine」プロセッサの1次キャッシュ用SRAM技術を共同発表する(講演番号18.1)。続いてIntelが、モバイル機器用の低消費電力SRAM技術について述べる(講演番号18.2)。ルネサステクノロジとパナソニックは、プロセス変動と温度変動を補償する回路を内蔵した埋め込みSRAM技術を発表する(講演番号18.3)。 ●2月14日午前:1GbitのNOR型フラッシュメモリ カンファレンスの最終日である2月14日の午前は、6個のセッションが組まれている。テーマは「センサーとMEMS」、「デジタル回路」、「ブロードバンドRFとレーダー」、「マルチGigabitトランシーバ」、「ナイキストアナログデジタル変換技術」、「不揮発性メモリ」である。 「デジタル回路」のセッションでは、IBMがPOWER6プロセッサに組み込んだタイミングモニタ回路の詳細を明らかにする(講演番号22.1)。Sun Microsystemsは、Niagara 2に組み込んだ128エントリのフルアソシエイティブTLBについて述べる(講演番号22.7)。 「不揮発性メモリ」のセッションでは、NOR型フラッシュメモリとしては1Gbitと大容量のチップをSTMicroelectronicsが発表する(講演番号26.3)。韓国Samsung Electronicsは、512Mbitの相変化型メモリ(PRAM)を試作した結果を述べる(講演番号26.1)。 ●2月14日午後:GDDR4メモリで4Gbit/sec/ピンの高速転送 2月14日の午後も、6個のセッションが並列に予定されている。テーマは「DRAMと埋め込みRAM」、「イメージセンサー」、「アナログと電力管理技術」、「高速トランシーバ用ビルディングブロック」、「WLAN/Bluetooth」、「ワイヤレスシステム」である。 「DRAMと埋め込みRAM」のセッションでは、IBMがサイクル周波数500MHz、レイテンシ1.5nsの高速埋め込みDRAMマクロを発表する(講演番号27.1)。Samsung Electronicsはピン当たりの転送速度が4Gbpsと極めて高い512Mbit GDDR4グラフィックスDRAM技術の開発成果について述べる(講演番号27.4)。米Micron Technologyは、GDDR3とGDDR4の両方に対応した512MbitグラフィックスDRAM技術を開発した(講演番号27.5)。 「イメージセンサ」のセッションでは、キヤノンが1,944×1,092ドットのフルHD対応2.7分の1インチ光学系CMOSイメージセンサーを発表する(講演番号28.6)。Micron Technologyからは、810万画素の2.5分の1インチ光学系CMOSイメージセンサーの講演がある(講演番号28.5)。 このほかにも興味を引く講演が少なくない。PC Watchでは順次、レポートをお届けする予定である。 □ISSCCのホームページ(英文) (2007年2月13日) [Reported by 福田昭]
【PC Watchホームページ】
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