JCSSA、新春特別セミナーでメーカー7社が今年度戦略を発表
1月15日 開催 社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(略称:JCSSA、大塚裕司会長=大塚商会社長)は1月15日、「社団法人化十周年賀詞交歓会・新春特別セミナー」を開催した。 最初に基調講演としてマイクロソフト 執行役専務 ゼネラルビジネス担当 眞柄泰利氏が、「Windows Vista が拓く新しいビジネスチャンス」をテーマに講演を行なった。 眞柄執行役専務は、「15日の午前中、Windows Vistaの発表会が行なわれた。しかし、アピールが十分ではないこともあって、会場で知っている方に会う度に、『PC市場に元気がないのをなんとかしろ!』とお叱りを頂いた。そこで、Vistaによってどんなビジネスチャンスがあるのか、機能説明ではなく、デモンストレーションによって紹介したい」として、Vistaの新機能を使ったデモンストレーションを実施した。 デモの最後に、自身の自宅で利用している環境を参考にしながら、薄型大画面TV+東芝製のWindows CE搭載のHDDレコーダ+Xbox 360+PC+ソニー製ハイビジョンハンディカムを使ったデモを行なった。
真柄家では子ども達が参加するラグビー大会の様子をハイビジョンビデオで撮影し、それをWindows Vistaにバンドルされている「Windowsムービーメーカー」を使って編集。それをDVDに焼いて、レコーダで視聴したり、ネットワークを経由してXbox 360で視聴するといった使い方をしているという。 「PCで焼いたDVDをHDDレコーダやXbox360で見るというのは当たり前のことのように思われるかもしれないが、これまでは互換性がなく実現がなかなか難しかった。そういうことが簡単になったことで、ぜひ、PCと共に大画面TVやレコーダ、Xboxも一緒に売っていく提案をお客さんにして欲しい」と呼びかけた。 基調講演の後に、ハードウェアメーカー7社が、「PC新世代の幕開け -ITが創り出す豊かな社会へ-」と題して、各社10分の持ち時間で2007年の製品・販売戦略を発表した。 トップバッターとして、レノボ・ジャパンの天野総太郎社長がプレゼンテーションを行なった。 天野社長は2007年の見通しとして、「日本版SOX法の導入、2000年度需要から2回目の置き換え、そしてWindows Vistaが発売され、2007年は1年間、大変エキサイティングな年となる。ビジネスパートナー様とさらに、ビジネスを強化して、市場を盛り上げていきたい」と明るい見通しであることを強調。 その上で、レノボの今年度の戦略として、次のように説明した。 「IBM時代からPCを販売し、早くも四半世紀を経過しようとしている。当初のPC用途は限られたものであったが、主要用途もインターネットの拡張、ハードウェアの技術革新によって、大幅に変わった。ビジネスユーザーは仕事場に限らず、いつでもどこでも、壁を越えて仕事がこなせる環境が整った。今年はIT業界も新しい時代に突入すると見られる。レノボとしても、新しい時代に対応すべく、新しい製品の投入準備を進めている。新世代のPCを支える1つの要素は携帯性・操作性、1つはセキュリティとシステム管理のための機能、そしてもう1つは大和の技術者によるベスト・エンジニアドPC、そしてWindows VistaとThinkVantageによる最強のビジネス環境。これらが揃うことで、これまでにない新世代のPC作りを進めていく」
また、2007年の新しい取り組みとして、「レノボブランドの確立に大きく注力していく。具体的な内容については、あまりしゃべらないようにと釘を刺されているので明言はしないが、色々な仕掛けを考えている」と話した。 2番手には、NECパーソナルプロダクツの高須英世執行役社長が登場した。 高須社長はこれまでの市況を振り返り、「2006年はコンシューマ市場は厳しい1年となった。一方、企業市場は比較的堅調で、この傾向はさらに続くと考えられる」との見方を示した。 その上で2007年の取り組みとして、「Windows Vistaに対応すると共に、そこにオリジナルの味付けをして市場を盛り上げていきたい。『今度のWindowsは美しい』というのがVistaのキャッチフレーズ。そこにNECならではの機能を盛り込んで、付加価値をつけていきたい。しかも、メーカー独自機能は、各アプリケーション独自に立ち上げる必要があったが、今回はVistaの標準機能と同様、リモコンからの操作ができるようにした。また、2006年から力を入れているインターネット接続機能とAV機能の使い勝手には、引き続きこだわっていきたい」とコンシューマ向け製品における方針を説明した。 ビジネスPCについても触れ、特に新しいUltraLiteについては、Vista発売と同時にUltimateを搭載したモデルを投入したが、「Windows Vistaの特徴の1つであるセキュリティ機能の強化に対応し、これまで以上に、セキュリティに強い製品となった」ことを強く訴えた。
3番目には、日本ヒューレット・パッカードの専務執行役員 パーソナルシステム兼エンタープライズプロダクト・窪田大介・営業統括本部長が登場。 同氏はまず、現在のHP全体の売り上げを紹介し、「2006年度の売り上げは、917億ドルで、日本円にして11兆円。しかも、利益も改善し、皆さんに怒られそうな業績となった。PC事業においても、4年前の大幅な赤字から利益が出る体質となった。この要因となったのが、新しくCEOとなったマーク・ハードの経営戦略。数社のパートナーの皆さんのところに本人を連れて行なったが、サンキューも言わないし、笑顔もない。前CEOのカーリー・フィオリーナとは対極の営業には向かない人間だが、CEOとして戦略は揺るぎない。間接部門は徹底的に効率化し、本社も郊外へ移転させた。日本法人も荻窪オフィスが本社となった。削減したコストはどこにまわすか? それは開発と営業の2つだけ。難しい戦略ではなく、シンプルな戦略をとっている」と大きく事業戦略が変わったことで黒字化したことを説明した。 日本ではコンシューマ市場に再参入したが、その理由については次のように説明した。 「コンシューマ市場への参入を決定したのは、企業として体力がついてきたことと、実はコンシューマ向け展開を行なっていないのは主要国では日本だけということで、再参入が決定した。今年度から本格的に展開していく。ただし、決めたことが2つある。1つは再撤退するようなやり方はしない。それからジェットコースターのような、売れる時は売れる、売れない時は全然駄目というアップダウンの激しい商売はしないとだけは決めている」
4番目には、富士通・経営執行役の山本正巳パーソナルビジネス本部長がプレゼンテーションを行った。 「今日の午前中、マイクロソフトからVistaの発表があったが、我々もコンシューマ向け11機種30モデル、ビジネス向け6シリーズ17機種と、大量のVista搭載モデルを発表した。全てのお客様のニーズに応える多彩なラインナップを揃え、積極的に新しいビジネスチャンスに対応していきたい。そして、それを支えていくのが、FMVならではの、『安心』。コンシューマからビジネス用途まで、多彩なユーザーニーズに応えていく」 特に新しい技術を搭載した製品として、FMV LIFEBOOK Bシリーズの、HDD内に書き込むデータを自動的に暗号化する機能、FMV LIFEBOOK Bシリーズ、Qシリーズでのフラッシュメモリ搭載、薄型大画面TVとセットで利用するFMV TEOといった新しいコンセプトの製品を紹介した。 また、PCの国内生産にこだわっていることについて、「PCビジネスで一番重要なのはスピード。新しいテクノロジを迅速に提供するだけでなく、お客様との間のスピードを速めることも必要。また、お客様の生の声をいかに製品に早く反映するかも重要な課題であり、そのためには国内生産が重要な要素」と強調した。
5番目には、アップルコンピュータの法人営業本部・坂本憲志本部長が登場。他社がWindows Vistaにからめたプレゼンテーションを行なっていることに対して、「アップルとしてもデジタルライフを楽しむ環境が、Mac以外にも整ったという意味で、発売が間近に迫っていることを喜ばしいと思っている」と最初に話した。 その上で、「iPodの累計出荷台数はすでに6,000万台となった。Macの販売も好調で、パートナーの中には対前年で倍の販売台数を記録した会社もある。また、PowerPCからx86へのCPUの変更については、発表当初の予定を大きく上回り、2006年9月には全製品の移行が実現している。これまではソフトウェアを移植したくともなかなか難しかったが、Intel CPUとなったことで、従来よりも移植が容易となった。パートナー各社にとってはさらにビジネスが行ないやすい環境が整っていくのではないかと期待している。また、Mac OS Xと共に、ムービー、フォトなどデジタルライフを楽しむためのソフトを多数提供させてもらっている。iPodでは20億曲以上をダウンロードで販売しているが、映画などの販売数もますます拡大している。また、コンシューマユースにとどまらず、神戸大学での1,200台のMac利用など、ビジネスユースも順調に拡大している」と、ビジネスが大きく拡大していると説明した。
6番目には、ソニーのVAIO事業本部・石田佳久本部長が登場した。 石田本部長は、「環境変化とVAIO戦略キーワード」として、(1)超小型モバイルPC開発、(2)発展する通信に対する技術開発、(3)ビジネス市場へのモバイル継続開発、(4)デジタルホーム市場の創造、(5)コンテンツのFull HD化、(6)HD Editingの市場創造という6つのキーワードが描かれたページを紹介。「この6つのキーワードは、VAIOの中期戦略ともなっている」と説明した。 そして、いくつかキーワードの具体的な中身について触れた。 「HD Editingというのは、コンシューマユーザーに限ったことではない。ビジネスにおいても映像のハイビジョン化がさらに進展していくので、我々が放送局などプロ市場で培ってきた技術を製品に生かしていく。ハードだけでなく、ソフトも開発し、プロにも使ってもらえる完璧なソリューションマシンを実現したい。また、リビングルームにおいては、CESで発表した丸い形をしたケーキのようなPCと、ワイヤレスチューナーをつないで、別の部屋にあるコンテンツを自分の部屋で視聴するといったことを実現していく。映画の中や夢の世界だったデジタルライフが実現できる日が近づいている。また、これまでVAIOはコンシューマに特化したビジネスを展開してきたが、2009年度には法人向けビジネスの割合を3割まで拡大したい。そのために、VAIO type Gのように、日本のお客様のニーズを全て満たした製品を提供していく」
最後に東芝の執行役常務PC&ネットワーク社・下光秀二郎副社長が登場。 東芝では、トータル品質の向上により、顧客満足度を向上させるための取り組みに注力しているとして、「全体最適を目指して、プロセスイノベーションを実施している。社内で『icube』と読んでいる取り組みだが、当社の場合、設計、開発、サポート、全て当社で開発したテクノロジーを活用していることが大きな特徴となっている。生産段階から、営業におけるサポート品質、技術対応力などの向上を図り、その結果、昨年度は顧客満足度調査においてクライアントPC部門、総合第1位を頂戴した」と順調に品質向上が実現していることを強調した。 また、顧客満足度を向上していくために、他社と差異がある商品を早期に提供するという目標を掲げ、「True Mobilityの実現」として、「お客様の不満、不便を解消する画期的ノートPC開発を目指す。どの製品よりも一番薄く、軽量化を実現。それをCTOスタイルで提供していくことで、最適な商品を迅速に提供できる体制を作る」とビジネス向けの新しいノートPCの開発に取り組む意向を示した。
□JCSSAのホームページ (2007年1月16日) [Reported by 三浦優子]
【PC Watchホームページ】
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