9月1日 発売 価格:45,000円 連絡先:CPサービスセンター セイコーインスツル株式会社(SII)の電子辞書「SR-ME7200」は、胸ポケットにすっぽり収まるコンパクトな筐体を持つ電子辞書だ。豊富な英語コンテンツに加えて旅行英会話のネイティブ発音に対応するほか、電子辞書としては初めてパズルゲーム「数独」を搭載したことが大きな特徴だ。 ●胸ポケットに入るコンパクトサイズ。2WAYキー採用で片手で操作可能 本連載でこれまで取り上げてきた電子辞書は、その多くがハガキ大の筐体サイズで、ポケットに収納するのはかなり困難であった。これは電子辞書全体の中では至ってスタンダードなサイズなのだが、実際にはこれよりもう一回り筐体をコンパクトにしたラインナップが存在している。本稿執筆時点でBCNランキングの売れ筋トップであるシャープの「PW-M800」をはじめ、カシオやキヤノンの製品でもコンパクトサイズの製品はラインナップされている。 今回紹介するSIIの「SR-ME7200」もその1つで、パスポートを重ねるとすっぽり隠れてしまうほど小さい。Yシャツの胸ポケットにも十分入ってしまうサイズで、持ち運びに便利だ。 さらに本製品は、本体左上部に搭載された2WAYキーにより、左手だけで基本操作が行なえるのが特徴だ。この2WAYキーは同社製品のうち、旅行系を中心としたモデルに搭載されており、電車やバス内で吊革を持っているような状態でも、左手だけで本体をホールドしつつ基本操作が行なえる。さすがにこのキーだけで文字入力は困難だが、モバイルユースには非常に便利なインターフェイスだ。
●小さいながらも高級感のある筐体。ACアダプタは非対応 ざっと製品の外観から見ていこう。 筐体はシルバーとブラックのツートン。特にブラック面の塗装はピアノ調で高級感がある。実際に持ってみると本体がやや厚めの印象を受けるが、本体面積が小さいためにそう感じるだけで、一般的な電子辞書と厚みはほとんど変わらない。
液晶はモノクロで、画面サイズは320×240ドット。カシオ製品などと比較すると、液晶画面の視認性はあまり高いとは言えない。実際の利用時には、バックライトを併用することになるだろう。 キーボードはQWERTY配列で、最上段のキーは数字キーと兼ねている。ファンクションキーと文字キーの形状がほぼ同一であるため、やや押し間違いやすい。キーの形状は角型で幅はわずか7mm、キーピッチは11mmと、一般的なモデルの3分の2程度。そもそもタッチタイプを想定していない設計である。
従来の同社製品と同じく、1つのファンクションキーに複数のコンテンツが割り当てられており、1回押すと広辞苑、2回押すと明鏡国語辞典といった具合に、異なるコンテンツを呼び出すことができる。 搭載コンテンツが一覧できるメニューは2画面に分割されている。かつて本連載で取り上げた同社の「SR-E8500」もそうだったが、メニュー画面の文字サイズは大きめで、デザインにしてもどことなく大雑把な感がある。せめて1画面にまとめたほうが利便性が向上するのではないかと思われる。ちなみに、コンテンツ本文の文字サイズについては、3段階で可変する。
本体重量は172gと、200g台後半が一般的な普及帯のモデルに比べると、かなり軽いことが分かる。電源は単4乾電池×2本で、電池寿命は90時間。モバイルユースの製品であるため、ACアダプタのオプションが用意されていないのが、上位モデルとの大きな違いになる。 SDカードスロットは同社の追加コンテンツカード「シルカカード」専用となっており、市販のSDカードは読み込めない。これは同社製品に共通する仕様だ。
●電子辞書として初めてパズルゲーム「数独」を搭載 本製品の目玉コンテンツとして、パズルゲーム「数独」を搭載していることが挙げられる。日本発のパズルゲームである「数独」は、海外ではナンバープレイスと呼ばれ、大会も開かれるなど、現在ちょっとしたブームになっている。書店に行くと数多くの本が発売されているほか、週刊誌などに問題が掲載されていることも多いので、ご存知の方も多いだろう。 近頃、この「数独」を搭載したポケットサイズの専用端末もいくつか登場しているが、本製品は電子辞書の1コンテンツとしてこの「数独」を搭載しており、ちょっとした待ち時間や空き時間に楽しむことができる。脳力トレーニング系のコンテンツを搭載するシャープやカシオ製電子辞書への対抗コンテンツといった位置付けだが、現在のブームからして、この機能が目当てで本製品をチョイスするユーザーがいても不思議ではない。 問題はレベル1~3に分かれており、それぞれで所要時間が記録される。問題数が100問と少なく、専用端末に劣るのは残念だが、問題集1冊分に相当する量はあるので、コアな「数独」ファンはともかく、一般的な利用においては十分に楽しめるだろう。 余談ではあるが、この「数独」をプレイしていると、バックライトの点灯時間が短すぎることに気づかされる。本製品のバックライトは無操作時間が10秒を超えると消灯してしまう仕様になっているのだが、「数独」の答えを考え込んでいると、あっという間にこの制限時間をオーバーしてしまう。バックライトの常時点灯ができないのは各社の電子辞書にほぼ共通する仕様だが、搭載コンテンツによっては見直すべきかもしれない。
●英語を使うビジネスマン向け。海外出張に重宝 どうしても「数独」に目が行きがちな本製品の収録コンテンツだが、一般的な辞書コンテンツや機能も秀逸である。上位モデルとの違いを中心に、ざっと見ていこう。 搭載コンテンツ数は25。同社の製品ラインナップ上は英語モデルという扱いになっているが、旅行英会話系のネイティブ発音機能を搭載している点からして、どちらかというと生活総合モデルに近い印象を受ける。 上位モデルであるSR-E8500と比べると、例えばオックスフォード英英辞典がコンサイス オックスフォード英英辞典にスリム化されていたり、類語例解辞典や多くのTOEIC系コンテンツが省かれているなど、ややコストダウンの跡が見られる。ただ、ビジネス向けの用語辞典や旅行英会話のコンテンツが追加になるなど、総じてコストパフォーマンスは高い。 敢えて本製品のターゲットを限定するならば、英語を使うビジネスマン向けの製品ということになろうか。上位機種にない旅行英会話のネイティブ音声のほか、英会話の例文を日本語で検索できる機能など、海外旅行に役立つコンテンツが充実しており、ビジネスマンの海外出張に重宝しそうだ。 ただ、キーサイズが小さいため上位機種に比べて文字入力はしづらく、デスクワーク中心のユーザーがわざわざこの製品を選ぶ必要性は低い。また、本製品はスピーカーを内蔵しておらず、ネイティブ音声コンテンツを聴くには付属のイヤフォンを接続する必要がある。一般的な電子辞書のように、机に置いて内蔵スピーカーで発音をチェックすることはできないので注意したい。
●「数独」の搭載は市場にどう評価されるか 店頭での露出度はカシオ、シャープの2社に劣る同社製品だが、「数独」を搭載する電子辞書は業界初ということもあり、もう少し注目されてもいいように思われる。「数独」が電子辞書本来の機能より注目されることは異論もあるだろうが、電子辞書のインターフェイスによく馴染んでおり、おまけコンテンツと位置付けるには勿体無い出来である。機会があればぜひいちど店頭で試用してほしい。 やや余談だが、電子辞書に共通する問題として、コンテンツにエンターテイメント性を持たせれば持たせるほど、学校や職場への持込を規制される危険性を孕んでいる。本製品が搭載する「数独」は、頭の体操を目的としたパズルゲームとはいえ、学校側から見れば娯楽性の高いコンテンツであることに変わりはない。こうしたコンテンツを搭載すれば販売台数が伸びる可能性がある一方、電子辞書を持ち込める場を狭めてしまう危険性もある。メーカーとしては頭の痛いところだろう。 今回紹介した数独搭載モデルがブレイクすることがあれば、こうしたインタラクティブ性の高いコンテンツの今後の取り扱いに影響することも考えられる。そうした意味でも注目の1台だと言えそうだ。
【表】主な仕様
□セイコーインスツルのホームページ (2006年10月3日) [Reported by 山口真弘]
【PC Watchホームページ】
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