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TSMC、45nmプロセスを2007年第3四半期に立ち上げ
~歩留まり向上と省電力に注力

TSMCジャパン株式会社 代表取締役会長 馬場久雄氏

9月15日 実施



 台湾のファウンダリ企業Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)は15日、顧客向けイベント「TSMC 2006 Technology Symposium」をパシフィコ横浜で開催した。

 午後から開催された記者発表会では、同社の日本法人であるTSMCジャパン株式会社 代表取締役会長 馬場久雄氏が挨拶。

 同氏は、国内の半導体市場の現状を紹介し、「半導体技術のための開発費と設備投資は年々増加し、垂直統合型のビジネスは限界を迎えている。当社としては顧客の開発費と設備投資の双方を削減できるようサポートしていくのが使命。'88年当時、日本は世界の半導体市場の52%のシェアを獲得していたが、2005年はその半分以下に低下した。このシェアの復帰が急務だと認識しており、日本の製品開発力とTSMCの生産技術力を組み合わせて発展させていきたい」と話した。

 また、国内のファブレス企業についても触れ、「世界ではファブレス企業が著しい成長を遂げており、4兆円強の市場がある。このうちトップ10社は年間10億円を超える売り上げを達成している。一方国内では世界シェアの1%しかファブレス企業がなく、まだ発展の余地がある。2007年はTSMC創立20周年、TSMCジャパン創立10周年となるが、国内のファブレス企業を育成し、良い年にしていきたい」と抱負を語った。

 TSMCの現状および今後の戦略について、TSMCジャパン株式会社 代表取締役社長 小野寺誠氏が説明にあたった。

 同氏は、これまでの世界の産業革命を振り返り、「第1次産業革命以来200年間、機関車、鉄鋼、石油を経て、現在は“情報通信”という第5次産業革命に至った。いずれの革命も過去を振り返ると45年から60年のサイクルで成長してきたが、情報通信は'70年に黎明し、'90年代に投資加熱に入った。それまでは不安定な高度成長および投資が続いたが、2000年で転換期を迎え、市場はシナジーの安定期に入った」と説明。

 安定化した理由については、「PCだけでなく、携帯電話やデジタルオーディオプレーヤーなどに展開された多様化するアプリケーションに加えて、多機能と低コストの二極化が進む一部アプリケーションによるもの」と指摘した。

TSMCジャパン株式会社 代表取締役社長 小野寺誠氏 産業革命の推移 情報通信産業革命の安定化

 TSMC全体の売り上げは、2006年の前半期で49億ドルを達成し、前年同期比35%増の好業績となった。またプロセス別の売り上げをみると、2006年第2四半期で90nmプロセスが24%となり、最新技術を利用する企業が増加しているという。

 同氏は、「2006年は26億~28億ドルの設備投資、および4億5,600万ドルの開発投資をし、8インチウェハ換算で750万枚のキャパシティの提供していきたい」とした。

TSMCの売り上げ推移 プロセス別売り上げの割合
設備投資および開発投資額の推移 プロセス別の生産量の推移

 また、国内市場については、「180nmプロセス以降の需要が高く、テープアウト数が順調に伸びを示している。また、ファブレス企業での利用も世界平均レベルの6~7割と比較すれば少ないが、増加してきている。今後とも日本の技術を世界に展開できるような戦略で、利用率を高めてもらいたい」とした。

国内におけるプロセス別売り上げ割合 TSMC利用形態の推移。ファブレス企業が増加しているが、世界平均には及ばない

●45nmは2007年第3四半期からスタート、歩留まりと省電力にも注力

TSMC本社 Vice President,Research & DevelopmentのJack Sun氏

 今後のTSMCの技術ロードマップについて、TSMC本社 Vice President,Research & DevelopmentのJack Sun(ジャック・サン)氏が紹介した。

 同社は現在、65nmプロセス技術をロジック/Embedded DRAM/Mixed Signal/RFに採用しているが、45nmプロセス技術を現在開発中で、これらに応用していく予定という。

 具体的なスケジュールとしては、「2007年第3四半期にローパワー(LP)から45nmプロセスを導入。ジェネラル(G)とローパワージェネラル(LPG)については2008年第1四半期、高速/低電圧(HS)製品については2008年第3四半期より順次投入していく予定。これは業界の標準的なロードマップを上回るスピード」と説明した。

 また、65nmプロセスから32nmプロセスまで、レンズとウェハの間に液体を挟み、歩留まりを向上させる「液浸印刷(Immersion Lithography)」技術を採用し、不良品率を1桁に抑えられるとした。これにより、180nmから130nmへの移行の際に10四半期かかったが、90nmから65nmでは5四半期に短縮できたとした。

TSMCが提供しているプロセス技術と製品 プロセス技術のロードマップ。45nmは2007年第3四半期よりスタート
「液浸印刷(Immersion Lithography)」技術 90nmから65nmへの移行は5四半期で完成

 TSMCの消費電力に対する取り組みについて、同社 Vice President,Design and Technology PlatformのFu-Chieh Hsu(フー・ジェー・シー)氏が説明。同氏は、これまでのプロセス技術の進歩と電力との関係について取り上げ、「フル稼働時の消費電力は順調に下がってきているが、アイドル時のリーク電流が増加してしまい、結果として総合消費電力が上昇してしまっている」と説明。

 この問題の改善には、アーキテクチャの改良および省電力機能の追加が必要になると指摘し、「TSMCが製品の設計段階に提供する“リファレンスフロー”を7.0にアップデートしたが、この中には電力を削減するためのさまざまフィーチャが組み込まれている。リファレンスフローを利用することで、開発期間の短縮だけでなく、消費電力に優れた製品を開発することができる」とアピールした。

同社 Vice President,Design and Technology PlatformのFu-Chieh Hsu氏 プロセス技術の進化に伴うリーク電流の上昇 リファレンスフロー 7.0では省電力技術を提供

 質疑応答では、プロセス技術の進歩ペースおよびCMOS技術の限界の目処について質問がなされ、Sun氏は、「現在のリソグラフィ(露光技術)の能力とコストのバランスで考えると、22nmまで継続すると見ている。移行の中でEUVリソグラフィ(超紫外線露光技術)の導入も検討している。22nm以降は、マルチゲートや歪みシリコン、メタルゲート、High-Kなどが重要な要素になってくるだろう。また、CMOS技術に代わる技術は現在見つかっていないが、新しい配線技術の登場や、シリコンに代わるゲルマニウムの採用などが見込まれている」と答えた。

□TSMCのホームページ(英文)
http://www.tsmc.com/
□関連記事
【5月26日】TSMC、65nmプロセスの量産を開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0526/tsmc.htm
【2005年12月21日】TSMC、ムーアの法則は9nm世代まで有効
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1221/tsmc.htm
【2005年9月14日】TSMC、テクノロジー・シンポジウム 2005を開催
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0914/tsmc.htm

(2006年9月15日)

[Reported by ryu@impress.co.jp]

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