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デジカメ用GPSユニット「GPS-CS1K」を試す




ソニー「GPS-CS1K」

 デジタルカメラが便利なのは、シャッター速度や絞り、ISO感度といった撮影データを、わざわざ紙にメモをとらなくても、自動的に写真データといっしょにメタデータとして記録してくれることだ。しかも記録のフォーマットはExifとして標準化されており、Exifに対応したアプリケーションであれば、その情報に簡単にアクセスできる。

 このExifフォーマットに記録できるメタデータには、写真撮影時のカメラの設定だけでなく、位置情報(GPS情報)を記録する場所もちゃんと用意してある。が、残念ながら多くのデジタルカメラには、GPS情報をExifに取り込む安価で簡便な方法が用意されていなかった。むしろこの分野では、GPSに対応した携帯電話の内蔵カメラの方が先行していたといっても良いだろう。

 そんな中、デジタルカメラのオプションとして利用可能な安価なGPSレシーバとして「GPS-CS1K」がソニーから発売になったので、早速購入してみた。購入価格は13,800円のポイント10%、この種のモノとして、比較的安価な部類ではないかと思う。

●GPSデータをExifに合成

実物を手に取ると意外と大きいGPS-CS1K

 GPS-CS1Kは軌道上にあるGPS衛星からの電波を受信して、正確な位置を割り出すGPSレシーバ。GPSはカーナビ等にも使われているからなじみのある人も多いのではないかと思う。

 ただ、カーナビがジャイロセンサーや車速情報による自律航法機能とGPS情報を組み合わせることで、衛星電波を受信できない場所でも一定精度の位置情報を得られるのに対し、GPS-CS1KはGPSの情報に依存している。したがって、建物の中や地下街、地下鉄といった衛星からの電波を受信できない場所では、位置情報を取得することができない。特に地下街のようにある程度以上のスペースがある場所では、基地局からの位置情報を併用可能な携帯電話の方が、精度が悪くなったとしても全く情報を得られないよりマシ、と言えるかもしれない。

 写真のように筒状のGPS-CS1Kだが、実際に手にしてみると意外と大きい。電源は単3電池1本で、アルカリ乾電池の場合約10時間の連続使用が可能とされている(おおむね筆者の使用感とも一致する)。備えるインターフェイスは電源スイッチとUSBコネクタだけで、いたってシンプルだ。USBコネクタはPCとの接続用であり、デジタルカメラと直接接続することはできない。

 PCから見たGPS-CS1Kは、容量32MBのフラッシュメモリストレージで、GPSフォルダの下に日付と時間をファイル名とし、拡張子が.logというログファイルが生成されていく。受信状況が良好なら、15秒おきに位置情報のログが記録される。要するに、USB端子からリアルタイムでGPSデータが出力されるわけではないので、カーナビのようなリアルタイム表示はできない。

 製品付属のソフトである「GPS Image Tracker」は、このログファイルを読み込み、PCに取り込んだ写真データのExifに記録されている撮影時間情報にマッチする位置情報を写真データのExifに挿入していくツールだ。したがって、カメラの時計が狂っていると、正しい位置情報をExifに記録することができなくなる。もし、時間ピッタリのデータがない場合も、近似のデータ(最も近い撮影時間の位置情報)をExifデータに挿入することが可能だ(ピッタリのデータでないことはGPS Image Tracker上で表示される)。

 GPS情報が付与された写真データの利用法だが、これを活用するツールとして、GPS-CS1Kのパッケージには昭文社の「Super Mapple Digital Ver.7 for Sony」がバンドルされている。基本的な使い方は極めてシンプルで、Exif情報の書き込まれた写真データをドラッグ&ドロップで地図の上に落とすと、GPSデータの位置に写真のサムネイルが表示される。つまり撮影した場所が地図上で示される、というわけだ。

 残念ながら筆者は対象となるカメラを持っていないのだが、最新のソニー製デジタルカメラ(DSC-T10およびW50)であれば、Google Map上で同じことを行なう「Picture Motion Browser 1.1」と呼ばれるソフトが添付されている。また、新しめのソニー製デジタルカメラ(おおむねDSC-T30以降)に付属するソフトを上記のPicture Motion Browser 1.1相当にアップデートするパッチもGPS-CS1Kのパッケージに含まれる。

ログファイルと写真データの結合を行なうGPS Image Tracker。デフォルトでは読み込み後、ユニット内のログは消去される。海外で利用する場合は、カメラと同じタイムゾーンに設定しなければならない 付属のSuper Mapple Digital Ver.7に写真をドロップしたところ

●ソニー以外でのデジカメでも実用に

 とまぁ、GPS-CS1Kのパッケージでできることは以上の通りなのだが、この製品の特徴は、標準規格に準じているため、工夫しだいで使い道が広がる点にある。もちろん、リアルタイム出力はできないから、ナビゲーションには使えない。が、それ以外なら、活用範囲は広げられる。

 まず、GPS-CS1Kで作成したGPSデータを写真に埋め込むことだが、ソニーが動作を保証しているのは当然ながらソニー製のデジタルカメラだけだ。しかし、実際にはExif 2.1に準拠したファイルであれば、付属のGPS Image Trackerを用いてGPSデータを埋め込むことができる。筆者は手持ちのデジタル一眼レフカメラ(PENTAX K100D)で撮影したデータを使ってみたが、問題なくGPSデータを埋め込むことができた。

千代田区皇居の付近をソニーのDSC-T9で撮影し、GPSのデータをGPS Image Trackerを使いExifに埋め込んだ 横浜みなとみらいの付近をPENTAXのK100Dで撮影し、同様にGPSデータをExifに埋め込んだ 原宿付近をauのGPS機能付きケータイ「W21T」で撮影し、内蔵のGPS機能で位置情報を埋め込んだ

 ExifにGPS情報さえ埋め込めれば、ソニー製のカメラで撮影した写真と同様、付属のSuper Mapple Digitalで表示される。もちろんExif内のGPSデータは標準フォーマットであるから、ほかのアプリケーションでも扱うことも可能だ。たとえば、RY SYSTEMのExif Readerに読み込ませると、GPS情報を読み出した上で、その場所を地図情報検索サイトのMapion(マピオン)で表示することができる。また、3D地図ナビゲーターの定番とも言える、「カシミール3D」のデジタルカメラプラグインで読み込み、地図上にサムネイルを配置することも可能だ。

Exifデータ表示ソフトのExif Viewer 3.50でGPSデータが埋め込まれた写真を読み込んだところ。メニューからMapionでの地図表示やMapFan.netによる地図表示ができる Exif ViewerからMapionで地図を表示を選ぶとブラウザが立ち上がり、撮影地を中心とした地図が表示される 3D地図ソフトの定番、カシミール3Dに読み込むことも可能

 こうした写真データだけでなく、GPS-CS1Kが作成するログファイル自体も独自フォーマットではなく、どうやらこの種のデータの標準であるNMEA-0183に準拠しているようだ(NMEAは米国のNatinal Marine Electronoics Associationの略)。これを読み込めるアプリケーションは多数あり、これらのソフトを活用することで、さまざまな目的にデータを転用できる。筆者はGPSデータの変換ツールである「GPSBabel」(フリーウェア、http://www.gpsbabel.org/からダウンロード可能)で、Google Earthで読み込み可能なKML(Keyhole Markup Lanugage)に変換してみたが、生成されたKMLファイルは問題なくGoogle Earth上で表示することができた。

 ちなみに、上述のカシミール3DでもNMEA/IPSファイルの読み込み用プラグインを用いることで、GPS-CS1Kのログを読み込ませることも可能だ(ただ筆者の場合、どこか手順が悪いようで、測地系の補正が二重にかかったように、トラックがズレる問題をクリアできていない)。

GPSのログデータ変換ソフトのGPSBabel GPSBabelで生成したKMLファイルのトラックデータをGoogle Earth上で表示

●日常用途よりも行楽向けか

 というわけで、GPS-CS1Kによる写真データへのGPSデータ埋め込みだが、やってみるとなかなかおもしろい。写真を後から見返すとき、いつ撮ったという情報に加え、どこで撮ったかという情報が残っていると、役に立つことが少なからずあるだろうと思う。

 問題があるとしたら、行動範囲のどれくらいで衛星電波を受信可能か、ということだ。たとえば筆者の日常的な移動には、電車の車中、乗り換えた地下鉄の中、駅構内など、衛星電波を受信できないルートが多数含まれる。目的地についても、冷房のきいた地下街を経由して、そのままビルの中に入ったりしていては、GPSの出番がない。手軽さという点でも、写真に位置情報を記録するというだけなら、GPS携帯(の内蔵カメラ)にかなわないだろう。

 そういう意味では、GPS-CS1Kが活躍しそうなのは、散歩や行楽、あるいは山歩きのお供としての利用だ。バッテリの持ち的にも、毎日、通勤や通学の際に使うというのにはあまり適さないように思う。こうした点さえ踏まえれば、あとはカメラのカレンダーと時計さえしっかり合わせてあれば、電源スイッチを入れるだけで手軽にGPSのログがとれ、そのデータを写真に埋め込むことができる。事実上、利用するカメラも選ばないに等しいから、秋の行楽シーズンに向けて1台用意しておくと楽しみが増えるハズだ。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□GPS-CS1Kの製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/Peripheral/GPS/GPS-CS1K/
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【8月2日】ソニー、カメラと接続せずに使えるデジカメ用GPSユニット(DC)
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/compact/2006/08/02/4346.html

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(2006年9月8日)

[Reported by 元麻布春男]


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