●大規模な人事異動を行なったIntel 7月20日(米国時間)、Intelは大規模な役員人事異動を発表した。前日には、事前の予想を上回ったものの、減収減益となる2006年第2四半期決算を発表したばかり。4月のアナリストミーティングで会社組織全体の見直しとリストラを表明、7月中旬にはマネージャークラス1,000人規模のレイオフとの報道もなされている。今回の事業部長級人事で、組織トップもリストラの聖域ではないことを示した格好だ。 従来、Intelの事業部は、副社長級の役員を2人、共同事業部長に据えるのが慣例となっていた。表の左は、今回の人事が発表される前のIntelの主要事業部と、その事業部長だが、主力事業であるThe Digital Enterprise GroupとThe Mobility Groupには、2人の事業部長がおり、多くの場合、片方が技術系、もう片方がマーケティング系の人間で占められていることが多い。事業部ではないが、日本法人(インテル株式会社)もわが国では珍しい共同社長(2人社長制)という形をとっているのはご存じのことと思う。
【表】Intelの人事異動
20日付の人事異動では、この事業部トップ2人制にメスが入れられた。これまでThe Mobility Groupの事業部長はSean Maloney副社長とDadi Perlmutter副社長の2人だったが、Sean Maloney副社長はSales and Marketing Groupのトップになると同時に、CSMO(Chief Sales and Marketing Officer)の肩書きが加わった。氏は、The Mobility Groupの前身であるMobile Platforms Groupの事業部長に就任する前は、Marketing Groupのトップを務めており、いわば古巣に戻った格好だ。 The Mobility GroupではMaloney副社長の後任は置かず、Perlmutter副社長のワントップフォーメーションとなる。当然、事業部内での氏の発言力は高まることになるが、それにとどまらず、プロセッサのマイクロアーキテクチャ全般に関する決定権も握る、との報道が一部でなされている。 さて、Maloney副社長のSales and Marketing部門返り咲きに伴い、これまでの責任者であった2人の事業部長、Eric Kim副社長とAnand Chandrasekher副社長には、新しい職責が与えられることになる。Intelの新ブランドおよびロゴの責任者であったEric Kim副社長は、新しくThe Digital Home Groupの事業部長に就任した。もともと氏は、Samsung Electronics時代、Samsungブランドの家電製品のブランド力アップに功績があったとされており、Viivの普及に適した経歴を持つとも考えられる。 これに伴い、これまで事業部長を務めていたDon MacDonald副社長は、Maloney事業部長のもと、Marketing and Brands担当としてSales and Marketing Groupの副社長に就任する。プレスリリースにはハッキリとMaloney事業部長にレポートすると書かれており、上下関係が明確になっている(共同事業部長ではない)。
一方のAnand Chandrasekher副社長だが、氏もMaloney副社長と同じく、古巣に復帰した。Sales and Marketing担当になるまで、Chandrasekher副社長は、Mobile Platforms Groupの共同事業部長だったわけだが、復帰は事業部長としてではなく、Perlmutter事業部長にレポートする立場としてである。担当事業は、間もなく投入すると見られる低消費電力製造プロセス(P1265)を用いたプロセッサとUMPCで、Intelがこの分野を重視していることが分かる反面、Senior VPの肩書きに若干不釣り合いな気もする(ちなみに、たくさんある副社長(VP)の序列は、おおざっぱに言ってExectutive VP、Senior VP、VP、Appointed VPの順であり、Maloney事業部長を補佐する立場となったMacDonald副社長はAppointed VP)。 これらの異動に加えて、事業部長の引退も発表された。1人はThe Channel Products GroupのBill Siu副社長、もう1人はSoftware and Solutions GroupのRichard Wirt副社長だ。Siu副社長の後任となる事業部長は置かれず、The Channle Products Groupそのものが独立した事業部からSales and Marketing Groupの傘下に入ることが明らかにされている。Wirt副社長は、副社長という肩書きと同時にSenior Fellowの肩書きも持つユニークな立場だったが、氏の後任も置かれず、共同事業部長を務めるRenee James副社長が単独の事業部長となる。 以上のように、今回の人事異動は大規模なものだが、発表のプレスリリースには触れられていない事業部もある。Xeonプロセッサ(Woodcrest)とItanium 2プロセッサ(Montecito)を発表したばかりのThe Digital Enterprise Group、設立されて日が浅いThe Digital Health Group、製造部門を担うTechnology and Manufacturing Groupなどだ。これらの事業部に関しては、少なくとも今のところ変更はないということなのだろう。 それでもこの異動で、「事業部長」の肩書きを持つ役員が4人減った。マネージャークラスを1,000人削減することと合わせ、狙いは組織の軽量化と、意志決定の迅速化にあることは間違いないだろう。このところIntelは製品供給の前倒しを相次いで実施しており、Woodcrestなどはほぼ1四半期スケジュールが早まっている。冒頭で触れた2006年第2四半期決算においても、モバイル向けのCore 2 DuoプロセッサがすでにOEM向けの供給を始めたこと、クワッドコアプロセッサの提供を年内に開始することなどが明らかにされている。おそらくは、こうした動きと連動したものなのだろう。
□Intelのホームページ(英文) (2006年7月21日) [Reported by 元麻布春男]
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