Intelが7月中にも正式発表するといわれている、デスクトップ向けの新CPU「Core 2」シリーズ。NetBurstに変わるCoreマイクロアーキテクチャを採用することで注目を集めている本製品のベンチマークを測定する機会を得たので、その結果をお届けしたい。 ●評価キットで見るCore 2シリーズ これまで3月のIDF、6月のハンズオンセッションと、ConroeことCore 2シリーズの情報は少しずつ公開されてきた。今回は、製品ラインナップと主な仕様が公開されており、それらをまとめたのが表1である。ラインナップの拡充を進めたPentium 4、Pentium D等に比べると、ずいぶんと絞られた印象を受けるラインナップだ。 また、これまでのPentium Extreme Edition(XE)とPentium Dでは、FSBとHyper-Threadingの有無によって製品セグメントの差別化が行なわれてきたが、Core 2シリーズではセグメント間の差別化はクロックによって行なわれるのみ。また、メインストリームセグメント内では一部キャッシュメモリ容量の異なるモデルを用意するなど方向性も変わっている。 なお、表に記していない共通仕様としては、EM64T、XDbit(オプション)、Enahnced SpeedStep Technology、Virtualization Technologyをサポート。ダイサイズは143平方mm、トランジスタ数は2億9,100万個となっている。
今回借用したのは「Core 2 Extreme X6800」、「Core 2 Duo E6700」の評価キットである。これには各CPUとIntel 975X Expressチップセット搭載マザーの「D975XBX」が含まれる。マザーボードは、ハンズオンセッションと同じ製品であるが、BIOSはVersion.1209が適用されている(画面1)。 CPUは毎度のことながらエンジニアサンプルのため、表面の刻印がリテール販売品でどのようになるかは伺えない(写真1)。裏面はCore 2 Extreme/Duoで大きな違いは見られないが、Pentium XE 965との比較では若干の変更が見られる(写真2、3)。 CPU-Zの実行結果によると、Core 2 Extreme X6800は2.93GHz動作、Core 2 Duo E6700は2.66GHz動作。両製品とも、FSBは1,066MHz、L1データキャッシュはコア当たり32KB、L2キャッシュは2コア共有で4MBであることが確認できる(画面2、3)。 ちなみにCPUIDは両製品とも「F65」のリビジョンB1となっている。ハンズオンセッションの際に利用したCPUは、CPUIDが「F64」となっており、この間にステッピングが変更されていることを確認できる。おそらく、実際に市場に登場するのはリビジョンB1のものになると想像される。
●新マイクロアーキテクチャのパフォーマンスを測定 ベンチマーク測定環境は表2に示した通りで、Pentium XE 965とAthlon 64 FX-62/X2 5000+を比較対象として用意している。Athlon 64両製品の環境は、AMDより借用したCPU、マザーボード、メモリがセットになった評価キットを使用している。 メモリはAMDの評価キットに搭載されているCorsair Memoryの「TWIN2X1024-8500」を別途用意し、Intel環境にも使用。両環境ともBIOSが読み取ったSPDに準じたメモリパラメータで動作させることとし、Intel環境はDDR2-667(5-5-5-15)、AMD環境はDDR2-800(5-5-5-18)となっている。
●CPU性能 それでは順にテスト結果を見ていきたい。まずは、「Sandra2007a」の「Processor Arithmetic Benchmark」と「Processor Multi-Media Benchmark」である(グラフ1)。ほとんどの結果でCore 2 Extreme/Duoの演算性能の高さが伺える結果となっているが、浮動小数点演算のテストであるWhetstoneではPentium XE 965に劣る結果になったのが少々意外といえる。Coreマイクロアーキテクチャの特徴であるワイド・ダイナミック・エグゼキューションが活きなかったか、もしくは単にクロックの差で押し切られてしまった可能性もある。 ちなみに、Processor Multi-Media Benchmarkに含まれる整数演算のテストは大幅にスコアを伸ばしているが、このテストではCore 2両製品のみに搭載される命令セットのiSSE4が利用されており、この効果が大きいと見られる。
続いて紹介するのは「PCMark05」のCPU Testである(グラフ2、3)。グラフ2がシングルタスクで実行されるテスト、グラフ3がマルチタスクで実行されるテストを示したものだ。シングルタスクの実行結果もおおむねCore 2シリーズが優勢があるが、一部テストではやはりPentium XE 965が勝るシーンもある。 マルチタスクにおいては、OSによるプロセスの割り振りの仕方によっても成績が左右されるので、個々の結果ではなく、同時実行される2個または4個のテストを大局的に見る必要がある。2タスク同時実行においては、Pentium XE 965とCore 2両製品で甲乙つけがたい結果になっている。しかし、デュアルコア+Hyper-Threadingの4論理CPUを持つPentium XE 965が得意としていた4タスク同時実行テストでは、明らかにCore 2 Extreme X6800の優秀さが伺える結果で、おおよそではあるがCore 2 Duo E6700と同等程度といった成績だ。 ちなみに、Sandra2007aとPCMark05における、Athlon 64両製品とCore 2両製品との比較では、Core 2両製品が圧倒している印象を受ける。Athlon 64 FX-62はCore 2 Duo E6700には上回るテストも見られるが、同セグメントに位置するCore 2 Extreme X6800にはすべてのテストで負けている。
●メモリ性能 続いてはメモリ性能のチェックをしてみたい。テストはSandra2007aの「Cache&MemoryBenchmark」である(グラフ4)。合わせて、各メモリレイテンシの測定に「EVEREST Ultimate Edition 2006 Version3.0」に含まれる、Cache&MemoryBenchmarkから、レイテンシの結果のみを抜き出してグラフ5に示している。 まず、Sandra2007aによる実行帯域についてだが、Athlon 64 FX-62のL1キャッシュ範囲内における数字が暴れているうえ、Athlon 64 X2 5000+と比較しても明らかに不自然なスコアが出てしまっている。Athlon 64 FX-62のテストを行なった際の結果と見比べてもかけ離れている。念のため3回の再テストを実施したが、傾向に大きな差はなく、環境やベンチマークソフトに依存した異常値であると判断したほうが妥当に思われる。 となるとCore 2両製品のスコアも少々心配になるのだが、これは6月にお伝えしたハンズオンセッションのPCMark05の結果と比較しても、不自然というほどではなく、キャッシュメモリの高速化は確実に機能していると判断できそうだ。 メインメモリについては、ハンズオンセッションのPCMark05の結果と同様、Core 2シリーズのメモリアクセス速度はそれほど速くない結果だ。レイテンシについても、ハンズオンセッションではAthlon 64 FX-60の2.8GHz動作環境に迫る勢いを見せていたものの、今回のEVERESTの測定では20ns近い差が付いている。少なくとも、Core 2に含まれるメモリプリフェッチなどの機能を除いた性能評価では、CPUにメモリコントローラを内蔵するAthlon 64シリーズの優位性は保たれていることになる。
●アプリケーション性能 それでは、実際のアプリケーションを利用したベンチマークテストの結果を紹介していきたい。テストは「SYSmark 2004 Second Edition」(グラフ6)、「Winstone2004」(グラフ7)、「CineBench 9.5」(グラフ8)、「動画エンコードテスト」(グラフ9)である。今回よりSYSmark 2004からSYSmark 2004 Second Edition、CineBench 2003からCineBench 9.5、DivXコーデックを6.2.5へとバージョンアップしている。 結果は凄いの一言である。これまでのNetBurstマイクロアーキテクチャでは、最適化されたアプリケーションでは高速な動作を示すものの、そうでないとAthlon 64シリーズに対してスコアが見劣りしていたわけだが、Core 2シリーズはほぼすべてのテストで良好な結果を見せている。 特に、これまでNetBurstマイクロアーキテクチャがAthlon 64シリーズに対して見劣りしていた、Winstone2004、WMV9エンコードといったテストでも優秀なスコアを見せている。唯一Business Winstone2004のMultitasking TestにおいてAthlon 64 FX-62を下回るスコアを出しており、こうしたやや古いアプリケーションの並列動作ではAthlon 64 FX-62にチャンスも残されている気配はある。とはいえ、いわゆるIPC(クロック当たりの実行命令数)を上げ高速化させるというアーキテクチャの方向性が似てきた両製品において、現状ではCore 2シリーズの優位性ばかりが目立つ結果になっているといえる。
●3D性能 さて、次に3Dベンチマークの結果を紹介したい。テストは「3DMark06 CPUTest」(グラフ10)、「3DMark06」(グラフ11)、「3DMark05」(グラフ12)、「3DMark03」(グラフ13)、「DOOM3」(グラフ14)、「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ15)である。 こうした3Dベンチマークは、対NetBurstにおいてAthlon 64シリーズが得意としてきたテストであるが、これも、上下関係が塗り替えられた印象を受ける結果だ。ほぼすべての結果、しかもCPUの負担がより大きくなる低解像度においてCore 2シリーズが優秀な性能を出しているのである。 Splinter Cell Chaos Theoryの高解像度における結果ではAthlon 64両製品が優秀なスコアを出しているが、これはビデオカードがボトルネックになっており、今回はチップセットも違っているので同等評価は難しいのだが、どちらかというとプラットフォームの性能という見方になるだろう。この点では、今回のAthlon 64環境が優れているということだ。
●消費電力 最後に、ワットチェッカーを使った消費電力の測定結果をお伝えする(グラフ16)。Intel製品とAMD製品ではCPU以外にマザーボードが異なっているので、参考程度ということにはなるが、これもプラットフォームの性能という見方は可能だろう。 今回の環境において、Core 2シリーズは評判どおりの低い消費電力に収まっていることが確認できる。とくに同一環境でCPUのみを交換しているPentium XE 965との比較で大幅に消費電力を落としている。
●優れたパフォーマンス/電力を発揮するCore 2シリーズ ここ最近のIntelは、絶対的パフォーマンスでAthlon 64の後塵を拝することが多いうえ、パフォーマンスが上回った場合でも消費電力が高いという状況が続いてきた。しかし、NetBurstを捨て、Coreマイクロアーキテクチャへの切り替えを行なったことで、一気に挽回した印象だ。 パフォーマンスについては、ベンチマークのスコアがすべてを語っているといえるだろう。これまでNetBurstが不得手としてきたテストを挽回しただけでなく、得意としてきたテストにおいても、Pentium XE 965を上回るスコアを出した。 特にCore 2 Extremeのスコアに目が奪われるが、メインストリーム向けのCore 2 Duo E6700でも、ハイエンド向けのPentium XE 965やAthlon 64 FX-62を上回るスコアを出せており、パフォーマンスの大幅な底上げがなされているといえる。 また、消費電力についても省電力化に成功していると判断できる結果を見せた。IntelはConroeについて、消費電力を下げパフォーマンスを向上させる、という点を繰り返しアピールしてきたが、そのとおりの結果を見せていることになる。 Core 2シリーズに関しては、すべての情報が公開されているわけではなく、現時点では価格も不明だ。ただ、マイクロアーキテクチャの切り替えやCoreブランドの浸透を図る必要がある現在、かなり戦略的な価格で登場するのではないだろうか。価格対性能の評価はまだ分からないが、かなり期待できると予想している。 □関連記事 (2006年7月14日) [Text by 多和田新也]
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