松下電器 新・フィルターお掃除ロボットエアコン「CS-Xシリーズ」 |
CS-Xシリーズ |
2005年12月21日発売
オープンプライス
このコーナーは、メカ好きなPCユーザーの目で、生活家電について取材し、その技術の面白さを探る企画です。(編集部)
松下電器産業 空調開発グループ 国内RAC開発チーム チームリーダー 安田透氏 |
大容量モーターを搭載したユニットが「ガーガー」音を立ててホコリを吸い取る。溜まったゴミをキューブ状に圧縮してゴミ箱に捨てる――。
一見すれば、ここからイメージされるのは掃除機。しかし、実はこれらは全て、エアコンが長年抱えてきたある悩みを解決しようとして生まれてきたアイディアだという。
では、そんな掃除機のような発想が、一体なぜエアコン開発で必要となったのか。
その答えは今回紹介する製品「CS-Xシリーズ」に搭載されている機能にあった。
――フィルターお掃除ロボット。目詰まりの原因となるホコリを自動で吸い取ることで、10年間はフィルターの掃除が不要になるという。
さらに、「CS-Xシリーズ」ではフィルター以外の部分についても、10年間のメンテナンスフリー環境を実現している。そこには一体どんな秘密があるのか。その製造元である松下電器産業に話を聞いてきた。
●エアコンのフィルター掃除は月2回ペースが必須
製品の説明に入る前に、まず先ほどの問いに回答しておこう。
今回の取材でまず分かったことは、そもそもユーザーがエアコンのフィルター掃除をサボりすぎていることだった。今回、インタビューに応じていただいた松下電器産業 空調開発グループ 国内RAC開発チームリーダーの安田透氏によると、通常のエアコンではフィルターを最低でも月に2回は掃除する必要があるという。
しかし、これまで行なってきた市場調査の結果を見ると、実に8割以上の家庭でフィルター掃除は年に1~2回しか行なっていなかった。
こうした状況からフィルターの自動掃除というのは、安田氏が入社した20年前の頃から構想としてあったらしい。エアコンの足下に置いたモーターでホコリを吸引する。そんな、まさに掃除機そのものといったユニットを別に用意することも一時は考えたという。
それらのアイディアが形になり始めたのが、2004年モデルとして発売された換気機能を搭載する製品だった。この機能を利用すれば、掃除で出たゴミを排気と一緒に外へ捨てられるのではないか。自動掃除ユニットの開発は1年がかりで行なわれ、ついに2005年1月21日、新機能「フィルターお掃除ロボット」を搭載するエアコンが発売された。
●ホコリを剥がす→吸い込む→外に出す
フィルターの手前に被さるように設置されている青いユニットが「フィルターお掃除ロボット」。その横には吸い取った埃を外へと送り出すノズルの姿も見える |
「お掃除ロボット」。フィルターに覆い被さるように配置された細長いプラスチック製のユニットが、その正体だ。
お掃除ロボットは、フィルターにへばりついたホコリを剥がし取るパッドと、剥がしたホコリを吸い取る吸引口、そして吸い出したホコリを外に出すためのダクトなどの部品から構成されている。
運転終了時、または開始時に、このユニットを約3.5~13分、動作させ「ホコリを剥がす→吸い込む→外に放出する」という作業を同時に行ないながら、フィルターを掃除する仕組みになっている。
「フィルターを自動で掃除するという考えは昔からありましたが、どうやって掃除するかが一番の課題でした」と安田氏は語る。企画当初は、掃除機のようなもので吸い取るというアイディアもあったが、タバコのヤニや、料理の過程で生じる油煙など、粘りのあるホコリは、吸い込むだけでは取れず、フィルターから「剥がす」作業が必要であることに気づいたのだという。
そこで、パッドではがし、ダクトで吸い取る機構を採用した。エアコンというライフサイクルの長い製品の性質上、素材には耐久性が必要とされる。逆に、耐久性を重視しすぎて、フィルターとの摩擦を弱くすると、今度はしつこいホコリが取れなくなる。パッドのシリコンの硬度を試行錯誤した。
ユニットの動作時間は、フィルターの汚れ具合やエアコンの動作時間によって決定される。具体的には、吸い込み時の風力、ファンの回転数、空気清浄に使う空気の汚れを検知するセンサーから来るデータを頼りに制御しているという。
剥がすと同時に吸い込んだホコリは、ダクトを通って、室外に排出される。運転のたびに、お掃除ロボットがフィルターの清掃を行なうので、1回の掃除で排出されるホコリの量は、ごくわずかだという。
このロボットは、1回の掃除につき、フィルターを1~3往復する。1往復につき、掃除が行なわれるフィルターの面積は全体のおよそ1/6。1日、3往復させた場合、4日間でフィルター全面の掃除が終了することになる。つまり、毎日使用している場合、4日に1回、フィルターの掃除を行なったのと同じことになる。
いうまでもなく、4日に1回、自分でフィルターの清掃を行なうユーザーは、まずいないだろう。
以前にフィルターの自動掃除を行なうサイクロン掃除機を紹介したが、このお掃除ロボットのメカニズムの方が、むしろ掃除機らしい。それを、エアコン一筋20年の安田氏が開発したというのだから、その苦労はまさに推して知るべしだろう。松下電器産業のエアコンではCMに「SOJIRO」というキャラクターが出演しているが、彼がフィルター上に掃除機を走らせているシーンはまさに真実の姿だったのである。
中央に見えるのが埃を吸い取る吸引口。新しい自動掃除ユニットでは、この上下幅を旧モデルよりも広げている | 吸引口は自動掃除ユニット内で上下に移動する仕組み。左右に往復しながら、フィルターの埃を上から順に吸い取っていく | 【動画】お掃除ロボットの動作デモ。コアユニットが省かれたデモ用の機器によるもの(WMV, 33.5MB) |
お掃除ロボットがフィルターを掃除している際のイメージイラスト。ヘッドが埃をこすり取り、それをダクトで吸引している | 2005年モデルからイメージキャラクターとして採用された「SOJIRO」。手に持った掃除機でフィルターの上を掃除している姿をCMなどで見ることができる |
●フィルターだけではない、お掃除ロボットがもたらすメンテナンスフリー
お掃除ロボットの「メンテナンスフリー」は、フィルターだけにとどまらない。その内部機構にも、手入れの手間を徹底的に省略する仕組みがちりばめられている。
まずその前提になるのが、フィルター自体の目の細かさだ。これまでは、メンテナンスをユーザーの手に頼っていたため、目の細かさと、詰まりやすさは常に背中合わせにあった。しかし、お掃除ロボットの導入により、毎回掃除するという前提で設計ができる。フィルターの目を細かくすることにより、内部ユニットのカビの原因となるホコリの進入を少なくした。お掃除ロボットが、直接掃除をしない、内部ユニットのメンテナンス軽減も実現しているというわけだ。
●騒音と掃除に掛かる時間、ユーザーが気になるのはどっち?
今回、取材で訪れた草津事業所。主に冷蔵庫やエアコンといった冷却機器の製造を行っている |
ただ、全く新しい機能というのは、ユーザーが使っていくうちに新たな課題が見えてくる。「フィルターお掃除ロボット」に関して言えば、それは掃除に掛かる時間と掃除中に稼働する換気用ファンの騒音だった。
「結局、フィルター掃除の際に鳴る換気用のファン騒音は、もともとエアコンにはない音ですから。中にはエアコンを消して、さあ寝ようというときに、いつまでもガーガー言っていたら困るという方もいました」
騒音と掃除時間を同時に軽減することは、実際には不可能と思われていた。掃除時間を短縮するには、ホコリを吸い取るダクトの口径を上げる必要がある。しかし、それでは大出力のファンが必要となるため騒音は大きくなってしまうのだ。
そこで、本年度モデルとなる「CS-Xシリーズ」である。はたして、この製品では騒音と掃除時間という2つの課題を解決しているのか。結論として安田氏は両者のバランスを取ることに苦心したという。
「CS-Xシリーズ」では、第一のステップとしてダクトの口径を上げる決断をしている。これは、ユーザーから騒音についての苦情があがっている以上、実に冒険的な試みと言えるだろう。
結果として掃除に掛かる時間は大幅に短縮された。フィルターお掃除ロボットでは、ヘッドとダクトを組み合わせたユニットが左右に移動しながら作業を行なう。
だが、ホコリを吸い取るダクトはフィルターの上下全てをカバーしていない。その上下幅は2005年のモデルでフィルター全面の1/16サイズ。つまりノズルは高さを変えながら左右に8往復することで、フィルターの全てのホコリを吸い取る仕組みになっていた。
しかし、新しい自動掃除ユニットではダクト口径を広げたことで、従来ではフィルター全面の掃除に必要だった往復回数は16回から12回に減少。さらに、ユニットの移動速度を速めることで、掃除に掛かる時間も1往復あたりで約1分間短縮された。
そして、気になる騒音についてだが、これもモーター部分の静音化を徹底することで何とか解決している。実際にはモーターとファンのベアリング部分、さらにケースに取り入れる防音材を徹底的に見直したらしい。このあたりはPCの静音化とやっていることは変わらないので、何となく想像ができると思う。
今回の取材では、残念ながら実際のメンテナンス動作を目にすることができなかった。ただ、「お客様には不快に感じない範囲内ということで、納得してもらっているようです」と安田氏は語っている。
ただ、安田氏に言わせるとフィルターの自動掃除というのは、ユーザーが気づかないうちに終わっているのが理想だという。この点については安田氏も次のエアコン開発に向けての課題と考えているらしい。案外、来年のモデルあたりでは、こっそりフィルター掃除を行なうエアコンが登場しているかもしれない。
その言葉を表わすように、「CS-Xシリーズ」では掃除を行なうタイミングを、エアコンの起動時か停止時のどちらかに設定できるようになっている。これには、同社の製品が、冷房スタート時に出るエアコン独特のイヤな臭いを抑えるために、風量自動設定の際にはタイミングを若干ずらす工夫をしていることが関係している。つまり、起動時のタイミングをずらしている間に掃除を行なえばそれほど違和感がないのでは、というメーカー側の期待があるようだ。
●フィルターも、そして中身も「さよならお掃除!」
こうして改良された自動掃除ユニットは“新・フィルターお掃除ロボット”として大々的に売り出されることになった。さらに、「CS-Xシリーズ」はメンテナンスフリーという点でも従来に比べてはるかに進化している。
というのも、2005年モデルで掃除の必要がなくなったのは、エアコン内部へのホコリの進入を防いでいるフィルターのみ。その内側にある熱交換機や空気清浄用のフィルターは、従来通りに定期的なメンテナンスが必要だった。
しかし、「CS-Xシリーズ」では、これらについても10年間のお手入れ不要を実現している。そのキーデバイスとなっているのが新たに採用された「新・除菌熱交換機」だ。
この熱交換機では除菌剤を利用して、嫌な臭いの原因となる細菌の繁殖を防いでいる。それも、ただ除菌剤で表面を覆っているだけではない。というのも、表面に水が結露する熱交換機では、ただ除菌剤を塗っただけではすぐに流れ落ちてしまうのだ。
そこで、除菌熱交換機では、除菌剤を練り込んだアルミ素材を新たに用意。それを撥水/サビ止めとそれぞれ特殊加工したアルミ層の間に挟みこむ構造となっている。
そして、ここで注目してもらいたいのが、一番表面に置かれた撥水加工層にミクロ単位の穴が開いていること。この穴を通して漏れ出した除菌剤は結露水に溶け、それが熱交換機の表面をコーティングしているのだ。
除菌熱交換機では、この穴の口径を調節することで除菌効果を10年間持続させることに成功している。ちなみに、同社が提唱している10年間のメンテナンスフリーとは、毎日24時間フル稼働した場合を想定しているとのこと。つまり、この“10年”というのは、実際には“エアコンを買い換えるまで”と解釈してもあまり問題はなさそうだ。
フィルターのすぐ裏側に設置されている熱交換機。従来モデルでは放っておくと右の写真のようにカビが生えるため、定期的に掃除する必要があった(写真提供:松下電器産業) |
●世界のホコリと戦う男たち
こうして開発された「CS-Xシリーズ」は世界中にシェアを広げ、多くの人たちに愛用されている。しかし、その裏側では世界展開にあたっての開発部なりの苦労があったらしい。
中でも一番の問題となったのが、世界各地で利用されているエアコンのフィルターにどのようなホコリがつくかを調べることだった。
そもそも、2005年モデルを国内展開する際にも、フィルターの汚れ具合を調べるには多大な苦労があったという。何しろ全くデータがない。しかし、お掃除ロボットという新たな機能を開発するうえで、その基準となるホコリの量や種類を知ることは必要不可欠だった。
そこで、安田氏はユニットの開発にあたって、まずユーザーが利用しているエアコンのフィルターを回収することから始めたという。その数は日本全国で100件以上。こうして使用済みのフィルターを集めた結果、付着するホコリには実にさまざまな種類があることが分かった。
フィルターに付着するホコリは、エアコンが設置される場所によって大きく異なる。寝室ならば綿ホコリが中心のフカフカしたもの。リビングでは料理の油分が、オフィスではニコチンが付着することで、それぞれネットリした感じに。幹線道路沿いの部屋などでは、真っ黒のフィルターが回収されることもあった。
特に、油やニコチンはホコリを巻き込んで小さな固まりになるという。そうした、ホコリは取りづらく、またヘッドを痛めやすいので、自動掃除ユニットで除去するには一番苦労したらしい。
そして、今回の「CS-Xシリーズ」では、まさに世界のホコリと戦うことになった。ベトナム、ミャンマー、マレーシア、欧州、アメリカ。安田氏はそれらの国のフィルターを1つ1つ調べ、エアコンの起動試験を行なった。
そうして調べた中でも、自動掃除に最も手間が掛かったのが中国だった。何しろホコリのうちの7割を黄砂が占めている。砂を含んだホコリは重く、ノズルで吸い取ってもフィルターから剥がれようとしなかった。さらに、お掃除ロボットの駆動部に入り込んでは異音を発し、ついにはエアコンが止まることすらあったという。
ほかにも、世界のホコリは日本と比べると砂が多く、北に行くほど綿ホコリは増えていく。それら全てのホコリを吸い取るために安田氏はお掃除ロボットを改良し、その駆動部分にもさまざまな形でのシーリングを施した。
世界のホコリを克服するエアコンは、こうした地道な作業の果てに完成したのである。
「だから今では、フィルターに付着するものなら砂ホコリでも綿ホコリでも何でも落とせると、自動掃除ユニットの性能にはかなり自信を持っています」
その一言は、まさに世界のホコリを知る安田氏にしか言えない台詞だった。エアコンの使用環境はユーザーによって大きく異なる。ホコリっぽい部屋があれば、タバコの煙で目がしみる部屋もあるだろう。しかし、「CS-Xシリーズ」はそうした環境差を気にせず利用できる製品なのだと、氏の言葉にはそんな説得力と安心感があった。
取材で訪れた草津事業所内に展示されていたパネル。「新・フィルターお掃除ロボットエアコン」の文字が一際目立っている | 設定温度を冷房なら28度以上に、暖房で20度以下に設定すると表示されるマーク。小池環境大臣が「これはいいな~」と言ってくれたので、急遽リモコンへの採用した。曲線を描くために、マークの部分にだけドット表示の液晶を利用しているらしい |
●置いて気づかないデザイン
さらに、新たに採用された熱交換機では、その形状についても大規模な改良が施されている。
これには、エアコンの薄型化を目指す同社の戦略によるところが大きい。というのも、エアコンで冷却効率を上げるには、いかに吸排気する風量を上げるかがポイントとなる。しかし、大容量の風量を確保するには、それだけ大型のファンが必要となるのだ。
そこで、「CS-Xシリーズ」では大口径ファンのスペースを確保するため、熱交換機の形を外側にアールを描くものへと改良。さらに、熱交換機そのものも従来より薄型化し、場所によって厚さを微妙に変えている。
これは、ただのデザイン変更と言ってしまえばそれまでだが、そこには非常に大きな苦労があったらしい。中でも一番の問題だったのが、一体成形でそこまで微妙な加工を必要とすること。結果としてこれまでにない技術とコストが要求されるこの熱交換機は、世界中に工場を持つ松下電器産業でも、今回訪れた草津事業所でしか作れないという。
そしてもう1つ、新たな熱交換機で改良されたのが内部に冷媒を通す導管だった。
この説明をするには、まずエアコンの冷却メカニズムを理解してもらう必要がある。エアコンでは冷媒の気化熱を利用して、部屋から吸い込んだ空気中の熱を吸収している。これは注射のときにアルコール消毒をすると、肌がヒンヤリする様子をイメージすると分かりやすい。こうして、熱を吸収した冷媒はエアコン内で再び液体へと戻され、液化する際に起こる放熱が室外機によって外へ送り出されている。
この気化と液化のメカニズムには冷媒の性質が利用されている。冷媒は減圧されることで気化し、加圧されることで液化する。そのため、エアコンでは内部にコンプレッサを用意することで冷媒に圧力を加えている。
新しい熱交換機では冷却効率を上げるため、まず導管の数を従来の約2倍まで増加。さらに、通過する冷媒が気体か液体かによって導管の口径を変えている。具体的には加圧した冷媒を細い導管に通すとコンプレッサに負担が掛かるので、導管の太さを場所によって変えているとのことだった。
こうして開発された熱交換機は薄型化しながらも、冷却効率は従来よりも向上している。実際、量販店の売り場で同じ出力を持つエアコンと見比べても、この製品の薄さは際だっていた。
「新製品の購入を検討している人は大体15年前ぐらいの製品を使っていて、その頃はちょうどエアコンが薄型競争をしていたんです。だから、ウチではその頃の製品から買い換えても違和感のないサイズにこだわっています」
目指したのは部屋の隅にあっても目に入らないデザイン。それは同社の開発ポリシーとして長年受け継がれてきたものだと安田氏は言う。確かに、最近では風量の強さを謳う製品が増えているが、それらは大口径のファンを積んでいるせいか前に出っ張った形状のものが多い。
その点、「CS-Xシリーズ」は設置面積に制約のある部屋でも、まず邪魔にならない薄さを実現している。大きく目立つエアコンを置いて部屋の雰囲気を損ねたくない人にとっても、この製品は魅力的に映るだろう。
左は従来機の熱交換機。厚さの同じストレートな熱交換機を3つ折りにして内部に収納していた。新たに採用された熱交換機では導管を3列に並べ、その数を従来の28本から50本まで増加。さらに、素材の厚みを場所によって変化させている |
●松下電器産業の総合力が生み出す10年メンテナンスフリー
10年間のメンテナンスフリーを実現するにあたっては、熱交換機以外にも新しいアイディアが盛り込まれている。
これについて、一番分かりやすいのは、先にも述べた、フィルターのメッシュ口径を小さくして、細かい塵がエアコン内部に入り込むのを防いでいることだろう。さらに、ホコリの内部への進入を防ぐということでは、「CS-Xシリーズ」ではフィルター以外にもう1つ「メガアクティブイオン除菌空清」という工夫を用意している。
これは、冷気の吹き出し口に放電部を用意して、マイナスの電荷を持つ空気を部屋に送り出すというもの。電荷を帯びた空気はカビやウイルスを滅菌し、空気中のホコリをマイナスに帯電させる。その一方で、エアコンのフィルターにはプラスに帯電する導電繊維を用意。プラスとマイナスの電荷は引き寄せられるため、ホコリがフィルターへと吸着しやすくなっている。
このほかにも付け加えると、「CS-Xシリーズ」には脱臭用と空気清浄用の両フィルターが搭載されているが、これらについても優れた耐久性が確保されている。脱臭フィルターには臭いの吸着/分解効果が高いゼオライトを、空気清浄用には花粉やダニなどのアレルギー物質を99%抑制する抗アレルゲン剤をそれぞれ配合している。
この開発には、同社で空気清浄機を専門に扱うスタッフが全面協力しており、言わば松下電器産業内のコラボ機能といったところだろうか。一見すると段ボールのような素材でできているように見えるが、「10年間は安心して使えます」と安田氏は自信を持って断言していた。
左が除菌フィルターで右が脱臭フィルター。従来では放っておくと3年ぐらいで効果が無くなっていたが、05年モデルでは10年間の耐久性を持たせている |
●真の省エネにも貢献したお掃除ロボット
エアコンはその登場から現在に至るまで、常に省エネ競争を繰り広げてきた。それは「省エネNO.1」を謳うエアコンがこの世に溢れていることからからも分かる。
しかし、真の意味での省エネは、まさに「CS-Xシリーズ」で達成されたと安田氏は言う。お掃除ロボットが常にフィルターを清潔に保つことで、最大限に確保できたエアコンの省エネ性能。さらに、10年間のメンテナンスフリーは交換フィルターを不要のものとし、オフィスなどではメンテナンス業者を呼ぶ必要がなくなった。
こうしてみると、消費電力を削っていく一般的な省エネのアプローチと比べても、効率的のよい省エネ対策が施されているように感じる。世界のホコリに挑むこと。それは一見すると、省エネともエレクトロニクスとも全く関係を感じない。しかし、そうした発想の転換こそが、基本性能では行き詰まった感のあるこれからの家電開発を支えていくことになるのだろう。
マイナス要素だった結露水を巧みに利用したアイディア。騒音対策を大胆に解決した決断。薄型化に負けない冷却効率を持つ熱交換機の開発。
「エアコン開発は本当に壁だらけですよ」と安田氏は笑うが、そうした地に足の付いた発想がまた画期的な製品を生み出すことを期待したい。
□松下電器産業株式会社のホームページ
http://national.jp/
□ニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn051025-1/jn051025-1.html
□製品情報
http://ctlg.national.jp/product/info.do?pg=04&hb=CS-X286AS
「この製品の新機能、どういう仕組みになってるんだろう?」というものについて、メーカーに取材し、“技術のキモ”をお伝えします。取り上げて欲しい生活家電がありましたら、編集部までメールを送って下さい。
(2006年7月6日)
[Reported by 丸田鉄平]