大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」


NECパーソナルプロダクツ 髙須英世社長インタビュー
~「上期は必ず黒字化を図る」




NECパーソナルプロダクツ代表取締役執行役員社長 髙須英世氏

 NECのPC事業を担当するNECパーソナルプロダクツの新社長に髙須英世氏が就任して約3カ月が経過した。

 2005年度第3四半期からPC事業が赤字転落するという厳しい状況の中でのバトンタッチ。「上期にはなんとしてでも、国内PC事業において黒字転換を図りたい」と髙須社長は語る。

 「NECのPC事業は、きちっと事業を推進できる体制が整っている。それを社内外に訴えることも大切だ」と語る髙須社長に、NECのPC事業の今を聞いた。


-- 2006年4月に社長に就任した際に、社内に対してはどんなことを言いましたか。

髙須: 片山徹前社長とは、これまでもずっと一緒にやってきましたから、私が社長になったからといって、方針が大きく変化することはありません。就任直後に社員に対して話したのも、片山前社長が掲げてきた、CS、スピード、シェアでナンバーワンを維持するという方針をしっかりやろう、ということでした。そして、もう1つは、元気を出してやっていこうと(笑)。今、NECのPC事業は社外からどう見られているのか。もしかしたら、ちょっと元気がない、と見られているかもしれない。そうではないんだということをぜひ示していきたい。

-- 確かに、2005年度第3四半期(10~12月)以降、赤字が続いていますし、この夏モデルを見ても、富士通が、37型の大型液晶ディスプレイ搭載モデルや、次世代メディアドライブを搭載した製品を投入したのに対して、NECの製品には目玉がなかった。その点でも元気がないと映るかもしれませんね。

髙須: ただ、ストライクゾーンの製品に関してはきっちりとしたものを用意できたと自負しています。それに、夏モデルという点では、「ぱそ楽ねっと」という大きな目玉がありましたよ(笑)。ただ、「ぱそ楽ねっと」は、他社が投入してきた37型液晶ディスプレイや次世代メディアドライブに比べると、なかなか良さや、インパクトが伝わりにくい。しかし、この意味は、時間を経過することで、だんだん理解されてくると思います。

-- ぱそ楽ねっとを購入要因としたユーザーはどれぐらいいますか。

4月に発表された、ぱそ楽ねっとの概要

髙須: まだ具体的な数字は集計していませんが、その数は少ないとは思っています。これは、これから長期間かけて浸透させていかかなくてはならない事業ですし、すぐに効果がでるとは考えていません。BIGLOBEとの連携によって、さまざまなコンテンツやサービスを創出し、これを切り口に提案していきたい。ただ、これも、永久的に当社だけが独占的に提供できたり、他社製品との決定的な差別化策になるとは考えていません。常に、新たなサービスを創出していかなくてはなりません。

-- PC事業の黒字化についてはどうなりますか。先日の連結決算発表では、上期までは赤字というような発言でしたが。

髙須: NEC全体という観点で見た決算数値は、日本市場だけでなく、欧州地域におけるPC事業なども含まれますから、そういう発言になったといえます。国内のPC事業に関していえば、この上期にはなんとしてでも黒字化したいと考えています。

-- 第4四半期(1~3月)および2006年度第1四半期(4~6月)も国内PC事業は赤字ですか。

髙須: 第3四半期に為替の急激な変動があり赤字です。そして、その支払いが第4四半期に及んだこともあり、第4四半期も引き続き赤字でした。しかし、2006年度は、第1四半期がどうか、という見方よりも、まずは半期という観点で黒字化することが大切だと考えています。これはなんとしてでも達成する覚悟です。

-- 黒字化に向けた施策は何になりますか。

髙須: 構造改革は引き続き継続していきます。また、当社の強みであるサプライチェーンに関しても、引き続き強化を図ります。生産革新活動による生産拠点の改革だけでなく、開発から、調達、物流に至るまですべての面での構造改革を絶え間なく進めていきます。

 また、生産現場では、RFIDを採用して効率的な生産体制を構築し始めていますが、これを少しずつ調達部分や、販売店を交えた流通領域にも拡大していきたい。調達分野では、PCの添付品に関して、一部実用化を開始しており、今後、これを広げていきたい。また、販売店に対しても協力を得ながら、RFIDによる管理を前提とした流通体制を構築したいと考えています。これは、さまざまな調整が必要ですから、実現までにはまだ時間がかかることになります。今年度中というなかでの実現は難しいでしょうね。

-- 2006年度第1四半期は、ワールドカップ需要を捉えきれず、PC業界全体が前年割れで推移していますね。NECでは前年実績を上回る年間300万台の国内出荷を計画していますが、早くも黄色信号とはいえませんか。

髙須: 確かに、2006年1月までは個人需要も堅調に推移していましたが、それ以降は前年実績割れで推移しています。第1四半期も、前年実績をやや上回る形で推移するだろうと予想していましたから、その計画から見ると厳しい状況にあるのは事実です。ただし、300万台という計画値について変更するというようなことは現時点ではありません。

 2007年1月には、Windows Vistaの投入もありますし、無線LANの新規格であるIEEE 802.11nや、コンセントを利用してネットワーク接続が可能なPLC、さらには次世代DVDドライブの搭載といったトピックスもある。こうした要素を考えれば、まだまだ需要拡大のチャンスはある。そこに、NECらしい元気な製品を投入できればいいと考えています。

-- HD DVDドライブ搭載モデルの発売はやはり秋ですか。

髙須: 4月の製品発表会見でも申し上げましたが、次世代メディアをPCで利用するには、やはり、書き込めることが重要だと考えています。また、地上デジタル放送の録画に関する著作権問題も明確にならなければ、NECとして市場投入するのは難しい。ただし、こうした次世代メディアを取り巻く問題が解決されつつあるので、そのタイミングを見て市場投入を図りたいと考えています。

-- 大型液晶ディスプレイの製品はどうですか。片山前社長は大型ディスプレイのPC製品の投入にはそれほど積極的に取り組んでいくつもりはないとしていましたが。

髙須: 基本的にその戦略に変更はありませんが、これも市場動向を見た上で判断していきます。

-- NECらしさはどこで発揮しますか。

髙須: 「PC-9800」シリーズの時代から、NECは、最新の技術をいち早く採用する、あるいはもっとも信頼性が高いPCであるという評価を得てきました。それが現在のトップシェアの維持につながっている。この点での変化はありません。これからも最先端の技術をいち早く採用していきたい。

 また、NEC Directを活用しながら、店頭でNECのPCを購入していただいた人にも、各種オプションやサービス、アンチウイルスソフトなどを簡単に購入していただけるような仕組みをつくっており、こうした点でも差別化をしていきたい。NECのPCを次も購入したいというリピーターは確実に増加しています。安心感を提供できるメーカーであるということ、そして、みなさんに感動を与え続けるPCを投入できるメーカーであることを、これからも訴え続けていきたいですね。

-- 先日のNECの新社長方針説明のなかでは、「PC」事業に関してはなんら触れられませんでした。果たして、NECの矢野薫社長は、PC事業をどう位置付けているのでしょうか。

髙須: NECにとって、PC事業と携帯電話事業は、NECブランドを支える大切な事業であると、矢野社長は語っています。また、NECが中核事業として取り組んでいくNGN(次世代ネットワーク)においても、ヒューマンインターフェイスの部分を担うのが、PCと携帯電話ということになります。しかし、この分野は決して大きな収益を取れるというものではない。薄利という環境のなかで、どう利益を確保するのかという点で、常に努力を続けなくてはならない事業である、というのが全社の共通認識です。

-- 前任の片山氏が本社の執行役員専務を兼務していたのに比べると、髙須社長は、本社の役員ではありません。NEC本社との結びつきが薄れた印象が否めませんが。

髙須: その点での心配はないと考えています。矢野社長自身がPC事業はNECにとって欠かせない事業だと語っていますし、NECパーソナルプロダクツを含むパーソナルソリューションビジネスユニット全体を統括するのは、NECビッグローブ株式会社の社長に就任する鈴木俊一取締役執行役員専務ですから、NEC本社から見たPC事業体制の位置付けは変わらないといっていいのではないでしょうか。PC事業にマイナスになるようなことはありませんから、その点は、安心してください。

□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□NECパーソナルプロダクツのホームページ
http://www.necp.co.jp/
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(2006年6月21日)

[Text by 大河原克行]


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