大地震が起きたときに家まで帰る経路を調べる地図や、非常用のトイレなど、最近、防災グッズがちょっとしたブームだ。そんな中で、売れ行きがいいと言われているのが、電源のいらない携帯電話の充電器らしい。こうした防災グッズの「新顔」があるなかで、昔から、防災グッズの定番と言われているのがラジオだ。ソニーは、手回しによる発電で駆動する防災ラジオを以前から販売している。そのソニーから6月10日に発売された新機種「ICF-B01」は、手回しのハンドルを使って、ラジオだけでなく、携帯電話を充電する機能が新たに加えられた。新機能がどんなものなのか、試してみたくなり、さっそく購入してみた。 ●本体はコンパクト。さっそく手回し充電 パッケージを開けて、130×52×77mm(幅×奥行き×高さ)のボディを手に取ってみると、写真で見るより、ずっとコンパクトに感じる。持ち運び用の取っ手はないが、ちょうど手で握れるサイズにまとまっていること、底面の角も丸くなっていることにより、持った感覚も悪くない。約285gの重量が、さほど重く感じないのもそのせいだろう。ちなみに、単4アルカリ電池2本を入れると、重量は312gになる。 本体には、手回しで発電した電気を蓄電するニッケル水素電池を内蔵しているが、単4電池2本での駆動も可能だ。本体裏面に、充電池を使用するモードと、単4電池2本で使用するモードを切り替えるスイッチが付いている。ラジオや携帯電話を充電するときは、充電池モードにしなければならない。 さて、パッケージを開けたところで、まずは手回しハンドルの感触をチェック。本体の底に収納されているつまみを、SONYロゴの方向に向かって180度開くと、ハンドルが回せる状態になる。回す方向は時計回りでも反時計回りでもどちらでもかまわない。 実際にハンドルを回してみたが、感触は、特に重いとも、軽いとも感じない。回しているときは、モーターの軸を手で回しているときのような、「ウイウイウイ」といった音がする。音量自体はさほど大きくはないが、耳障りな音なので、まわりのスタッフに「何をやってるんですか?」、「FAXが壊れているのかと思った」などと言われてしまった。
●結構疲れる手回し充電。電池を入れておいたほうがラク ちなみに、手回し充電1分につき、ラジオ受信ならば、AMで約60分間、FMで約40分間、携帯電話ならば、連続待受約90分、連続通話が約3分間分の充電ができる。この「1分」だが、取扱説明書によると、「約120回転/分でハンドルを回した場合」とある。ハンドルの上にある充電ランプはその目安になっており、120回転/分を超えると点灯するようになっている。 しかし、実際にやってみると、けっこうなスピードでハンドルを回さないと、ランプが点灯しない。必死になって回さなければならないほどではないが、のんびり回していては間に合わない。おしゃべりしながらタラタラ回していては、とうていランプは点いてくれないだろう。 はじめは、「1分で携帯電話の待受が90分できるのか。とすると、5,6分回せば満充電になるかな?」などと考えていたのだが、甘かった。ランプが点灯するスピードでハンドルを回していると、日頃の運動不足も相まって、2分を超えたところで息切れがしてきて、3分になろうかというところで腕が痛くなり、やめてしまった。まったく電池のない携帯電話をフル充電させるには、けっこう根気がいる作業だろう。 あくまでも想像の範囲を出ないが、実際、災害に遭って、心身ともに危険な状態にある(かもしれない)ときに、生き延びるためとはいえ、これを1分間に120回のペースで回さなければならないのは、ツラいのではないか。 ちなみに、内蔵の充電池では、携帯電話の充電はできない。携帯電話を充電するときは手で回すか、アルカリ電池を入れていなければならない。単4型アルカリ電池2本を入れていた場合、1時間充電すると連続待受約10時間、連続通話が約20分可能になる。時間はそれなりにかかるが、手で回すことを考えると、こちらの方がラクなのは言うまでもない。自分で発電できるのがウリの製品ではあるが、ラジオを避難袋に入れる前に、ぜひとも単4電池も袋に入れておくことをオススメする。 使っていて1つ気になったのは、充電池の残り容量を知る手段がないことだ。手回しで充電できるのはいいのだが、残量の目安がないので、手で回していてもゴールが見えず苦しい。せめて携帯電話やiPodのように、3段階の電池マークでもあれば、「よし、2目盛り目までは手回しするぞ!」という風に、やる気がわくのだが……。
●LEDを2個搭載。簡易的な懐中電灯としても使える 「ICF-B01」は、本体側面部と上端部にLEDを1個ずつ装備している。側面部は「スポットライト」と呼ばれるもので、簡易的な懐中電灯として利用できる。 一方、上端部のLEDは「ソフトライト」と名付けられている。明るさはスポットライトよりかなり控えめで、明るい場所で点灯しても、光っているかどうかわからない程度の灯りだ。停電時など、最低限の視野を確保するためのロウソク代わりになる。 ただ、両方に共通していえるのは、既存の懐中電灯と比べるとかなり暗いということ。「ICF-B01」があるからといって、避難袋から懐中電灯を出してしまうのは危険だと思う。
●豊富な同梱物。目玉は貴重なソニーロゴ入りホイッスル パッケージには、FOMA、CDMA、PDC用の3種類の携帯電話コネクタのほか、災害時に助けを呼ぶためにホイッスルが同梱されている。このホイッスルは、ボディーカラーと同じオレンジ色のプラスチック製で、ソニーロゴが入っている。ホイッスルがパッケージに含まれていることは、ニュースリリースを読んで知っていたが、実物を見て、ソニーのロゴが入っているのを確認したときは、なんとなくうれしかった。 また、こうした付属物と、ラジオ本体をまとめて収納できるポーチも付属している。グレーの柔らかい素材でできたもので、ウォークマンシリーズに付属していたものと似た手触りだ。このポーチには、本体を収納する部屋と、携帯電話コネクタや、コネクタと本体をつなぐコード、そしてホイッスルをしまう脇ポケットが付いている。 実際の持ち運びには不便はしないのだが、ポーチを持ち運ぶとコネクタやホイッスルが接触してジャラジャラ音がするのが気になる。なくなりやすい部品だけに、ラジオ本体に収納できればなぁと思ってしまった。 できればこうした災害グッズにお世話になることは避けたいが、手回しハンドルにLED、携帯充電機能と、ちょっと変わり種のこのラジオ。決してハイテクではないが、ソニーの遊び心に触れられる一品だ。
□ソニーのホームページ (2006年6月9日) [Reported by ito-d@impress.co.jp]
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