ソニーの「VAIO type A」シリーズは、VAIOノートPCの中でもハイエンドモデルとして位置付けられる製品だ。今回登場したVAIO type Aは、筐体デザインが一新され、ノートPCとして世界で初めてBlu-ray Discドライブを搭載するなど、次世代AVノートPCと呼ぶにふさわしい製品へと進化している。 ●ボディカラーとして光沢のあるプレミアムブラックを採用 ソニーのVAIO type Aは、17型ワイド液晶を搭載した2スピンドルノートPCである。前モデルまでのVAIO type Aは、17型ワイド液晶搭載モデルと15.4型ワイド液晶搭載モデルが用意されていたが、今回の夏モデルでは、17型ワイド液晶搭載モデルに一本化されている。 VAIO type Aの夏モデルは、一般のショップで購入できる店頭モデルと、直販サイトなどで注文できる「VAIO・OWNER・MADE」モデルに大別でき、後者では、BTOによって仕様を自由にカスタマイズでき、店頭モデルには搭載されていない地上デジタルTVチューナを選べることが特徴だ。 VAIO・OWNER・MADEモデルでは、搭載液晶やOSによって4つのベースモデルが用意されているが、ここでは、1,920×1,200ドット(WUXGA)液晶を搭載し、OSとしてWindows XP Home Editionを搭載した「VGN-AR90S」(以下AR90S)を試用した。 新VAIO type Aでは、筐体のデザインも一新された。ボディカラーは、ピアノのような深い光沢を持つプレミアムブラックと、通常のブラックの2種類が用意されているが、AR90Sではプレミアムブラックが採用されている。また、サイド部分にも光沢パーツがふんだんに使われており、高級感を演出している。電源を入れると、液晶の下にあるVAIOロゴがライトアップされるなど、細部にもこだわっている。
VAIO・OWNER・MADEモデルのAR90Sでは、CPUやメモリ容量、HDD容量などは、BTOによって自由にカスタマイズが可能だ。CPUは、Core Duo T2600(2.16GHz)/T2500(2GHz)/T2400(1.83GHz)/T2300(1.66GHz)から選択できるが、今回の試用機では最上位のCore Duo T2600が搭載されていた。 チップセットはIntel 945PM Expressを採用。メモリはDDR2-4200対応で、SO-DIMMスロットを2基装備しており、2GB(1GB×2)または1GB(512MB×2)から選べる(どちらの構成でもデュアルチャネルアクセス対応)。試用機では1GBのメモリが搭載されていた。 今回登場したVAIO type Aは、HDDを2基搭載できることが特徴であり、上位モデルのAR90Sでは、RAID 0にも対応する。試用機には100GB HDDが2台搭載されており、合計200GBという大容量を実現していた。 VAIO・OWNER・MADEによるこの構成での価格は434,800円。
●地上デジタルTVチューナとフルHD対応液晶を搭載 AR90Sは、AV機能が充実していることが特徴であり、地上デジタルTVチューナを搭載することが可能だ。なお、VAIO type Aの市販モデルでは、地上アナログTVチューナ搭載モデルしか用意されておらず、地上デジタルTVチューナが欲しければ、VAIO・OWNER・MADEモデルのAR90シリーズを選ぶことになる(AR90シリーズでは地上アナログTVチューナの選択も可能)。 ちなみに、VAIOノートで地上デジタルTVチューナを搭載したのは、今回のVAIO type Aが初となる。ただし、BSデジタル放送や110度CSデジタル放送には対応していない。地上デジタル放送の視聴にはB-CASカードを装着する必要があるが、AR90Sでは、HDDの上にB-CASカードスロットが用意されている。 AR90Sの魅力の1つに、フルHD表示が可能な高解像度液晶ディスプレイを搭載していることが挙げられる。液晶の解像度はWUXGAで、地上デジタルのハイビジョン放送も、画質を損なうことなく、最高のクオリティで楽しめる。一般的なXGA液晶(1,024×768ドット)に比べると、一度に表示できる情報量は約2.9倍にもなり、ウィンドウを複数開いても快適に作業が行なえる。 液晶は、クリアブラック液晶(ピュアカラー)と呼ばれるもので、表面に写り込みを抑える多層ARコートが施されていることが特徴だ。いわゆるツルツルタイプの液晶で、輝度やコントラストも高く、表示品位は満足できる。 GPUとしてNVIDIAのGeForce Go 7600 GTを搭載していることも特筆できる。ビデオメモリも256MB搭載しており、高い3D描画性能を実現。最新の3Dゲームでも快適にプレイできるだけでなく、来年登場予定のWindows Vistaの3D GUI「Aero Glass」も余裕で動作するはずだ。
●ノートPCとして世界で初めてBlu-ray Discドライブを搭載 AR90Sの最大のウリが、Blu-ray Disc(BD)ドライブを搭載していることだ。BDは、次世代光ディスク規格の1つで、HD DVDと覇権を争っている。ノートPCで、BDドライブを搭載したのは、今回発表されたVAIO type Aが初となる。HD DVDもBDと同じく、次世代光ディスク規格であるが、現状ではROMドライブしか発売されておらず、記録ができないのに対し、BDドライブは、ライトワンスのBD-RメディアとリライタブルのBD-REメディアへの記録が可能なことが利点だ。 BD-R/REメディアは、1層で25GB、2層で50GBの容量を実現しているため、コピーワンスのハイビジョン放送もそのままの画質でBD-REメディアへとムーブできるほか、HDVカメラで撮影したハイビジョン動画を編集し、そのままBD-R/REメディアに保存することも可能だ。これまでの地上デジタル対応PCでは、録画した映像をそのままの画質でDVD-RW/RAMにムーブすることはできず、必ず標準解像度(SD画質)に変換されていたが、AR90Sなら、ハイビジョン画質のままライブラリ化することができるわけだ。 また、市販のBD-ROMタイトルの再生ソフトウェア「WinDVD BD for VAIO」がプリインストールされており、BD-ROMタイトルの再生にも対応する。ただし、BD-ROMタイトルの再生には多大なCPUパワーが必要なため、BD-ROMタイトルによってはコマ落ちしたり、音がとぎれてしまう可能性もある。
筐体のサイズが大きいため、キーボードにも余裕がある。キーピッチは約19mm、キーストロークは約3mmで、フルキーボードと同等である。もちろん、配列も標準的だ。キーボード左側には、ショートカットボタンや音量調節ボタン、ドライブイジェクトボタン、消音ボタンが、キーボード右上には、チャンネル切り替えやTV録画、再生などのAV機能操作用ボタンが用意されている。また、赤外線リモコンも付属しており、家電感覚で操作が可能だ。ポインティングデバイスとしては、インテリジェントタッチパッドが採用されている。
●HDMI出力やFeliCaポートを装備 インターフェイス類も充実している。USB 2.0×3やIEEE 1394(4ピン)、アナログRGB出力、モデム、Gigabit Ethernetなどのほか、デジタルのHDMI出力を装備していることが特筆できる。このHDMI出力は、著作権保護規格のHDCP規格もサポートしており、HDCP対応ディスプレイを接続すれば、著作権保護されたコンテンツの出力も可能になる。
カードスロットとしては、Type2 PCカードスロットとExpressCardスロットを1基ずつ装備するほか、メモリースティックスロットやSDカード/MMCスロットも搭載している。ただし、カードスロットのフタがダミーカード方式であることが気になった。底面にはポートリプリケーター接続用端子が用意されており、オプションのポートリプリケーターを装着することができる。
ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g無線LANとBluetooth Ver.2.0+EDRを搭載。本体手前に、ワイヤレスON/OFFスイッチも用意されている。また、パームレスト右側にFeliCaポートを装備しており、SuicaやEdyカードなどの情報を読み取ることも可能だ。液晶ディスプレイ上部には、31万画素CMOSカメラ「MOTION EYE」が搭載されており、ビデオチャットなどで活用できる。
AR90Sは筐体が大きく、重さも約3.8kgもあるため、基本的にデスクトップPC代わりとして使われることになる。そのため、バッテリ駆動時間の長さはそれほど重要ではない。AR90Sの場合、標準バッテリで約2時間駆動が可能とされている。モバイルノートPCなら約2時間では短すぎるが、AR90Sを移動中に使うことは考えにくいので、特に弱点とはならないだろう。なお、オプションのバッテリパック(L)を利用すれば約3時間駆動が可能になる。
●ノートPCとしてはトップクラスのパフォーマンスを実現 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、PCMark05や3DMark03、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3を利用した(電源プロパティの設定は「常にオン」で計測)。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較用に「Let'snote CF-Y5」や「FMV-BIBLO MG75S」、「Lenovo 3000 C100」の結果もあわせて掲載した。どのベンチマーク結果も、他のノートPCに比べて格段に高いスコアを記録しており、AR90Sのパフォーマンスの高さが分かるだろう。 AR90Sでは、HDDを2台搭載してRAID 0を構築しているため、PCMark05のHDD Scoreも高くなっている。また、GPUとしてGeForce Go 7600 GTを搭載し、3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアも非常に高い。3D描画性能を重視するユーザーでも、満足できるだろう。
【表】ベンチマーク結果
AR90Sは、世界で初めてBDドライブを搭載するなど、フラッグシップモデルに恥じない性能と機能を備えたノートPCである。価格はさすがに高いが、現時点で地上デジタルのハイビジョン放送をそのままの画質で光ディスクにムーブできるノートPCは、本製品しか存在しない。 ハイビジョン放送をライブラリ化して、永久保存しておきたいという人や、HDVカメラで撮影したハイビジョン動画をそのままの画質で保存しておきたいという人には、魅力的な製品であろう。 □ソニーのホームページ (2006年5月29日) [Reported by 石井英男]
【PC Watchホームページ】
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