ソニーのCore Duo搭載“ボードPC”
「VAIO type L」レビュー



 ソニーのVAIO ボードPC type Lは、“ボードPC”というユニークな愛称が付けられた液晶一体型のPCで、どちらかと言えばスペックなどよりも部屋においてマッチするといったデザイン面での強化が大きなポイントとなっている。

 本製品が他の製品に比べてユニークなのは、本体のフレームが透明になっており、実際に置いてみると本体が浮き上がって見えるという不思議なデザインを採用していることだ。こうしたデザインを採用することで、リビングなどに置いてもマッチするような“ライフスタイルPC”を目指すという。

 今回は、こうしたソニーのVAIO type Lの5つあるモデルのうち、19型ワイド液晶を採用し、Intel Core Duoプロセッサを採用したVGC-LA70Bの試作機をお借りすることができたので、それを利用してレビューしていく。

●リビングに置いても映える透明フレームにシルバーの本体というデザイン

 本製品の特徴はなんと言ってもそのユニークなデザインにある。写真で見れば一目瞭然で、フレーム部分が透明になっており、まるで本体が浮いているような錯覚を受けるデザインとなっている。さらにユニークのはインジケータもこの透明フレームに内蔵されているように見えることだ。実際には、本体部からLEDで光をあて、フレーム部分で光を屈曲させることでインジケータをフレーム部分に内蔵しているように見せているのだが、こちらもあまりPCでは見ることがないデザインで、オシャレな感じを醸し出しているのだ。

 なお、このフレーム、意外と汚れない。こうした透明なデザインを採用した場合、指紋が付いて汚れてしまったり、傷が付いてしまうことが心配だが、前面側はポリカーボネートの素材にトップコート加工が施してある。トップコート加工とは、最終仕上げの段階で何らかの皮膜を全体に施すコーティングで、傷や指紋などの汚れもつきにくくなるという特徴がある。せっかくオシャレなPCを買って意気揚々と置いたのに、汚れが目立ってしまっては意味がないので、こうした処理が施されていることは嬉しい限りだ。

 もう1つの特徴は、本体の前面から見える部分はいずれもシルバーをベースにした配色になっていることだ。これは、本体だけでなくキーボードやマウスもそうで、特にキーボードに関してはキーボードカバーがアルミ素材を利用しており、こちらも合わせて高級感を醸し出している。ただ、残念ながらリモコンに関しては、他のVAIOシリーズと同じ黒とシルバーをベースにしたものになっている。ここまでこだわるのであれば、リモコンも全部シルバーにして欲しかったと思う。

 このように、シルバーをベースにしたデザインを採用することは、日本の家庭のリビングにおいた時にマッチする可能性が高いと言える。というのも、日本でよくあるマンションデザインは、白を基調としたものが多く、それに合わせてリビングに置かれている家具なども白系の色を採用していることが少なくないからだ。実際、筆者の家も白をベースとしたリビングになっているが、そうしたところにシルバーを基調とした本製品を置いてみると実に映えていた。

筆者宅のリビングにおいてみたボードPC VAIO type L。透明なフレームが不思議なデザイン上のアクセントになっていてオシャレな感じを醸し出している 別アングル。やはり本体が浮き上がって見えるのがとても不思議な感じ 本体の上部にある電源のインジケータ。実際には下側から光を当てているのだが、不思議な感じのインジケータになっている
こちらは本体の下部に用意されている無線LANとHDDのインジケータ。こちらも内部に内蔵されているように見えるが、上の本体部分から光をあてている 本体上部には電源ボタンとディスプレイOFFボタンが用意されている。ディスプレイOFFボタンを押すと、ディスプレイとオーディオだけがOFFに出来る。常にPCをONにしておきたいユーザーで、夜中かってに音が鳴り出したりということを防ぎたいユーザーには便利 本体の裏側にあるアーム部、この状態がもっとも角度がついた状態。この状態から机に垂直な状態まで調節することができる

●ケーブルは本体裏面のカバーで隠して収納可能

 本体部分は、前面からは見えない裏側に集中している。本製品の裏側に回るとブラックをベースにした本体部分が見え、背面にあるアームで立つような構造になっている。このアームは自由に角度を変えることが可能で、ユーザーの目線に合わせて本体の角度を調節することができる。

 本体の裏側には簡単に取り外せるカバーが掛けられている。ACアダプタやEthernet、TVのアンテナ、ビデオ入力といった常設するケーブルはこのカバーを取り外さなければ取り付けられないようになっている。しかし、それにより、取り付けたあとでカバーを掛けてしまえば、ケーブルの取付部分などを隠すことができるので、ケーブルがだらしなくPCの背面をはい回っているというありがちな事態を避けることができる。

 このほか、背面にはUSB 2.0×3、モデム端子があるが、これらはカバーが掛けられていない部分に用意されている。これらのポートは常設するわけではないと考えられるので、使い勝手の観点からは嬉しい配慮だ。また、IEEE 802.11b/gに対応した無線LANも内蔵されているので、ケーブルは電源ケーブルとTVのアンテナだけという使い方も可能だ。

 本体の左側面にはTyp2 PCカードスロット×1、ExpressCard/54スロット、SDカードスロット、メモリースティックスロット、IEEE 1394(4ピン)、オーディオ入出力(マイク、ヘッドフォン、ライン入力)、USB 2.0×1が用意されている。

本体の左側面に用意されているポート。Type2 PCカードスロット×1、ExpressCard/54スロット、SDカードスロット、メモリースティックスロット、IEEE 1394(4ピン)、オーディオ入出力(マイク、ヘッドフォン、ライン入力)、USBポート×1が用意されている 本体の背面はカバーでケーブルなどが隠される設計になっている カバーを外したところ、ACアダプタ、Ethernet、TVのアンテナなどを接続する
TVチューナ部の端子。アンテナ、Sビデオ、コンポジット、オーディオ入力などが用意されている モデムポートとUSB×3が背面に用意されている

 本体の右側面には光学ドライブが用意されている。光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブ(松下製「UJ-846S」)が採用されており、DVD±R DLの書き込みが可能となっている。なお、ドライブのローディング方式はスロットイン式になっているのだが、ドライブの手前に透明フレームが来る形になっており、ドライブにメディアを挿入する場合には、いちいち側面に回り込んでドライブの穴の位置を確認しないと挿入しづらい。このあたりはデザイン優先ということでしかたない面はあると思われるが、ぜひ次機種では何らかの形で改善して欲しい点と言える。

 ただ、特筆すべき点として、DVD再生時の静粛性が挙げられる。実際、DVDビデオを再生した見たところ、動作音は通常時とほとんど変わらなかった。最近のスリムドライブを採用した一体型PCでDVDビデオの再生を始めると、そのノイズが気になることが多いが、本製品ではそういうことは無かった。リビングに置くとなるとそうしたノイズは少ないに越したことはなく、この点は評価できるだろう。

本体上部にはCCDカメラが用意されており、インスタントメッセンジャーなどで利用できる DVDドライブはスロットイン方式。前面から見ていると、スロットの位置がややわかりにくい
付属のキーボードとマウスは2.4GHzの無線方式。シルバーのデザインで本体と調和がとれたデザインとなっている。FeliCaリーダーも内蔵しており、付属のFeliCaアプリケーションを利用してEdyを利用したりという使い方が可能 付属のリモコンは他のVAIOシリーズと共通のもの。どうせならリモコンも全面シルバーの方がよかったような気もする

●新しいソフトウェアVAIOインフォTVで気軽にTVをながら視聴

 本製品はアナログ放送用のTVチューナが内蔵されており、TVアンテナないしはSビデオ/コンポジット入力を利用して、TV放送などを録画することが可能になっている。採用されているTVチューナユニットは、3次元Y/C分離、デジタルノイズリダクション、TBCなどの高画質化回路を備えているほか、ソニーの動画再生高画質化ソフトウェアであるMotion Reality LEも標準で導入されており、アナログ放送を高品質で楽しむことができる。

 録画予約や視聴は、従来のVAIOシリーズと同じように10フィートUIソフトウェア“Do VAIO”を利用してリモコンで操作することができるのだが、本製品にはそれに加えて“VAIOインフォTV”という新しいソフトウェアが追加されている。VAIOインフォTVは、いわゆる2フィートUIと呼ばれるWindowsベースのアプリケーションで、マウスやキーボードでの操作を前提としたアプリケーションだ。

 というのも、Do VAIOのような10フィートUIアプリケーションはリモコンで操作するのには適しているのだが、逆にWindowsの他のアプリケーションと一緒にマウスやキーボードで利用するにはやや大げさな作りだ。しかし、キーボードやマウスで操作しているときに、いちいちリモコンに持ち替えるというのも面倒で、できれば2フィートUI環境でTVを簡単に見られるソフトが欲しいところだ。ちなみに、VAIOシリーズの場合、音楽の再生はSonicStageで行なえていたのだが、TVの再生はDo VAIOのみで2フィート用のアプリケーションが用意されておらず、他のWindowsアプリケーションとの併用、例えばながら視聴などにはあまり適していなかった。

 そこで、このVAIOインフォTVを利用すると、画面の右端にバーの形でTV画面とコントロールパネルが表示される。このVAIOインフォTVの起動は、キーボードのS3キーを押すだけでよく、まさにながら視聴を意識した作りになっている。全画面に最大化したり、TV画面をフローティング表示したいという使い方も可能だ。

 このほかユニークな機能としては、チャンネル復帰タイマーがある。これは、ある時間を設定しておくと、その時間が経過すると元のチャンネルに戻る機能で、例えばCMの間だけ他チャンネルを見たいが、その後は元のチャンネルに戻したいという時に利用することができる。また、画面の下部にはソニーのiEPGである「テレビ王国」からとってきたEPGのデータが表示されるが、そこに表示されるリンクをクリックすると、その番組に関係した内容をYahoo! Japanで検索して表示してくれる機能も用意されている。ながら視聴しながら、ちょっと気になったことがあった時などに便利な機能だ。

VAIOインフォTVでは、画面の右側にちょっとだけ表示される。ながら視聴に最適。もちろん全画面にもできる VAIOインフォTVでは下部に表示されるEPGの情報を利用して、Yahoo! Japanでワンタッチ検索することができる

●CPUにはCore Duoを採用しデスクトップPCとして十分な性能を実現

VGC-LA70Bのデバイスマネージャによる表示

 もちろん、VAIO type Lは、PCとしての基本的な能力も十分なものを実現している。CPUは、IntelのCore Duo T2300(1.66GHz)を採用している。ご存じのようにCore Duoは本来モバイル向けのCPUだが、デュアルコアプロセッサとなったことで、デスクトップPC用のプロセッサとして利用しても十分な処理能力を備えている。

 チップセットもIntel 945GM+ICH7Mとモバイル用のものが採用され、GPUはIntel 945GMに内蔵のGMA 950が利用されている。メインメモリは標準で512MB(DDR2-533)だが、最大で2GBまで増設することができる。メモリモジュールはSO-DIMMの形で実装されており、空いているメモリスロットのもう1つにDDR2-533のSO-DIMMを挿入することでメモリ増設が可能だ。HDDは200GBで、Cドライブに30GB、Dドライブに残りの容量が割り当てられている。なお、試作機ではHDDはSeagateのST3200827ASが利用されていた。

 液晶ディスプレイは19型ワイドで、解像度はWSXGA+(1,680×1,050ドット)になっている。液晶パネルにはソニー独自のクリアブラック液晶が採用されており、輝度は非常に明るめで、液晶TVに匹敵するような明るさだ。19型というサイズを考えると、解像度も十分に広く、液晶に不満を感じるということはまずないだろう。

●デザインを重視するユーザーにお勧めしたい製品

 以上のように、VAIO type Lは、CPUにデュアルコアのIntel Core Duoを採用するなどPCとしては十分な処理能力を持ち、WSXGA+という広めな解像度の19型ワイド液晶を搭載するなど、液晶一体型PCとして十分な性能を持っている。

 ただ、1つだけ気になることを挙げるとすれば、25万円という価格だ。OSが異なるので直接比較はできないが、同じようにデザイン性をアピールしているiMacのWSXGA+の20型モデルが、Intel Core Duo 2GHz、ATI Radeon X1600、250GBのHDDを搭載して21万円前後ということを考えると、やや“お高い”かな、という感はしなくもない。iMacにはOffice 2003がバンドルされていないので、その分が2万円程度だと考えても、やはりやや割高感がある。

 しかし、透明フレームなどのユニークさや、シルバーをベースにした他に例をみないデザインは、デザインを重視するユーザーにとってはそれだけで十分な付加価値があると言えるだろう。そのデザインに+αを支払うと考えるのであれば、それはそれでありだろう。また、価格が気になるのであれば、下位モデルとなるVGC-LA50B(22万円前後)ないしはLA50(Officeなし20万円前後)を選択するというのもありだろう(CPUはCeleron-M 420となる)。

 例えば、オシャレな家に住んでいて、その雰囲気を壊したくないPCが欲しいとか、リビングにPCを1台置きたいんだけど、無骨なタワーケースでは奥さんが許してくれない、とかそういうシチュエーションにこそ、本製品は活きてくる製品だ。また、液晶一体型市場のメインターゲットである学生や20代シングルというユーザーにとっても、オシャレに部屋を飾れるインテリア兼TV PCとして、本製品は魅力的な製品となるだろう。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.vaio.sony.co.jp/L/
□関連記事
【4月12日】ソニー、Core Duo搭載の“ボードPC”「VAIO type L」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0412/sony3.htm

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(2006年4月17日)

[Reported by 笠原一輝]


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