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CeBIT 2006レポート

VIA、TDP3.5Wの超低電圧版C7-Mを発表
~PBJのUMPCに搭載され日本で発売へ

会期:3月9日~15日(現地時間)

会場:独ハノーバー市ハノーバーメッセ(Hannover Messe)



 台湾のファブレス半導体ベンダVIA Technologies(以下VIA)は、CeBITの会場において記者会見を開催し、同社のモバイル向けCPUであるC7-Mの超低電圧版を発表した。

 VIA Technologiesによれば、その超低電圧版C7-Mの中でも、もっとも低電圧な1GHzの製品は、駆動電圧が0.795Vと、本当に超低電圧で駆動されており、熱設計消費電力(Thermal Desgin Power、以下TDP)がわずか3.5Wと、Intelの超低電圧版Pentium Mの5.5Wに比べてさらに低く抑えられている。

 同時に、日本のPBJ(旧PaceBlade Japan)から、この超低電圧版C7-M 1GHzを搭載した“Origami”デバイスことUMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)も発表され、展示された。

●0.795Vという超低電圧で動作させ低消費電力を実現した超低電圧版C7-M 779

 C7は、2005年6月のComputex Taipeiにおいて発表された。今回発表された超低電圧版C7-Mは、その中でも7W以下というファンレス設計が可能なモバイル向けCPUで、1.5GHz~1GHzまで5モデルが用意されている。なお、すでにVIAもモデルナンバーのスキームを導入しており、TDP7.5Wの1.5GHzのモデルが775、TDP5Wの1.2GHzが772などの具合に設定されている。

 今回発表された中でも注目すべきは、779と呼ばれるモデルで、動作クロック1GHzでTDPがわずか3.5Wの製品が用意されていることだ。こうした低電圧で動かすことができる秘密は、1つにはC7が採用しているプロセスルールにある。C7は、IBMの半導体工場で製造されており、プロセスルールはSOI技術を活用した90nmプロセスルールになっている。SOIを利用することで、トランジスタからの漏れ電流を少なくすることが可能になり、結果として低消費電力を実現できるのだ。

 もう1つの理由としてあげられるのが、PC用のプロセッサとしては例がないほど非常に低電圧で駆動されていることだ。Intelの超低電圧版Pentium M(Dothanコア、90nm)が0.956Vで駆動されていると言えば、そのすごさがわかっていただけるだろうか。一般的に、半導体の消費電力は、電圧の二乗に比例して増えていくので、電圧が下がることは、電圧の二乗に比例して消費電力も下がることになるので、大幅な消費電力の低減を実現することが可能になっているのだ。

超低電圧版C7-Mのスペックを説明するスライド 超低電圧版C7-Mと超低電圧版Pentium Mとの比較

【表】超低電圧版C7-Mの製品
モデルナンバー最高
クロック
最低
クロック
FSB最大
クロック
(TDP/電圧)
最低
クロック
(TDP/電圧)
C4モード時
7751.5GHz400MHz400MHz7.5W/0.956V0.75W/0.796V0.35W以下/
0.748V
7721.2GHz400MHz400MHz5W/0.908V0.75W/0.796V0.35W以下/
0.748V
7711.2GHz400MHz400MHz7W/0.86V0.75W/0.796V0.35W以下/
0.748V
7701GHz400MHz400MHz5W/0.908V0.75W/0.796V0.35W以下/
0.748V
7791GHz400MHz400MHz3.5W/0.796V0.75W/0.796V0.25W以下/
0.748V

●2006年の半ばにはさらに実装面積を35%削減する1チップ構成のチップセットを投入

 もう1つの大きな特徴として、バッテリ駆動時に省電力機能を効かせた状態での消費電力が低いことだ。超低電圧版C7ではバッテリ駆動時に省電力機能を有効にすると、数段階を経て400MHzにまで下げることができる。この400MHzでの駆動時には、消費電力はわずか0.75Wであるという。ちなみに、Intelの超低電圧版Pentium M 753(1.2GHz、Dothanコア)がSpeedStepを有効にして600MHzで動作時させたときの電圧が0.812VでTDPが3Wであることを考えると、超低電圧版C7-Mの低消費電力は際だっている。

 なお、このほかの仕様は、従来のC7と同じになっている。システムバスは400MHzでP4バス互換のV4バスを採用しており、それぞれ128KBのL1キャッシュとL2キャッシュを備えている。拡張命令セットにはSSE2、SSE3に対応しており、NXビット対応やSHA-1/AESの暗号化エンジンを内蔵している他、C4から通常モードへ復活する際の復帰速度を速める2つのPLLを利用するなどの特徴を備えている。

Computex TaipeiではVX700というノース/サウスブリッジを1チップに統合したチップセットが追加され、実装面積が35%も減少する。さらに2007年にはメディア再生機能を強化したチップセットが計画されている

 パッケージにはNanoBGA2と呼ばれる21×21mm(幅×奥行き)という小型パッケージが利用されている。こうした小型パッケージは、CPUをマシンに実装する際に実装面積を小さくすることができるので、モバイルPCには最適となっている。

 VIA Technologiesのイーバン・ウー氏(CPUプロダクトマーケティングディレクター)は「Computex Taipeiの時には、サウスブリッジとノースブリッジを1チップにしたVX700というチップセットを導入する。これにより、35%の実装面積の実現が可能になり、さらに小型の基板を、というニーズに応えることができるようになる」と述べ、将来に向けてさらなる小型化が実現できるようなソリューションを提供していくつもりであると説明した。



●超低電圧版C7-MがPBJのUMPCである“SmartCaddie”に搭載され、日本に登場

 すでにVIA TechnologiesのC7-Mは、TwinHeadなど台湾のOEM/ODMベンダのノートPCに採用されており、主に中国や中東といった成長市場向けに投入されているが、これまで日本市場向けの製品に採用された例は無かった。

 しかし、今回のCeBITの会場において、PBJのSmartCaddieと呼ばれるUMPCに搭載され、第2四半期に日本市場向けに投入されることが明らかにされた。CPUには超低電圧版C7-M 1GHzが搭載されており、外見から判断するとファンレス設計になっているものと見られる。

 OSはWindows XP Tablet PC Edition 2005で、Touch Pack for Windows XPがプレインストールされており、Microsoftが提唱するUMPCの仕様を満たしている。操作はタッチパネルか、液晶の右側に用意されているスティック型のポインティングデバイス、液晶の左側にある十字カーソルなどを利用して行なわれる。本体の左右にはUSBポートを1つずつ、本体の右側面には電源ボタンとボリュームボタンを備え、ヘッドフォン端子も用意されている。なお、バッテリは10.8Vの2,400mAhの3セルで、容量は25.92Whとなる。

 なお、VIAによれば価格などは未定であり、どのくらいになるかは今のところわからないとのことだった。

PBJのSmartCaddieは、Microsoftの“Origami”規格に沿ったUMPC 本体の右側面、電源ボタン、USBポート、ボリュームボタン、ヘッドフォンジャックがある 本体の左側面、ACジャックやUSBポートなどがある
CPUは超低電圧版C7 1GHzで、GPUはチップセット内蔵のUniChrome Proを利用する バッテリは10.8Vの2400mAhの3セルで、容量は25.92Wh 付属のACアダプタは割とコンパクトにまとまっている

●C7を搭載したEPIA ENのMini ITXマザーボードも今月中に出荷開始

 このほか、モバイルPC向け以外にもVIAの各種戦略が発表された。VIAは低価格向けの製品が多く、中国や中東、東南アジアなどこれからの成長市場を重視した戦略をとっているが、今後はアフリカなどのこれからPCが普及していくような市場を重視するとあらためて表明した。VIAが“pc-1イニチアシブ”と呼ぶこの取り組みでは、PCやインターネットを利用できる人口を増やしていくということを目標にしているという。

 VIAのコーポレートマーケティング担当副社長のリチャード・ブラウン氏は「現在全世界でPCやインターネットを使えるのは人口の20%程度である10億人にすぎない。これをもう10億人増やすべく、活動していきたい」と述べ、今後まだPCが普及していない国々に対する製品として、同社の低消費電力CPUやチップセットを利用したpc-1プラットフォームと呼ばれる低価格なPCやアプライアンスを提供していきたいと説明した。

 また、VIAでは「EPIA」と呼ばれる超小型フォームファクタを採用したマザーボードを提供しているが、CeBITにおいて「EPIA EN」と呼ばれるC7ベースのCPUを搭載したMini ITXマザーボードを投入したことを明らかにした。すでにエンジニアリングサンプルの提供は始まっており、3月中には大量出荷を開始したいとのことだった。

EPIA ENはC7ベースのCPUを搭載したMini ITXマザーボード 発表されたEPIA ENマザーボード

□CeBIT 2006のホームページ(英文)
http://www.cebit.de/
□関連記事
【3月10日】【CeBIT】スケールメリットによる低価格でUMPCの弱点を克服する
Microsoftの“Origami”
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0310/cebit03.htm
【3月9日】Microsoft、超小型PC“Origami”プロジェクト公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0309/ms.htm
【2005年12月9日】VIA、C7をサポートしたチップセット「CN700」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1209/via.htm

(2006年3月11日)

[Reported by 笠原一輝]

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