24型クラスの大型液晶ディスプレイは、数年前は製品数も少なく、価格も30万~50万円程度と、気軽に購入できるものではなかった。しかし、最近になって、このクラスの製品の値段も急速に下がってきた。 今回紹介するナナオの24.1型ワイド液晶ディスプレイ「FlexScan S2410W」(以下S2410W)は、以前レビューした21.1型ワイド液晶ディスプレイ「FlexScan S2110W」(以下S2110W)の上位に位置する製品である。なお、S2110Wは、ナナオの直販専用商品であったが、S2410Wは、一般の量販店などで販売される通常商品である。 ●高さやチルト角を変更可能 S2410Wは、WUXGA表示(1,920×1,200ドット)に対応した24.1型ワイド液晶ディスプレイである。従来のナナオのFlexScanシリーズは、画面のアスペクト比が4:3であったが、最近はワイド液晶が主流になりつつあり、S2410WでもS2110Wと同様、アスペクト比16:10のワイド液晶パネルを採用していることが特徴だ。S2110Wの表示解像度は1,680×1,050ドットであり、S2410Wのほうが横に240ドット分、縦に150ドット分広いことになる。いわゆるフルHD解像度が1,920×1,080ドットなので、フルHDコンテンツも余すところなく表示できる。
S2410Wの筐体は、直線を活かしたシンプルなデザインで、質感も高い。ボディカラーは、今回試用したホワイトシルバー以外に、ブラックも用意されている。 S2410Wは、円弧状のスライド機能を搭載した「ArcSwing2スタンド」を採用しており、高さやパネル角度(チルト角)を自由に変更できることが特徴だ。上下の昇降幅は95mm、チルト角は上60度、下5度の範囲で変更できる。 【お詫びと訂正】初出時に、ArcSwing2スタンドについて「(上下とチルト角は連動して変わるため、別々に変えることはできない)。」とありましたが、個別に動作いたします。お詫びして訂正させていただきます。 また、台座部分には、左右のスウィーベル機構が搭載されており、左右172度の範囲で回転可能だ。このあたりの筐体デザインについては、基本的にS2110Wと同じである。 額縁は比較的狭く、24.1型ワイド液晶ディスプレイとしては設置面積も狭い。とはいえ、横幅は566mmあるので、それなりに場所はとる。S2110Wと同じく、電源回路を内蔵しているので、直接ACケーブルを接続できる。 入力端子としては、2系統のDVI-I端子を搭載しており、アナログ出力にもデジタル出力にも対応する。ケーブルも、DVI-DVIケーブルとD-Sub15ピン-DVIケーブルの2本が付属する。また、付属のUSBケーブルでPCと接続することで、PCから画質などの調整が可能な「ScreenManager Pro for LCD」を利用できるようになるほか、2ポートのUSBハブ機能も内蔵している。ただし、スピーカーは内蔵していない。
●コントラスト比1,000:1、輝度450cd/平方m、応答速度8msを実現 まずは、液晶ディスプレイとしての基本スペックを見ていこう。コントラスト比は1,000:1、最大輝度は450cd/平方mと、いずれもトップクラスの数値を誇る。視野角は水平/垂直共に178度と広く、色再現性も高い。パネル自体も1,677万色表示のリアルフルカラー対応であることに加えて、内部でのデータ処理を14bitで行なっているため、マッハバンドなどが生じることもない。 さらに、動画表示性能を高めるために、液晶テレビなどに搭載されているオーバードライブ回路を装備していることも特筆できる。オーバードライブ回路は、通常よりも電圧を高め(または低め)にかけることで、液晶の応答速度(特に中間階調)を改善する技術である。S2410Wの応答速度は、8ms(中間調領域)と高速であり、DVD-Videoなどの動画再生や動きの速いアクションゲームなども、残像が気になることはほとんどない。 WUXGA表示では、XGA表示(1,024×768ドット)に比べて、一度に画面に表示できる情報量は約2.9倍になるので、複数のウィンドウを同時に開いても、快適な作業が可能だ。 なお、ビデオカードによっては、1,920×1,200ドット出力に対応していない場合もある。基本的に、最近のNVIDIAやATIのGPUを搭載した製品なら、問題なく利用できるようだが、ナナオのサイトにビデオカードの互換性情報が掲載されているので、チェックしておくとよいだろう。今回は、GeForce FX 5900 Ultra搭載ビデオカードでテストを行なったが、DVI出力(デジタル)、D-Sub15ピン出力(アナログ)ともに、問題なく1,920×1,200ドット表示が可能であった。ただし、デジタル出力とアナログ出力の映像を比較すると、やはりフォーカスはアナログのほうが甘くなる。画質を重視するなら、デジタル出力で使うことをお勧めする。
●静電容量式のタッチセンサーを採用 S2410Wでは、ディスプレイ下部に静電容量式のタッチセンサーを8つ(電源スイッチも含む)装備しており、OSDを利用して画質などの調整が可能だ。ボタンが目立たないのはデザイン的には好ましい。この種のタッチセンサーは、感度が高すぎたり、低すぎたりして操作しにくいこともあるが、S2410Wのタッチセンサーは、操作感も良好だ。 画質調整機能は豊富で、輝度や色温度、ガンマ、色の濃さ、色合い、ゲインなどを自由に変更できる。色温度は、4,000K~10,000Kの範囲で500K刻みと、9,300Kの14段階に設定可能だ。また、光の3原色であるRGBとその加法色(YCM)を別々に、色相、彩度を調整できる6色独立調整機能も搭載するなど、こだわりが感じられる。さらに、表示する画像に適した表示モードをワンタッチで切り替えられるFineContrast機能も搭載している。FineContrast機能では、「Text」「Picture」「Movie」「sRGB」「Custom」の5種類のモードが用意されており、OSDを開かずに左右キーを押すことで、モードを変更できる。
●アスペクト比を保ったままの拡大や実解像度表示も可能 S2410Wは、1,920×1,200ドットのワイドフォーマットに対応しているが、ビデオカードやアプリケーションによっては、アスペクト比4:3の解像度で出力されることもあるだろう。その場合、実解像度で表示するか、アスペクト比を保ったまま拡大するか、あるいは強制的にフルスクリーンで表示するか(アスペクト比が変わるので、表示は横長に伸ばされる)を選択できることも評価できる。低価格な液晶ディスプレイでは、こうした選択はできず、強制的にフルスクリーン表示されてしまうことが多い。また、拡大表示時のエッジのスムージング強度を5段階で選択できるほか、実解像度表示やアスペクト比を保ったままでの拡大表示時の余白のグレースケール輝度も変更できるなど、よく練り込まれている。 また、付属のUSBケーブルで本体とPCを接続し、専用ユーティリティ「ScreenManager Pro for LCD」を利用することで、PCから画質の設定などを行なうことが可能になる。ScreenManager Pro for LCDを使えば、あらかじめ指定しておいたアプリケーションの起動によって、自動的に表示モードを変更させるAuto FineContrast機能の利用が可能だ。そのほか、ディスプレイの電源を自動的にON/OFFするタイマー設定機能なども用意されている。
●高解像度が必要な人には特にお勧めできる製品 S2410Wは、ディスプレイメーカーとして定評のあるナナオの製品だけあって、基本性能、デザイン、使い勝手ともに優秀である。デルの24型ワイド液晶「Ultra Sharp 2405FPW HAS」も表示解像度や実売価格はほぼ同等だが、中間色の応答速度が12msなので、動画表示性能はS2410Wのほうが上だ(コンポーネント入力端子などを装備している点では、Ultra Sharp 2405FPW HASが優れているが)。WUXGA表示が可能な液晶ディスプレイとしては、トップクラスのコストパフォーマンスだといえる。 【編集部注】価格に対する記述は「Ultra Sharp 2405FPW HAS」の通常販売価格での比較であり、キャンペーン時などの特価を除きます。 16:10のワイドフォーマット対応なので、DVD-Videoの再生にも最適だ。また、5年間の長期保証に対応していることも評価できる(液晶パネルおよびバックライトの保証期間は3年間)。これだけの解像度があれば、通常の利用で不満を感じることはまずないだろう。特に、DTPデザイナーやフォトレタッチ用途、大きなワークシートを編集することが多い人など、現在利用しているディスプレイで、解像度不足を感じている人には特にお勧めしたい製品だ。 □関連記事 (2005年11月22日) [Reported by 石井英男]
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