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IntelのサーバーCPU計画に大幅な遅れ




●ドミノ式に倒れ込むIntelのサーバーCPUロードマップ

 IntelのサーバーCPUロードマップが、ドミノ式に倒れつつある。

 1つの製品の遅れが、後続CPUの遅れを引き起こし、さらにそれが他の製品ラインにも波及。最終的には、サーバーCPUのFSB(Front Side Bus)のシリアル化という、Intelの大計画までも揺るがし始めている。シリアルFSB計画は、少なくとも1世代分は遅れる見込みだ。そして、こうしたロードマップ変化の背後に見えるのは、ひたひたと迫るAMDに怯えるIntelの姿だ。

 まず、Intelは、一連のIA-64系CPUの計画を後退させた。2006年頭に発表する予定だったデュアルコアIA-64「Montecito(モンテシト)」を、2006年中盤までスライドさせた。さらに、2006年の予定だったMontecito後継のデュアルコアIA-64「Montvale(モンベール)」は2007年へ、2007年の予定だったクアッドコアIA-64「Tukwila(タックウイラ)」は2008年へと、それぞれ延期された。Montecitoはもともと2005年後半の予定だったので、全てのIA-64 CPUが1年ずつスリップしたような格好だ。

 IA-64プロセッサのこの変更の直接の原因、Montecitoの技術上の問題だが、その影響はIA-32系のMP(マルチプロセッサ)サーバー向けCPUの製品計画にも及んだ。Tukwilaとリンクしていた「Whitefield(ホワイトフィールド)」がキャンセルとなり、その代替として新プラン「Tigerton(タイガートン)」が登場した。WhitefieldがTukwilaと連動していたのは、両CPUが、IA-64とIA-32の「共通プラットフォーム(Common Platform)」構想の中で計画されていたからだ。

Intel MPサーバーCPUの移行計画の変遷
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●シリアルインターフェイス化で共通プラットフォームへ

 現在、IA-64系CPUとIA-32系CPUには、プラットフォームレベルでの共通性がない。FSB(Front Side Bus)に互換性がないからだ。IA-32は64bit幅のデータバスのP4系バス、IA-64は128bit幅のデータバスのItanium系バスを採用している。そのため、ソケットもバスも、チップセットも全てが両CPU系列で異なっている。

 通常なら、これだけ異なる2つのCPUバスを、同じプラットフォームで低コストに吸収することは難しい。にもかかわらず、2007年に登場する予定だったTukwilaとWhitefieldは、共通プラットフォームになる予定だった。それは、IntelがMP系CPUについては、IA-64とIA-32のどちらも、PCI Expressライクなシリアル伝送技術を使ったFSBへ移行させる計画だったからだ。

 IntelのTukwilaは、「Fully Buffered DIMM(FB-DIMM)」のインターフェイスを内蔵し、FB-DIMMを直結できると言われる。また、メモリコントローラをCPU側に移行させるのと同時に、FSBも従来のパラレル系の広幅バスから、シリアル系のポイントツーポイント接続型の狭幅インターコネクトへと移行する。シリアルインターコネクトを、CPU-チップセット間と、CPU同士の接続の両方に使用すると見られる。つまり、AMDがK8(Athlon 64/Opteron)アーキテクチャで、CPU側にDRAMインターフェイスとポイントツーポイント型の「HyperTransport」内蔵へと移行したのと、ほぼ同種のスタイルへと移行する計画だった。

 そして、IA-32系のWhitefieldも、Tukwilaとほぼ同じような構成を取ると見られていた。同じ構成になると、両CPUはともにCPU-チップセット間を、従来のパラレルFSBではなく新しいシリアルインターコネクトで接続することになる。そのため、チップセット側を共通化することが可能になるというストーリーだった。IntelがスロットレベルからTukwilaとWhitefieldを互換にすれば、両CPUに対応できるシステムも容易になる。

 下が想定される共通プラットフォーム計画のTukwilaとWhitefieldの姿だ。図中の両CPUのFB-DIMMインターフェイスとシリアルインターコネクトの数はあくまでも推測だ。

Intelの当初の計画の2007年MPサーバーCPU(一部推定)
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●AMDのクアッドコアCPUに先手を打つ

 ところが、Tukwilaが約1年後退してしまったため、共通プラットフォームという構想自体が、少なくとも2007年という時点では意味がなくなってしまった。複数のソースによると、そのためIntelはMPプロセッサ計画全体の見直しに入ったと言われる。

 問題は、シリアルインターコネクトとメモリインターフェイスを統合するには、開発時間と労力がかかることだ。プラットフォーム全体のアーキテクチャも一新されるため、バリデーションにも時間がかかり、思わぬ技術上のトラブルで遅延も発生する可能性も高まる。Tukwilaとの共通プラットフォームという目標があった時は、それでも、アーキテクチャを共通化する意味があった。しかし、Tukwilaが後ろへ行ってしまった今、2007年のCPUに、苦労してシリアルインターコネクトとFB-DIMMインターフェイスを内蔵する意味は薄れてしまった。

 一方で、Intelは、MPプロセッサでは競争にさらされつつあった。AMDのOpteronがこの市場に地歩を築き始めたからだ。Intelは、AMDが65nmプロセス世代ではクアッドコアのサーバーCPUを投入して来ると予期しているという。実際のAMDの計画がどうなのかは、今のところ明瞭ではない。AMDは65nmプロセスでは次の「K10」アーキテクチャへ移行を始める見込みで、現状ではロードマップはまだ定かではない。しかし、Intelの内部には、AMDに対して先手を打つために、クアッドコアのIA-32系CPUの投入準備を急ごうという意見があると言われる。

 こうした状況で、できるだけ早くクアッドコアCPUを投入するためには、共通プラットフォーム化にこだわる必要がないという戦略がIntel内で浮上してきたようだ。Tukwilaとのスロット互換にこだわらず、もっと迅速にクアッドコアのMP CPUの投入を行なった方がいいという考え方だ。そこで、Whitefieldをいったんキャンセル、その代わり、パラレル系FSBを強化したTigertonを投入しようという戦略に転換したと言われる。

 現状では、IntelがもともとのプランのシリアルFSBのIA-32 CPUへの採用を、どの時点で行なうかは見えていない。本来Whitefieldの後継だった45nmプロセスの「Dunnington(ダニングトン)」も、現状では内容が変更されたと見られる。少なくとも、1~2世代分は、IntelのIA-32 CPUのシリアルFSB化がずれ込んだのは確かなようだ。

 皮肉なのは、現在、米サンノゼで開催されている「Fall Processor Forum」では、Microsoftの次世代ゲームコンソール「Xbox 360」のCPUが、広義でのシリアル系FSBを使うことが公式に発表された。チップ間の広帯域インターコネクトは、シリアル系技術を使うことがトレンドとなりつつある。

□関連記事
【2004年11月17日】【海外】Intel CPUはシリアルFSBへと向かう
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1117/kaigai135.htm

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(2005年10月27日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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