2人の担当者に、新製品への想いや、日本のユーザーへのメッセージなどを聞いた。
●iPodは複数台買ってほしい --iPod nanoの発売から、わずか5週間で新製品が出るとは思わなかったですね。このスケジュールは最初から予定していたのですか。 イング はい、当初の計画通りです。iPod nanoに続き、第5世代の新iPodの投入によって、ホリデーシーズンに向けて、これまでにない最強のラインアップを取り揃えようと考えていました。 iPodは、発売17日間で100万台の出荷を達成しましたが、それは手軽に持ち運べるというコンセプトが受け入れられた。今回の新iPodは、前モデルと比較して、30%も薄く、記憶容量は50%も増えている。そして、2.5インチのカラースクリーンで、動画を美しく再生できる。しかも、価格は従来のiPodと同等です。そして、ミュージック+ビデオという楽しみ方が初めて提供できた。shuffle、nano、そして、今回の新iPodによって、ライフスタイルや利用シーンにあわせた選択ができる、最強のラインアップが整ったといえるのではないでしょうか。私の個人的意見としては、ぜひ複数のiPodを買っていただき、利用シーンにあわせて使い分けていただくのか一番いいと思っているのですが(笑)。 --iPodは、あくまでもミュージックプレーヤーという言い方にこだわっているようですね。今回の新製品も、ビデオプレーヤーという言い方を前面に打ち出してはいませんね。
--音楽を聞く時間と、ビデオを見る時間のどちらが多いという想定して、開発したのですか。 イング それは、ユーザーによって使い方が異なりますから、どっちの使い方が多いというのは想定していません。ビデオのコンテンツはますます増加していきますから、ビデオで使う時間は、徐々に増加していくのではないでしょうか。 --ビデオが見られるようになると、いくつかの変化がありますね。例えば、腕につけたり、ベルトにつけたりすると、ちょっとビデオは見づらいですね。ホールドポジションも変えなくてはなりませんが(笑) イング 確かにそうですね。私はうーん、ポケットに入れていますね。(自分のジーンズのポケットを指しながら)いわゆるnanoポケットにはnanoを入れて、こっちの大きいポケットの方にはiPodを入れる。これは、iPodポケットといっていいんでしょうか(笑)。 そして、ミュージックビデオをみたい時は、ポケットから出して見るという使い方が、最適ではないでしょうか。従来のiPodよりも携帯性が良くなっていますから、サッと、ポケットから取り出して、ビデオを見るということもできるようになる。 これまでのiPodの最大の特徴は、これだけの小さな筐体のなかに、数千曲以上の音楽を収録でき、それによって、音楽を外に持ち出せるようにしたことです。新しいiPodでは、それがミュージックビデオやTV番組のコンテンツにまで広がるのです。音楽が好きな人にとっては、ますます手放せないものになるはずです。 --ジョブスCEOの講演では、最後に必ず「One More Thing」が出てきます。そして、それこそが最大のサプライズであるわけですが、今回の「One More Thing」は、米国におけるabcの人気TV番組の配信であり、日本のユーザーにとっては、サプライズといえるものではありませんでした。日本のユーザー向けに、近い将来、なにかサプライズは用意していますか イング TV番組が配信されるというのは、米国のユーザーにとっては大きな出来事ですし、今回の新製品を象徴するものだといえます。そうした意味では、日本で同様のサービスを行なうと発表したわけではありませんから、確かに、日本のユーザーにとっては、サプライズではなかったかもしれません。残念ながら、いま、日本のマーケットに対して発表できるものはありません。日本の放送局とどうするかといったことについても、お話できる内容はありません。そうですね、今回は大変申し訳ないのですが、まずは、このハードウェアを楽しんでいただきたい、と思っています。 --ビデオPodcast対応も今回の新iPodでは重要な要素の1つだと思いますが、その点に関してはなにか仕掛けがありますか。 イング Podcastは、iPodにとって重要なコンテンツですし、今回の新製品では、ビデオPodcastのサポートによって、さらに広がりができます。日本においても、さまざまなコミュニティと連携してビデオPodcastの世界を広げたいと考えています。むしろ、ビデオPodcastが一気に広がる土壌を作ったともいえます。また、この機能を使って、新たな提案もできるようになる。例えば、教育分野では、ビデオPodcastを使った遠隔教育にも使える。新iPodによって、移動しながらビデオで教育を受けるといったこともできる。ビデオPodcastを活用していこうという機運が高まることを期待しています。 --日本での勝算はありますか。
イング ソニーと比較される方も多いですが、私はソニーのAシリーズは見ていません。むしろ、この新iPodがあれば十分です。日本のユーザーの方々にとっても、iPodと、iTunes 6の組み合わせによって、ミュージックビデオが簡単に購入できるようになりますし、それを持ち運んで見られるようになる。東京では、多くの方が電車で通勤していますが、その移動中にも写真やビデオが見られる。日本のユーザーにとっては、ファンタスティックな製品だといえますよ。 ●iMacは完璧なデザイン --ジョブズCEOは、新iMacには、薄い、ビデオカメラ(iSight)、「Front Row」の3つの特徴があるといいました。このなかで、1つだけ選んで新製品を説明をしてくださいといったら、なにを選択しますか。 ボーガー (迷うことなく)Front Rowです。これは、今回のiMacで新たな機能として搭載したものですが、この機能を搭載したことで、新iMacが完璧な形でデビューできたと考えています。Front Rowによって、iMacで利用できるすべてのコンテンツが、誰にでもわかる簡単な操作で使えるようになる。操作性は、iPodのインターフェイスに似た形ですし、ビデオを見るときにも、音楽を聞くときも、写真を見る時も、すべてインターフェイスに一貫性があります。 Front Rowというのは、コンサート会場では、最前列を意味します。つまり、最前列で、Appleが提供するさまざまなメディアや、それによってもたらされるコンテンツの体験ができる、という想いを、このネーミングに込めているのです。 そして、Appleはハードとソフトの両方の技術を持っている。Front Rowは、ソフトの技術を生かして、エレガントで、直感的に使えるものを作った。一方、ハードの技術を生かしたものとしては、この小型リモコンの「Apple Remote」がすべてのiMacに搭載されます。これは、iMacだけでなく、iPodドックにも使うことができる。(手にとりながら)ここにメディアセンターPC(MCE)のリモコンがあるのですが、このボタンの数を比べてください。同じ操作をするのに、これだけボタンの数が違うのです。 Appleでは、さまざまな形のインターフェイスを考えました。そして、ボタンの数もさまざまなものを試作しました。Apple Remoteのボタンを6つにしたのは、Front Rowへのマウンティングを考えた場合に、6つのボタンが最適であるという回答に至ったためです。5つでもなく、7つでもなく、6つが最適の回答だったのです。 --Appleはデジタル家電に対してどう取り組むのでしょうか。その1つの回答が、今回のiMacによる新たなインターフェイスの実現、そしてiTunesによるビデオ配信だといえますか。
--かなりの自信作だといえそうですね。 ボーガー 今回の新iMacは、100点満点でいうと110点ですよ(笑)。 --10点オーバーしていますよ(笑)。 ボーガー それだけの自信作だということです。新iMacは、これまでのiMacに比べても、最高の性能を実現していますし、最高ともいえる新機能を搭載できた。もっとも多くの機能を搭載したiMacだといえるのではないでしょうか。 --このデザインにも、そろそろ飽きてきませんか(笑) ボーガー いや、完璧なパーソナルコンピュータのデザインだと思っていますよ。求められるすべての機能をこのなかに詰め込んでいます。今回は、1年前からのデザインを踏襲しましたが、飽きることはありませんよ(笑) --20インチを超えるようなディスプレイを搭載すると、どうしてもデザインは変化しますよね。
ボーガー Appleは将来のこと、憶測にはコメントしません。ただ、一言だけ申し上げるとすれば、イノベーションに対して、Appleはいつも前向きに取り組んでいく会社だということですね。
□アップルのホームページ (2005年10月13日) [Text by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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