来場者にはこれと同じビルドのインストールCD作成用ISOイメージが配布されたが、展示会場に目を移すと、やはりプリβ2がインストールされたPCが大量に置かれ、エキスパートが質問にも答えてくれるハンズオンラボに足を運ぶと解説付きで各種機能を使用可能だ。 今回のPDCの中で、1つのテーマとして掲げられている“ユーザー体験”。それをどのように演出しようとしているのかを確認してみた。
注:本記事の画像は、サムネールをクリックすると別ウィンドウで開きます ●“把握しやすさ”を重視したユーザーインターフェイス
プリβ2のユーザーインターフェイスの全体像を俯瞰してみると、“状況の把握しやすさ”が格段に向上したという印象である。それはタスクバーにマウスカーソルを重ねると、ウィンドウの内容がポップアップして見えたり、[Alt]+[Tab]によるタスク切り替え時にウィンドウのサムネイルが表示されたり、あるいはInternet Explorer 7で開いているページをタイル状に並べて表示する機能として表われている。 ゲイツ氏がデモしたIE7を、よくよく観察してみると、タブが表示されるペインの左右に新しいアイコンが配置されているのがわかる。このうちの左から2番目のアイコンをクリックするとタイル表示となるようだ。ただし、デモで使われたIE7と現在のプリβ2に入っているIE7は異なるバージョンのようだ。 ハンズオン用のPCにインストールされているプリβ2では、上記のようなアイコンは出てこない。同エリアの右にはサイドバー関連、全画面表示、ヘルプとおぼしきアイコンが並んでいるが、実際にどのように利用するのかはわからなかった。 “把握しやすさ”に関しては、既に何度も行なわれているエクスプローラにおけるファイル表示モードの連続的な変化と、内容を把握しやすい高解像度のサムネイル表示、あるいは検索インデックスを活用した仮想フォルダなどのアプローチとも通じる部分とも言える。 Windows 95の登場から10年、プロセッサの高速化、搭載メモリの増加、グラフィック表示能力の向上といったハードウェアプラットフォームの変化に対応し、それらの能力を目で見て誰もがそれを把握しやすい。そんな“目標”を感じさせる変化だ。 こうした考え方は、エクスプローラのファイル管理手法にも感じることができた。WinFSの標準搭載が見送られたWindows Vistaだが、エクスプローラ側の実装によってデータベース的な操作を行なえるようになっている。 上記に書いた仮想フォルダ(検索条件を保存しておき、それを仮想的なフォルダとして利用する機能)やスタック(よく似た、あるいは元が同じである複数のファイルをひとまとめの束として使う機能)として現れている。 スタックはアプリケーションが作成することも可能で、たとえばひとつのカメラRAWファイルから異なるパラメータで現像された複数のJPEGファイルをスタックとしてシステムに登録し、あたかもひとつのファイルのように見せるといった使い方がある。 大量のデータを処理していると、同じデータから複数のデータが派生し、仕事の効率が落ちてくるというのは良くある話だ。上級者ならば、自分でフォルダを分けるなどして細かく管理する事で生産性を落とさない工夫も行なえるが、忙しい中ではなかなか整理整頓を徹底するのは難しい。ファイル管理・運用の手法、振る舞いに関して、Windows Vistaはユーザーの悩みをある程度は解決してくれるかもしれない。 ●新しい可能性を示すサイドバー・ガジェット
基調講演で使われたIE7と、実際にプリβ2に入っているIE7が異なるバージョンであると書いたが、このほかサイドバーにも違いが見られた。 現状のサイドバーはエクスプローラの一部ではなく、別途プログラムとして起動するようになっている。これが将来的にどうなるかはわからないが、今のままの仕様で進むとサイドバーは標準のUIではなく、アクセサリの一部として同梱される形になりそうだ(実際、プログラムメニュー中のアクセサリグループにプログラムとして登録されている)。 ゲイツ氏がデモしたサイドバーは、その上に配置したガジェットと呼ばれるアプリケーションが左側にややはみ出してレイアウトされており、ガジェット自身のデザインもやや異なっている。おそらくこの部分も最新バージョンがOSとは別にインストールされていたのだろう。 ハンズオンで触れることができたPCには、スライドショー、検索、RSSリーダ、時計の4種類しかガジェットが用意されておらず、機能が少なく、単純なテクノロジデモの意味合いが強いものだった。今後、サイドバーの機能は大きく変化していくだろう。 サイドバーに配置するガジェットは、実にMacOS X 10.4のダッシュボードで使うウィジェットとよく似ているが、似ているのは見た目だけではない。異なるのはウィジェットがJavaなのに対して、ガジェットは.NETという点ぐらいだろう。
全身を.NETのインターフェイスで覆うWindows Vistaは、簡単に高機能かつグラフィカルなガジェットを簡単に作ることができるはずだ。WinFXの機能、つまりWindows Vistaが持つすべての機能は、XAMLを用いる事で本当に簡単に見栄えのするプログラムを作れてしまう。グラフィックやアニメーションの定義も簡単なため、Windows Vistaが発売されれば、エンドユーザーの手でたくさんのガジェットが登場するだろう。 ●3Dユーザーインターフェイスはまだ模索中 一方、ウィンドウを斜めに傾けて並べ、ウィンドウを選択するデモに心惹かれた読者もいるかもしれない。しかしこの機能はまだ実験的に導入された段階で、今後どのような振る舞いを行なうのが良いのかを検討しているところだという。 この機能の呼び出し方法は、現段階では[Windows]+[Space]に割り当てられており、斜め配置にしてからカーソルキーを上下させるとウィンドウの並びが次々に変化。ウィンドウをクリックするか、もう一度[Windows]+[Space]を押すと選択したウィンドウがアクティブな状態で復帰する。 実用上は大型サムネイル付きの[Alt]+[Tab]で十分賄えるため、わざわざ3D表示用に別の機能を用意する必要性は感じない。最終的に3Dグラフィックスをどのようにユーザーインターフェイスへと応用していくかは、今後、βテスターからのフィードバックを元に大きく変化していくはずだ。
このほか、実際には動作していなかった機能がいくつかある。コントロールパネル[Peer to Peer]アプレット、標準アクセサリのWindows Calendarだ。 Windows Calendarはいわゆるスケジューラソフトだが、どうやらiCalendarに準拠したXMLベースのスケジューラのようだ。実際に起動はするもののほとんどのメニュー項目はグレーアウトされたままで、どこまで使えるソフトウェアなのかはわからない。しかしグレーアウトされたメニューの中には[Publish]-[RSS]という項目が含まれていた。RSSでスケジュールをフィードするのだろうが、これによって2台のPCが持つスケジュールを同期できれば面白そうだ。
今回のPDCで配布されたバージョンからもフィードバックは入ると見られる。年内と言われるβ2のリリースに向けて、まだまだ変わっていきそうだ。 β1からの進捗は、現時点ではさほど大きくないのか、という声も聞こえてきそうだが、実際に使用してみた感覚としては、かなり前へと進んでいるという印象だ。β1の仮想フォルダやスタック操作などは、パフォーマンスも悪く実用に耐えない初期段階の実装だった。
しかし、プリβ2では“重さ”をほとんど感じない。まだβ2にも達していない段階で、ここまでサクサクと動作していれば、最終的なパフォーマンスにも問題は起きないだろう。ハンズオン用に用意されたPCはPentium 4 2.8GHz、メモリ2GBという構成のもの。あるいはメモリへの依存度が高い可能性はあるが、それは今後ゆっくりと検証してみたい。
□PDC2005のホームページ(英文) (2005年9月17日) [Text by 本田雅一]
【PC Watchホームページ】
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