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日本AMD、Intel独禁法違反に関するプレスセッションを開催
~オープンな市場、消費者に選択する自由を

米AMD 法務担当エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高総務責任者 トマス・M・マッコイ氏

9月14日開催



 日本AMD株式会社は14日、Intelに対する独占禁止法違反訴訟についてのプレスセッションを開催した。

 今回の会見では、米AMD 法務担当エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高総務責任者のトマス・M・マッコイ氏が来日。30分ほどのプレゼンテーションのあと、1時間に渡って質疑応答が実施された。

日本AMD取締役 吉沢俊介氏

 冒頭で挨拶した日本AMD取締役の吉沢俊介氏は、「昨年4月に公正取引委員会がIntelに立ち入り調査をし、今年3月にはIntelに対して独占禁止法違反による排除勧告をした。公正取引委員会が一年間に渡って調べあげた結論であり、これは非常に重い物でIntelもこれを応諾していた。これをうけて、AMDは日米同時にIntelを提訴した」と、訴訟に到る経緯を説明。

 その後、7月には欧州委員会が、イギリス、スペイン、イタリア、ドイツの各事業所を立ち入り調査、現在は韓国の公正取引委員会がIntelの韓国法人を独占禁止法違反の疑いで調査中と報じられたという。

 同氏は「Intelは日本だけでなく、グローバルな規模で競争を排除している」などと述べ、市場独占に対する懸念を表明した。

 続いてトマス・M・マッコイ氏がプレゼンテーションを行ない、現在AMD及びIntelが置かれている状況などを説明した。

 同氏は、「ちょうど一年前、Microsoftが独占禁止法違反の疑いをうけ、注目されていた。それは今、Intelに移行している」と切り出し、「従来からIT業界でMicrosoftとIntelは、高い収益性を持つ企業として認識されていたが、これまでトップを維持してきたMicrosoftに対し、2003年頃から、Intelがそれに取って代わった」と説明。2002年時点のMicrosoftのオペレーティングマージンが42%、Intelが29%だったのに対して、2004年度はMicrosoft 25%、Intel 41%に逆転していることを示した。

 「Microsoftは現在、オープンソースなどさまざまな競合製品によって脅威にさらされている。先日発表された、IntelとAppleの契約によっても同社はますます不利な状況にある。しかし、Intelの独占的立場はさらに強化されることになった」と、Intelのみがフェアな競争原理に曝されず、独占状態にいることを強調した。

 大手PCメーカーを中心としたOEM業界についても触れ「現在のようなIntelのみが収益を上げる構造は不健全であり、今後の各企業の持続性にも問題を感じる」と述べた。

MicrosoftとIntelのオペレーティングマージンの推移 PCメーカー間のオペレーティングマージン

 「AMDはビジネスに成功しつつあるのに、なぜこのタイミングで訴訟を起こしたのか、という疑問を多くの人々が感じてると思う。我々は現在、ビジネスの成功と技術のリーダーシップを持っていることを誇りに思っている。だが、技術のリーダーになるために、別に裁判所の助けはいらない」とし、現在の地位は実力で勝ち取ったものであり、Intelとの競合に勝てないから訴訟を起こした、という見方を避ける狙いもあると説明した。

 「x86系CPUを豊富なボリュームで用意できるのは世界でも2つの企業しかない。また、ITのイノベーションにはその基礎に必ずマイクロプロセッサが必要であり、各国の政策立案者もこれを理解してくれている。プライスパフォーマンスに競争原理があるということが、いかに市場に影響するかは、ディスクドライブやフラッシュメモリなどの市場を見ればわかる」などとも語り、公正取引委員会の調査が正当なものであると強調。Intelが9月1日に出した声明を牽制した。

 同氏は、プレゼンテーションの中で、Intelの独占による社会や消費者への悪影響について重ねて主張し、「今必要なのは、自由でオープンな市場であり、健全なITビジネスを展開することだ。それにより消費者が自由に製品を選択できる余地を作る必要がある」などと語った。

 最後に同氏は、「いま、この問題は世界でも非常に重要な位置にある。裁判のなかで(公正取引委員会が集めた)証拠が提出されれば、世界中の人々がそれを目にすることになる。彼らの努力は報われるだろう」と締めくくった。

・質疑応答

質疑に答えるマッコイ氏。「オープンな市場ならIntelのシェアを取り込める」と自信を見せる

 1時間に渡るQ&Aセッションでは、出席した記者達からさまざまな質問がされた。ここではそれらを抜粋してお伝えする。

【Q】Intelは公取の決定に対しては応諾しているが、Intel側が勝つ可能性もあるか。

【A】不可能と言い切ることはできない。しかし、証拠がなければ我々も訴訟は起こさないし、業界全体から支援をうけている。いかなるビジネスでも、サプライヤーの独占による被害は不健全であり、裁判の結果には楽観視をしている。

【Q】PCメーカーなどが法廷で証言する可能性はあるのか。

【A】裁判での具体的な戦略についてはいえない。ただ、今回の件についてはメーカーの生き残りがかかっている。日本のOEMメーカーはIntelがコントロールしている業界の犠牲者でもあり、我々も同情している。公正取引委員会の裁判における振る舞いは非常に重要になる。このプロセスのなかで証拠を集めることになるが、これによって、各メーカーは個別にIntelに対抗する必要はなく、Intelから報復をうける心配もない。

2002年Q2からAMDのシェアは急激に下落した

【Q】2002年Q2から日本国内のシェアが落ちているが、これはIntelが妨害したからか。また、今も妨害は続いているのか。

【A】その時点までは出荷台数ベースで26%のシェアがあり、ソニーや東芝を初めとするメーカーとともに、順調に成功を収めていた。これがIntelにリスクを与えた。そのためこの時期からIntelの妨害が始まったと判断しており、現在では10%程度のシェアに縮小してしまった。現在も妨害が続いているかどうかは、まだわからないというのが実情。それがわかるためには時間がかかると思う。

 Intelの妨害がなければ、シェアは40~60%の間で推移していたと考えている。なぜなら、Intelの独占状況がシビアでない市場では高い需要があり、30~40%という数字を出しているからだ。

【Q】Intelは9月1日の声明で、AMDの失速はAMD自身がビジネスに失敗したからだと主張しているが。

【A】AMDは現在、技術のリーダーとしての地位を得た。これはAMDの優位性によるものであり、市場が求める製品を実現できる企業だったからだ。ItaniumやPentium 4のパフォーマンスの低さをはじめ、AMD64をIntelが採用しなければならなかった経緯がそれを証明している。

 Intelは自由競争によって消費者が選択する機会を妨げており、これはIntelに責任がある。Intelが言っていることは真実に聞こえない。

【Q】日本のメジャーなPCメーカーはAthlon 64 X2をほとんど採用していない。逆にIntelのデュアルコアCPUの採用は増加している。

【A】AMDは非常に強い製品を持っている。性能だけでなくエネルギー効率でも優れており、反面、Intelは真のデュアルコアテクノロジを市場に投入できていない。オープンな市場で戦うことができれば、Intelのシェアを取り込むことができるようになる。

 また、Athlon 64 X2は、自作PC市場で非常に好調であり、こうしたエンドユーザーのデマンドは、PCメーカーの判断にも影響を与える。今後に大変期待している。

□日本AMDのホームページ
http://www.amd.com/jp-ja/
□関連記事
【9月2日】Intel、AMDの独禁法違反訴訟に対し反論
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0902/intelamd.htm
【6月30日】日本AMD、インテル提訴を受けて記者会見を開催
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0630/amd2.htm

(2005年9月14日)

[Reported by kiyomiya@impress.co.jp]

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