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日本AMD、インテル提訴を受けて記者会見を開催
6月30日発表 日本AMD株式会社は30日、東京高裁および東京地裁に、インテル株式会社に対する損害賠償訴訟を起こしたことを受け、都内で記者会見を開催した。 今回の訴訟は、27日に米国のAMD本社がIntelを独占禁止法違反で提訴したことに関連し、米国本社の意向により、日本国内での提訴に踏み切ったもの。日本円で約55億円の損害賠償を請求した。 記者会見会場で同社が公開した訴状の要旨では、インテルが行なったとする不正行為について、大きくわけて、「排除行為」と「AMDへの営業妨害行為」の2点が挙げられている。 排除行為については、Intelが東芝、ソニー、日立に対して巨額の資金を提供、各社が販売するPC製品について、AMD製CPUを採用しないようにさせ、結果的にこれら3社のPCには100%、Intel製CPUが採用されたという。 また、NECに対して巨額の資金を提供し、AMD製CPU搭載製品の割合を10%にまで低下させたほか、富士通に対しても同様の資金を提供、AMD製CPU搭載製品の生産計画を中止または変更させたとした。 AMDへの営業妨害行為としては、Intelが資金提供を条件に、各社のカタログやWebサイトからAMD搭載製品を削除させたり、プロモーション活動を妨害したなどの行為を挙げたほか、PC雑誌編集者に対しても圧力をかけ、PC雑誌に掲載が予定されていたAMD製品の記事を削除させたり、ベンチマーク記事の内容を変更させたりしたという。 AMDは、Intelがこれらの不正行為により、独占的地位を濫用して自由な市場活動を阻害していたと判断、営業不振に苦しむ国内PCベンダーは、Intelからの資金提供をうけ、言いなりにならざるをえない状況にあったとした。 これらの行為により、AMD製CPU搭載製品の国内シェアが、2002年の約22.2%から、2003年には14.5%、2004年には10.4%にまで減少し、莫大な損害を被ったという。 日本AMD取締役の吉沢俊介氏は、今回の提訴について、「市場独占自体は違法ではないが、危惧しているのは独占的な立場を利用し、自由競争を阻害すること。これは問題だ」と述べ、Intelの独占的な地位に対する危機感を表明。 同氏はx86 CPU市場におけるIntelの独占的地位と称するスライドのなかで、Intelが世界市場の約9割のシェアをもっていることを示したほか、利益率を大手PCベンダーなどと比較した資料では、Intelだけが約40%という突出した利益率を確保していることを提示。同氏が示したスライドでは、Dellがかろうじて利益率9%を維持しながら、富士通は2%、HPは1%、IBMについては-1%と、大手ベンダーでも非常に低い利益率しか確保できない現状を示した。
吉沢氏は米AMDがデラウェア州連邦高等裁判所に提出した訴状に記載されている、HP Compaqの元CEO マイケル・カペラス氏の談話も引用。それによるとカペラス氏は「AMDとIntelのどちらとも取引をしていたある時期、Intelから『AMD製品を採用するなら、マーケティングファンドを大幅に低下させる』などといわれ、まるで頭に拳銃を突きつけられているような気持ちがした」などとコメントし、これによってHP CompaqはAMD製品の採用を断念せざるを得なかったと告白しているという。 「Intelは世界規模で独占的地位を築き、それを濫用して自由な市場を阻害している。AMDは創立以来、自由競争が技術革新を生む、というスタンスを貫いてきた。AMD64が無ければ、IA-64しかなく、これは市場に受けいれられていなかった」と、AMD64の存在が64bit時代を牽引していることを指摘。「こうした自由競争によって生まれる技術革新、エンドユーザーが自由に選択できる環境こそが重要になる」とAMDの姿勢を示した。 現在のAMDの状況としては、AMD64の成功や、サーバー市場におけるOpteronの好調ぶり、デュアルコアCPUの投入や、SOI技術の実用化などを挙げ、Intelよりも技術で先行していることをアピール。「我々はIntelよりも優れた技術を持っており、テクノロジーリーダーであることを自負している」と、その技術的な優位性を強調した。 今回提起したタイミングについては、「3月の公正取引委員会による勧告は、政府がIT市場におけるIntelの独占地位を心配しているという表れだった。日本だけでなくEC委員会でも同様の調査が進んでいる。このような状況下で、自由市場を回復するのは今しかないと判断した」と、公取による勧告を応諾しながら、事実関係を認めないIntelと真っ向から対決する姿勢を示した。
同社の顧問弁護士となる柳田野村法律事務所の弁護士 柳田幸男氏は今回の訴訟の目的について、「Intelの世界的な独占に歯止めをかけるため」とし、「独占が進むことで、競争原理が妨げられ、商品選択の幅が狭まり、高い価格が維持されてしまう。Intelは市場独占によって得た独占地位と資金力を濫用し、PCメーカーに圧力をかけてきた。これらにより被害を受けるのは消費者」と、最終的には消費者の利益を守るための訴訟であると指摘。「Intelの濫用行為を白日のものとにさらすのが不可欠だ」とした。 今回の訴訟について同氏は、「IT業界の独占企業に対して日米同時に訴訟を行なうというのは、前例がない画期的なもの」などと語った。 質疑応答では、裁判の長期化に対する懸念や裁判資金に関する質問などが出たが、「最近は裁判所の手続きも効率化されており、意外と早い決着がつくかもしれない。裁判資金については明かせない」とし、「米国本社も日本AMDもこの訴訟の結果をビジネスに影響させるというプランはない。我々が元々持っている技術を評価してもらえれば、自ずと結果が出ると考えている」とした。 また、PC雑誌系出版社に対する圧力があったという訴状の要旨については、「具体的な媒体名なければ、PC雑誌編集部のすべてが圧力に屈しているというイメージができてしまうのではないか」という質問がされたが、「我々は具体的な事例を掌握しているが、今はその内容に言及できない」とされた。なお同社広報によると、該当雑誌については既に廃刊されたものであり、現行の雑誌には該当するものが無いとしている。 □日本AMDのホームページ (2005年6月30日) [Reported by kiyomiya@impress.co.jp]
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