ソニーのVAIOシリーズの秋モデルでは、従来のシリーズの後継製品だけでなく、新しい製品ラインナップも追加されている。今回は、その新ラインナップの中から、14.1型液晶を搭載した2スピンドルノートPC「VAIO type BX」を紹介したい。 これまでのVAIOシリーズは、AV機能を重視した製品が多くコンシューマを主なターゲットとしてきたが、VAIO type BXは、セキュリティ機能を強化するなど、ビジネス向け製品としての性格が強いことが特徴だ。 ●BTOでスペックを自由にカスタマイズ可能 VAIO type BXは、ショップの店頭では販売されず、提携ショップや直販サイトのソニースタイルで、仕様を選んで購入できるVAIO・OWNER・MADEモデルとして販売される(法人向けには、VAIO標準搭載ソフトウェアを省略したVAIO type BX bizモデルも用意されている)。 VAIO・OWNER・MADEモデルでは、CPUや液晶ディスプレイに始まって、メモリ容量、ビデオチップ、HDD容量、光学ドライブ、Bluetooth機能/FeliCaポートの有無、Webカメラの有無に至るまで、自由にカスタマイズが可能だ。 OSは、Windows XP Professonal SP2またはWindows XP Home Edition SP2から選べ、前者を選んだ場合、型番はVGN-BX90PS、後者の場合は、VGN-BX90Pとなる。今回はVGN-BX90PSを試用したが、試用機は量産品ではないため、量産品とは細部が異なる可能性もある。 VAIO type BXのサイズは、約317×263.7×31.8~33mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約2.5kg(光学ドライブ装着時)だ。携帯性を重視した製品ではないが、このクラスの製品としては軽量である。光学ドライブの代わりに、ウェイトセーバーを装着すれば、重量は約2.3kgまで軽減されるので、持ち歩くことも決して無理ではない。 VAIO type BXのボディは、3方の側面をΣ形状に仕上げた「Σフォルムデザイン」と呼ばれる斬新なデザインを採用している。また、天板と底面にマグネシウム合金を採用することで、軽さと堅牢性を両立させている。 CPUは、Pentium Mシリーズの中でも現時点最速のPentium M 780(2.26GHz)をはじめ、Pentium M 760(2GHz)、Pentium M 740(1.73GHz)、Celeron M 370(1.50GHz)から選択できる。今回の試用機では、一番下位のCeleron M 370が搭載されていた。 チップセットは、Intel 915PMまたはIntel 915GMで、単体ビデオチップのMOBILITY RADEON X700を選択すると、グラフィックス非統合のIntel 915PMが、単体ビデオチップを選択しないと、グラフィックス統合型のIntel 915GMが搭載されることになる。試用機では、Intel 915GMが搭載されていた(つまり、MOBILITY RADEON X700は非搭載)。 メモリは、DDR2-533(PC2-4200)が採用されている。メモリスロットは2基用意されており、容量は256MB/512MB/1GBから選べる(試用機のメモリは512MB)。なお、512MBの場合、本来は256MB SO-DIMM×2でデュアルチャネルアクセス対応になるはずだが、試用機では512MB SO-DIMM×1という構成になっていたため、デュアルチャネルアクセスはサポートされていない。そのため、後述するベンチマーク結果は、デュアルチャネルアクセス有効時に比べて、多少悪くなっていることに注意して欲しい。
●120GB HDDも選択可能 HDD容量は120GB/100GB/80GB/60GB/40GBから選べる。全てシリアルATA対応の5,400rpm HDDが採用されており、パック式になっているため、交換も容易だ。2.5インチHDDとしては現時点で最大容量の120GB HDDを選択できることも嬉しい(BTO対応製品でも、100GBまでしか選択できないことが多い)。 光学ドライブは、DVD+R DL対応のDVDスーパーマルチドライブやCD-RW/DVD-ROMコンボドライブ、DVD-ROMドライブ、ドライブ無しの4パターンからチョイスできる。光学ドライブは、マルチベイに装着されており、着脱が可能だ。重量を軽減するためのウェイトセーバーが標準で付属するほか、オプションとして80GB HDDユニットや、HDDベイアダプターも用意されている。 セキュリティを重視していることもVAIO type BXの特徴だ。パワーオン・パスワードとハードディスクパスワードの2種類のパスワードを採用していることに加え、指紋センサーとTPMセキュリティチップを搭載している。他社からは、指紋センサーやTPMセキュリティチップを搭載したノートPCも登場しているが、VAIOシリーズでは初めての搭載となる。指紋センサーの上を指でなぞるだけで、パワーオン・パスワードから、HDDパスワード、Windowsのログイン・パスワードの3種類のパスワードを一度に解除できるので、パスワード入力の手間がなくなる。 また、データ暗号化キーをTPMセキュリティチップ内に保持できるため、万一HDDが取り外され、他のPCに接続されても、暗号化したデータの読み出しは非常に困難である。VAIO type BXは、高いセキュリティを実現しているため、業務上の重要データや機密データも安心して扱うことができる。
●液晶は4種類から選択できる 液晶ディスプレイのサイズは14.1型で、解像度はSXGA+(1,400×1,050ドット)またはXGA(1,024×768ドット)から選べるほか、それぞれ、光沢タイプのクリアブラックLE液晶とノングレアタイプのノーマル液晶が用意されているので、液晶のバリエーションは全部で4種類あることになる。 表示の鮮やかさを重視するなら高輝度かつ高コントラストのクリアブラックLE液晶を、見やすさを重視するのなら低反射のノーマル液晶を選べばよい。今回の試用機では、XGAのノーマル液晶が採用されていた。 無線機能も充実しており、IEEE 802.11b/g対応無線LAN機能に加えて、Bluetooth機能(Ver2.0+EDR対応)を追加することができる。なお、Bluetooth機能の追加を選んだ場合は、さらにBluetoothヘッドセットを追加することも可能だ。無線LANやBluetooth機能をON/OFFするためのワイヤレススイッチも用意されており、航空機内や病院など、電波を出してはいけない場所で使う場合、素早く無線機能をOFFにできるので便利だ。 また、Bluetooth機能の追加を選ぶと、非接触IC「FeliCa」の読み書きが可能なFeliCaポートも搭載される(試用機ではBluetoothとFeliCaポートが追加されていた)。FeliCaを採用したSuicaカードやEdyカード、おサイフケータイなどをFeliCaポートに近づけることで、残高や利用履歴の表示が可能なほか、クレジットカードを使ってEdyのチャージを行なうことも可能だ。また、FeliCaの固有IDを利用して、スクリーンセーバーのロック解除や住所、氏名、ID、パスワードなどを管理することもできる。
●液晶ディスプレイ上部にWebカメラ「MOTION EYE」を搭載 液晶ディスプレイ上部にWebカメラ「MOTION EYE」が搭載されていることも特筆できる(MOTION EYEを搭載しないことも可能)。MOTION EYEには、31万画素CMOSセンサーが採用されており、ビデオ会議などに利用できる。以前のVAIOノートでも、同じような位置に、MOTION EYEを搭載していた製品があったが、最近では省略されており、久しぶりの復活となる。なお、以前のVAIOノートに搭載されていたMOTION EYEは、上下に回転できるようになっていたが、VAIO type BXのMOTION EYEは固定式で、アングルを変更することはできない。また、キーボード左上部には、映像を出せない状況などで、MOTION EYEの電源をOFFにできる「カメラOFF」ボタンも用意されている。
●スティックタイプとパッドタイプのポインティングデバイスを搭載 キーボードのキーピッチは約19mmで、キーストロークは約2.5mmである。キー配列も標準的で、ストロークも十分あるため、デスクトップ用キーボードとほぼ同じ感覚で快適にタイピングが可能だ。ポインティングデバイスとして、従来からのインテリジェントタッチパッドと、スティック式の「スティックポインター」の両方を装備していることも特徴だ。好みにあわせて、使いやすい方を選べるのは嬉しい。
●ドッキングステーションも用意されている USB 2.0×3、IEEE 1394(4ピン)、外部ディスプレイ、LAN、モデム、ヘッドホン出力、マイク入力など、ポート類も一通り装備している。LAN機能が、Gigabit Ethernetに対応していることも評価できる。また、底面には、オプションのドッキングステーションを装着するためのポートも用意されている。ドッキングステーションには、シリアルやパラレルといったレガシーポートのほか、マルチベイも用意されている。また、バッテリ充電機能も搭載しているので、予備バッテリを併用したいという人にも便利だ。 カードスロットとしては、Type2 PCカードスロットとメモリースティックスロット(標準サイズとDuoに対応)、SDメモリーカードスロットを装備している。これまでのVAIOシリーズでは、ひたすらメモリースティックにこだわってきたわけだが、そのこだわりを捨て、ダイレクトにSDメモリーカードを利用できるようになったことは嬉しい。
●バッテリ駆動時間は短い 標準で付属するバッテリーパック(S)は11.1V、4,000mAhで、Pentium M搭載モデルなら、最大約2時間、Celeron M搭載モデルなら最大約1.5時間の駆動が可能だ。バッテリーパック(S)搭載時のバッテリ駆動時間は、お世辞にも長いとはいえないが、オプションのバッテリーパック(L)を利用すれば、Pentium M搭載モデルで最大約4.5時間(MOBILITY RADEON X700を選択した場合は最大4時間)、Celeron M搭載モデルで約3.5時間の駆動が可能になる。ACアダプタのサイズも大きめだが、このあたりはモバイルノートPCではないので仕方ない部分もあろう。
●ビジネスユースはもちろん、パーソナルユースにも向く 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMoblieMark 2002、SYSmark 2002、Futuremarkの3DMark2001 SEおよび3DMark03、id softwareのQuake III Arenaを利用した。 MobileMark 2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark 2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEや3DMark03、Quake III Arenaは、3D描画性能を計測するベンチマークだ。MobileMark 2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、電源プロパティの設定を「常にオン」で計測した。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較対照用にLaVie RX LR700/CD、VAIO type S VGN-S70B、Qosmio E10/1KLDEWの結果も掲載してある。前述したように、今回の試用機は、CPUとしてBTOメニューの中で最も下位となるCeleron M 370を搭載しており、単体ビデオチップも搭載していない。そのため、パフォーマンスが低いように思われるかもしれないが、Celeron M搭載機としては健闘しているといえるだろう。パフォーマンスが必要なら、Pentium MやMOBILITY RADEON X700をチョイスすることをお勧めする。 【VAIO type BXのベンチマーク結果】
VAIO type BXは、ビジネスユースという、これまでのVAIOシリーズが苦手としてきた領域をターゲットにした製品だ。セキュリティチップや指紋センサーを搭載するなど、セキュリティを重視していることが特徴であり、重要なデータを扱うビジネスユースはもちろん、パーソナルユースで使う場合にも安心して使える。 店頭販売モデルが用意されていない代わりに、スペックの自由度が高いので、用途や予算に応じて最適な構成のマシンを入手できることも長所だ。質実剛健系の低価格ノートPCとは一線を画す、質感の高いボディも魅力である。ビジネスからパーソナルまで幅広い用途に対応できる製品といえるだろう。 □関連記事 (2005年9月9日) [Reported by 石井英男]
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