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IDF Fall 2005レポート
ショーン・マローニ主席副社長基調講演レポート
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Intel主席副社長兼モビリティ事業本部長 ショーン・マローニ氏 |
IDF初日の2つ目のキーノートスピーチは、Intelの主席副社長兼モビリティ事業本部長のショーン・マローニ氏が登場。モビリティ事業部は、以前の通信事業部とモバイルプロセッサ(Banias系とXscale)事業部が一緒になった事業部である。
ショーン主席副社長は、電話の発達を例にコンピュータも個人化、そしてモバイル化し大きく普及していくと予想。さらにモバイル分野は、ブロードバンド化やワイヤレス技術などが導入されつつあり、単に値段が下がっていく「新興」市場ではないとした。
これからは、携帯電話やPDA、ノートPCといったモバイルデバイスとワイヤレス技術で実現する「Ubiquitous Broadband」の時代だといい、そのためには、性能/電力比および無線技術が重要であると述べた。
まず、Intelとしては、モバイル用のデュアルプロセッサであるYonahおよびこれを使ったNapaプラットフォームが開発の最終段階に入り、多くのメーカーが幅広い製品を開発中で、その数は220機種に及ぶという。
さらに、Intelとしては、モバイルデバイスを強化するためにさまざまな企業と提携したことを発表した。
まず、バッテリ分野では、松下電池工業と提携したことを発表。同社との協力によりバッテリ容量を拡大するという。Intelは、メインストリームのノートPCで、2008年にバッテリ駆動時間8時間を実現することを目標にしている。日本では、駆動時間が7~8時間を達成するノートPCは珍しくないが、普及価格帯の製品やAV機能を重視したノートPCでは、ここまでバッテリ寿命は長くない。長時間寿命を実現している製品はなんらかの形でIntelのリファレンス通りではなく、さまざまな見直しを行なった上で、こうした性能を達成している。
リファレンス設計そのままのメインストリームのノートPCでは、ようやく数時間というのが現状で、これを8時間に引き上げるための活動としてバッテリの容量アップ、周辺機器の消費電力削減、CPUおよび周辺回路の消費電力削減を行なう。このうち、CPUやチップセットに関しては、Intel自身が行なうが、それ以外は、Intelが製造しているものではないために、こうした提携が必要となる。松下電池工業との提携はその1つ。ステージでは、2006年に登場する予定の松下のバッテリが30%の容量をアップを実現していることを公開。NAPAを使ったモバイル重視のノートPCでは、10時間以上の電池寿命が達成できることを示した。
また、無線では、Ciscoとの提携を発表。Centrinoマシンで、Ciscoの無線LANアクセスポイントの接続機能を強化する。具体的には、CiscoのVoIPクライアントを使ったときの帯域制御(QoS)の実現と、最適なアクセスポイント選択だという。現在では、信号強度ぐらいしかアクセスポイントを選択する条件がないが、最適選択では、最も帯域の空いているアクセスポイントが選ばれるようになるという。Ciscoは、一般向けネットワーク機器を販売するLinkSys社の親会社でもあり、こうした技術は、いずれは、普及価格帯の一般向け無線LAN製品にも搭載されてくることが予想できる。
具体的には、NAPAで採用される「Intel PRO/Wireless 3945ABG」がCisco互換の拡張機能に対応、前記のようなQoS、最適AP選択といった機能をソフトウェアで実現するのだと思われる。
PXA27xの後継CPUであるMONAHANSでは、クロック周波数は1GHz以上、消費電力では1/5(MPEG2再生時の測定結果)を達成。モバイル機器に高性能と長時間動作をもたらすという |
さらに、携帯電話、PDA向けの次世代Xscale MONAHANS、そしてモバイル向けグラフィックスコントローラ「STANWOOD」についても発表を行なった。MONAHANSは、1.2GHzで動作しているデモを行ない、携帯電話、PDA用のCPUも1GHzに到達したことを告げた。
また、最後に次世代のモバイルCPUであるMeromについて触れた。朝の基調講演で、オッテリーニ社長が次世代マイクロアーキテクチャとして発表したCPUの1つだが、実は、Conro、Merom、Woodcrestは、同じマイクロアーキテクチャで、それはBaniasから始まるモバイル系CPUのマイクロアーキテクチャをベースにしたもの。かつては、モバイルCPUは、デスクトップCPUの派生品だったが、今回はそれが逆転、モバイルCPUの派生品がデスクトップやサーバー用CPUになるわけだ。
マローニ副社長は、直接そうとはいわなかったが、モバイルCPUが取り組んだ性能/電力比を上げ、発熱を押さえてフォームファクターを小さくする努力が、いまや主流になり、デスクトップやサーバーにも取り込まれることになったと語った。
Meromでは、Baniasよりは長いが、Pentium 4ほどは長くないパイプラインを持ち、投機実行や予測を減らすことで省電力を達成したという。また、省電力のために「ノーマリーオフ」つまり、通常状態ではオフになるトランジスタを使う設計を採用、キャッシュ動作を強化し、全体として省電力を達成したと述べた。また、逆にメモリアクセス遅延については改善しているという。
□IDF Fall 2005のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2005/
□松下電器産業のホームページ
http://panasonic.co.jp/
□ニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn050824-3/jn050824-3.html
□関連記事
【8月8日】【海外】複雑になったIntelのモバイルCPUロードマップ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0808/kaigai201.htm
【7月13日】インテル、モバイル向けデュアルコア「Yonah」の概要を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0713/intel.htm
【2004年3月15日】【海外】Intelの次々世代CPU「Merom」の姿
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0315/kaigai074.htm
(2005年8月25日)
[Reported by 塩田紳二]