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新工場建設から見るIntelのFab変遷




●アリゾナに新工場を建設するIntel

Intelはアリゾナに新工場を建設する

 7月25日、Intelはアリゾナ州のチャンドラーに、同社6番目の300mmウェハ対応の半導体工場(前工程、Fab)を建設すると発表した。30億ドルを要するこのプロジェクトは直ちに着工され、新しい工場(Fab32と呼ばれる)は2007年下半期に45nmプロセスによる量産を開始する予定だ。

 チャンドラーにはすでにFab12とFab22の2つの工場があり、後者は200mmウェハで0.13μmプロセスのロジック製品(プロセッサ、チップセット等)を量産中だ。Fab12は0.18μmプロセスによる200mmウェハの工場だったが、現在、300mmウェハ工場への転換を進めており、間もなく(2005年後半)65nmプロセスによる量産を開始する見込みだ。

 新工場のFab32は、チャンドラーにある工場の末尾が2であること(Fab12、Fab22)から付けられたものだという。同様な例として、アイルランドはFab14、Fab24と末尾が4に、イスラエルはFab8、Fab18と末尾が8になっているが、すべてのFabがこの命名則に則っているわけではない。下の表を見れば分かるように、これまで比較的番号を空けずにきただけに、いきなり32に飛ぶとちょっと驚く(ちなみにAMDのFabは、創業から何年目に稼動したかの数字をとることになっているが、Fabの数字と稼動年が1年程度ずれることがある)。

 なおIntelの300mmウェハ/Fabだが、2001年のD1C(オレゴン州)を皮切りに、Fab11X(ニューメキシコ州)、D1D(オレゴン州)、Fab24(アイルランド)と稼動してきた。今後もFab12(アリゾナ州)、Fab24-2(アイルランド)と続く予定で、Fab32はそれに続くものとなる。素直に数えていくと、Fab32は7番目になるが、Fab24とFab24-2は1カ所とカウントするらしい。

 また、この発表と同時に、ニューメキシコ州で閉鎖されていたFabに1億500万ドルを投資し、暫定的にコンポーネントテスト施設に転換することを明らかにした。ニューメキシコ州リオランチョには、稼動中のFab11、Fab11Xのほかに、いずれも2001年に閉鎖された工場としてFab7とFab9がある。すでにFab9はFab11に統合されており、今回テスト施設へ転換されることになったのは旧Fab7ということになる。

 以上の情報を加えて、以前このコラムに掲載したIntelのFab一覧の表を更新したのが今回掲載する表だ。現存する中で最も古い工場はイスラエルのFab8で、ウェハサイズも唯一の150mm、最微細化プロセスが0.35μmと古さが際立っている。それでも、200mmウェハの工場を閉鎖してFab8を残すのだから、何か政治的な理由があるのか、それとも特殊な製品開発か何かの都合で残す必要があるのか、場所が場所だけに気になるところだ。

【表】Intel Fab(前工程)一覧
Fab名称 所在地 目的
(量産品種)
ウエハ
サイズ
最微細化
プロセス
将来計画
(具体化して
いるもの)、
その他
300mmへの
移行期
備考
RP1 Hillsboro,
Oregon *1
研究用 N/A N/A   N/A  
D1A Aloha,
Oregon
N/A N/A N/A Fab15に転換 N/A  
D1B Hillsboro,
Oregon *1
N/A N/A N/A Fab20に転換 N/A  
D1C Hillsboro,
Oregon *1
量産/開発用 300mm 90nm 2007年から45nmプロセスによるフラッシュ開発 2001年Q1(0.18ミクロン) D1D完成後、90nmプロセス300mmウェハによる量産Fabへ転換
D1D Hillsboro,
Oregon *1
開発用 300mm 65nm   2003年半ばに運用開始 300mmウェハによる65nmプロセスの開発
D2 Santa Clara,
California
開発用 200mm 90nm  2002年? フラッシュ開発
Fab4 Aloha,
Oregon
N/A N/A N/A 閉鎖 N/A 閉鎖
Fab5 Aloha,
Oregon
N/A N/A N/A Fab15に統合されFab15.5に N/A Fab15.5に改称
Fab7 Rio Rancho,
New Mexico
N/A N/A N/A 1億500万ドルかけてコンポーネントテスト施設へ転換   2001年末で閉鎖
Fab8 Jerusalem,
Israel
量産用
(フラッシュ/
ロジック)
150mm 0.35μm 稼動中のFab中、最古   MEMSの研究/開発、150mmウェハ、0.35μmプロセス
Fab9 Rio Rancho,
New Mexico
N/A N/A N/A 2001年にFab11へ統合   2001年にFab11へ統合
Fab10 Leixlip,
Ireland
N/A N/A N/A '98年にFab14へ統合   0.13ミクロンへの移行と同時にロジックからフラッシュメモリへ量産品種変更
Fab11 Rio Rancho,
New Mexico
量産用
(フラッシュ/
ロジック)
200mm 130nm クリーンルームの広さはIntelのFab中、最大   フラッシュとIAプロセッサの両方
Fab11X Rio Rancho,
New Mexico
量産用
(ロジック)
300mm 90nm   2002年Q3(0.13μm) Pentium 4を含むプロセッサ
Fab12 Chandler,
Arizona
量産用
(ロジック)
300mm 65nm 2005年後半稼動予定 2005年下半期 2004年から転換工事開始、2005年量産再開予定
Fab14 Leixlip,
Ireland
量産用
(フラッシュ/
ロジック)
200mm 0.13μm Fab10と統合   0.18μmプロセスでP4対応チップセット等
Fab15 Aloha,
Oregon
N/A N/A N/A 旧D1A。Fab5とFab15が統合運用されFab15.5に    
Fab15.5 Aloha,
Oregon
N/A N/A N/A 2002年2月閉鎖。現在300mm/65nm/ロジックへ転換中という情報も   Fab5がFab15の一部となり改称
Fab16 Fort Worth,
Texas
フラッシュ量産
(予定)
N/A N/A 優遇措置が州議会を通過しないため無期延期、2003年2月用地売却決定 N/A  
Fab17 Hudson,
Massachusetts
量産用
(ロジック)
200mm 0.13μm 旧DEC   旧DEC、0.13μm
Fab18 Lachish-
Qiryat Gat,
Israel
量産用
(フラッシュ)
200mm 90nm 2005年4Q稼動予定   当初フラッシュ用に計画後、CPU、チップセットと変遷し、90nmプロセスによるフラッシュ量産へ
Fab20 Hillsboro,
Oregon *1
量産用
(ロジック)
200mm 0.13μm 旧D1B   旧D1B
Fab22 Chandler,
Arizona
量産用
(ロジック)
200mm 0.13μm     パッケージ関連の開発
Fab23 Colorado
Springs,
Colorado
量産用
(フラッシュ/
通信)
200mm 0.13μm 旧rockwell、2000年2月買収    
Fab24/
24-2
Leixlip,
Ireland
量産用
(ロジック)
300mm 90nm 2005年末にも65nmへ移行 2003後半に0.09μサンプル 2004年6月量産稼動
Fab32 Chandler,
Arizona
量産用
(ロジック)
300mm 45nm 2007年下半期に稼動予定 N/A 2007年下半期に300mmウェハを用いた45nmプロセスによる量産を開始

*1 Ronler Acresキャンパス
00
300mmウェハ対応Fab

 この表の中でハッキリしないのがFab15.5で、2002年2月に閉鎖されたことは分かっているのだが、その後が良く分からない。閉鎖が発表された時点では、65nmプロセスを用いた300mmウェハ/Fab(ロジック)に転換する、という話だったのだが、その後のIntelの量産計画にこのFabの名前が出てこない。今回発表されたFab32が6番目の300mmウェハ/Fabになったということは、転換計画が中止された可能性もある。ちなみにIntelは2004年6月に、200mmウェハに対応した0.35~0.250μmプロセス対応の半導体製造装置を中国江蘇省のNanotechに売却しているが、タイミングから考えて閉鎖したFab15.5のものである可能性が高い。

 表全体を見渡して気づくことの1つは、300mmウェハ/Fabは、すべてロジック用(それもおそらくプロセッサ用)である、ということだ。高価な300mmウェハ/Fabは、粗利益率の高いプロセッサ優先であることが分かる。フラッシュメモリの量産工場で最も新しいのはイスラエルのFab18だが、ここは現在2005年第4四半期の稼動を目指して転換しているところ。稼動した'99年は、当初の予定(フラッシュメモリの量産)を変更してプロセッサを製造していたFab18だが、2001~2002年にチップセットの生産を行なった後、当初の目的通りフラッシュメモリの量産向上に転換されることになる。このイスラエルにも新工場建設のウワサが絶えないが、まだ発表にはいたっていない。はたして、今回の発表で破談になってしまったのか、それともこれから発表があるのか注目される。

 また、現在は90nmプロセスによるプロセッサの量産を行なっていると思われるD1Cだが、2007年からは本来の開発業務? に戻り、45nmプロセスのフラッシュメモリの開発を行なうことになっている。過去、新しい開発Fabの完成と共に、古い開発Fabは量産工場へと転換されたが、D1Cがいまだに開発Fabという扱いなのは、こうした将来計画を持つからなのだろう。

□関連記事
【7月26日】Intel、アリゾナ州に45nmプロセス向け300mmウェハ工場を建設
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0726/intel2.htm
【2004年4月22日】Intel、アリゾナのFab 12を300mmウェハに転換
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0422/intel.htm
【2003年3月10日】【元麻布】Fabから予測する今後のIntel
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0310/hot250.htm

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(2005年8月5日)

[Reported by 元麻布春男]


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