登場から2年余りが経過して、ようやくSATAも普及しようとしている。ここでは、現在入手可能な製品を用いて、SATAとパラレルATAの性能面での比較を行なってみることにした。 テストに用いたのは日立グローバスストレージテクノロジーズ(HGST)の「Deskstar T7K250」シリーズのドライブ(表1参照)。プラッタも含め同じメカ系を用いたインターフェイス違いのドライブだ。読み出し時の内部データ転送速度も843Mbit/secと、このクラスのドライブとしてはトップクラスに位置づけられる。 またSATA対応の「HDT7225525DLA380」は、「Deskstar 7K500」と並び、現時点で入手可能な数少ないデータレート3Gbpsに対応したドライブの1つ。といっても、上述した内部データ転送速度は単純計算で105MB/sec程度だから、1.5Gbps(150MB/sec)でも間に合わないわけではない。 特にSATAの場合、パラレルATAと違ってPoint-To-Point接続であり帯域を共有する必要がないため、1.5Gbpsで十分だとも考えられる。一応選んでみました、というくらいの軽い気持ちでのチョイスだと思っていて欲しい。 この2台に加えて、比較用に用意したのがSeagateの「Barracuda SATA V 120GB」だ。これは最も初期のSATA 1.0ドライブで、わざわざ引っ張り出してきたのは、この2年のディスクドライブの進歩を見る目的からである。もう1台、Maxtorの「MaXLine III」は、Native Command Queuingをサポートした1.5GbpsのSATAドライブ。エンタープライズアプリケーション用として売られており、「味付け」の違いが分かれば、との思いで加えてみた。 【表1:用いたドライブ】
●シングル利用では大差がない結果に これらのドライブを接続するホストとして選んだのは、IntelのD945GTPマザーボードをベースとした表2のようなシステム。一応OSはテストに用いるターゲットドライブとは別のSATAドライブ(Deskstar 75250 80GB)から起動し、ターゲットドライブを全量NTFSでフォーマット、何もデータを置かない状態でベンチマークテストを実施した。 【表2:用いた評価システム(デスクトップ)】
D945GTPは、Intelの945Gチップセットを用いたマザーボードで、South BridgeはRAID構成とAHCIをサポートしたICH7Rが使われている。今回はSATA、パラレルATAともにドライブを1台づつしか用意できなかったのでRAID構成のテストは実施していないが、AHCIモードとIDE互換モードの比較は行なってみた。 なおAHCIモードを利用するには、OSのインストール時にF6キーを押してフロッピーディスクからドライバを読み込む必要がある。ICH7RのSATAインターフェイスのもう1つの特徴は、3Gbpsのデータレートをサポートしていることで、とりあえずドライブ、ホストインターフェイスともの3Gbps対応ということになる。 なお、パラレルインターフェイスは、相変わらずUDMA/100のままだ。これらの道具立てで、HD Bench Ver 3.40β6のDiskテストと、PCMark 04 Ver 1.3.0のDiskテストの2つを実施してみた。
その結果をまとめたのが表2だ。順にパラレルATA、SATA(IDE互換モード)、SATA(AHCIモード)、SATA(AHCIモード+Intel Storage Manager)の結果である。Intel Storage Managerというのは、昔のIntel Application Acceleratorの後継にあたるRAID管理ソフト。AHCIモードを利用するだけなら特に必要はないハズなのだが、何か細工をしている可能性が全くないとは言えないので、アリとナシ、両方を試してみた。 【表2:テスト結果1】
ザッと結果を眺めて気づく最初のポイントは、ピークのリード/ライト性能については、4通りの構成で大差はない、ということだ。これはパラレルATAとSATAの両方のドライブが同じメカ系で、記録密度が同一であることを考えれば順当な結果だ。また、1台のみの接続であれば、まだパラレルATAインターフェイスはボトルネックになっていない、ということも言えるだろう。ただ、HD Benchで66MB/secというスコアが出ているということは、PCIバス用のホストアダプタでRAID 0を構成すると、バスボトルネックになりそうだ。 もう1つ気づくのは、AHCIモードにするとランダムリード性能が跳ね上がることだ。SATAでもIDE互換モードではこの効果はない。また、性能が上がるのはランダムリードだけで、シーケンシャルの性能やランダムライトの性能に大きな差は生じていない。 これらのことから考えて、この性能差をもたらしているのは、Native Command Queuingではないかと考えられる。Native Command Queuingにより、読み出しが最適化された結果、ランダムリードの性能が向上したのだろう(シーケンシャルリードは最適化の必要がない)。 このランダムリードの性能向上は、PCMark 04のスコアにも反映されていると考えて良い。なお、Intel Storage Managerの効果だが、若干上がっている傾向も見られなくはないが、おおむね測定誤差の範囲であり、組み込む必要がある(ドライバで顕著な効果をもたらすような「何か」を行なっている)とは思えないが、逆に組み込んだからといって、それによる副作用もないようだ。したがって、以下のテストでは基本的にF6ドライバとStorage Managerの両方を組み込んである。 ●旧世代のドライブでは顕著な性能差最新の世代のドライブの結果が分かったところで、次は古いドライブの性能をチェックしてみよう(表4)。まずBarracuda SATA Vの性能だが、2年前のドライブと現行製品の比較なのだから、ある程度見劣りするのはやむを得ないところ。実は、T7K250もBarracuda SATA Vも、内蔵するプラッタは2枚で、ヘッドは4個。つまりプラッタの記録密度はおおよそ2倍強になっている。これがテスト結果に如実に表れている。 一方MaXLine IIIの結果は、ほかと明らかに異なる。このドライブは明らかにリードよりライトの方が性能が出る。ひょっとするとRAIDアレイを構成することを前提にした味付けなのかもしれない。通常RAIDにより読み出し性能は向上するが、書き込み性能は低下する。エンタープライズアプリケーション向けというくらいだから、それを意識した味付けが行なわれていても驚くことではない。 【表4:テスト結果2】
●3種類のホストアダプタをテスト 基本的な比較ができたところで、今度はホストインターフェイスを変更してみることにした。対応チップセットがリリースされて2年といっても、世の中にはSATAインターフェイスを持たないPCの方が多い。そこでPCIバス対応のSATAホストアダプタ2種と、CardBus対応のアダプタ1種を試してみた。PCIバス対応のアダプタは、システムトークスの「SUGOI SATA」(SATA-HD1504C)と、バッファローの「IFC-ATS2P2」だ。 SATA-HD1504Cは、Silicon ImageのSiI3112Aチップを使った4ポート構成のSATAホストアダプタ。2ポート版のSATA-HD150Cも用意されている。いずれもカード上に拡張BIOSを持ち、接続されたHDDからのシステム起動もできる。特徴は、内蔵する4ポートのSATAポートのうち、2ポートを外付け用に切り替えることができることだ。ブラケットには内蔵用と同じコネクタを用いたSATAポートと、自社製の外付けケース(SATA-HD35DC)用の電源ポートが用意されており、組み合わせることでACアダプタなしでSATAドライブの外付けが可能になる。 SATA-HD35DCは、SATA対応のHDDを内蔵し、そのままSATAでPCと直結する仕様のケース。上述のように電源は内蔵しておらず、PCから供給を受ける。自社製SATAホストアダプタ以外のSATAインターフェイスと組み合わせることを考慮して、SATAインターフェイスの中継機能と電源コネクタを持つブラケットが付属しており、もしマザーボードにSATAポートがあれば、それを利用してドライブを外付けすることができる。外付けドライブといっても、ソフトウェア的な扱いは内蔵と同じだから、OSを外付けドライブから起動することも可能だ。 ただし、外付けケースといっても、eSATAのようにインターフェイスをバッファしているわけではないので、ホットプラグはご法度である。また、内蔵と扱いが同じということは、デフォルト設定では書き込みキャッシュが有効になっているので、いきなり取り外すのも、これまたご法度だ。基本的に、電源が入った状態で、着脱することはできない外付けドライブ、と考えておくべきだろう。
さて、もう1種類のPCIバス対応ホストアダプタであるバッファローの「IFC-ATS2P2」だが、こちらはVIA Technologies製のコントローラチップ(VT6421L)を用いたもの。特徴は2ポートのSATAに加え、パラレルATA(UDMA/133対応)を備えていることで、カード上のBIOSによりシステム起動もできる。価格が安い(筆者の購入価格は2,980円)のも大きな特徴で、SATAケーブル2本、パラレルATAケーブル1本が付属することを考えると、さらにお買い得感が増す。 CardBusインターフェイスは、やはりシステムトークスのSUGOI SATA CardBus(SATA-CB150)。ノートPC用のアダプタだから、おのずとHDDは外付けとなるが、残念ながら本アダプタはHDDの電源供給ができない。上記のSATA-HD35DCを組み合わせる場合、別売のACアダプタを用意する必要がある。今回はデスクトップPCから電源を供給してテストした。ホストに用いたPCは、HPのCompaq Presario R3140US。昨年筆者が米国で購入したAthlon 64 3000+ベースのノートPCである。
●SATA-HD1504Cの性能は残念ながら今ひとつ 以上、3種類のホストアダプタにSATA版のDeskstar T7K250を接続してテストした結果が表5だ。その結果だが、どうやらSATA-HD1504C(SUGOI SATA PCI)は、今回用いたマザーボードと相性が悪いようだ。他のアダプタを用いた場合に比べて、著しく性能が悪い。 【表5:テスト結果3】
最初は初期不良かと思い、急遽2ポート版(SATA-HD150C)も購入してテストしてみたが、結果はほぼ同じだった。それではということで、MaXLine IIIを接続してみたが、得られるスコアはほぼ同じ傾向で、ドライブの差が出ない。言い換えればホストアダプタが問題の要因となっている可能性が高いのだが、原因を特定することはできなかった。「相性」と書いたのはそういう意味だ。 一方、IFC-ATS2P2とSATA-CB150は、ほぼ予想していた通りの性能が出た。いずれのホストアダプタもNative Command Queuingをサポートしていないため、ランダムリードについてはICH7RのAHCIモードに負けるが、そのほかではほぼ同等の性能である。 CardBusでこれだけ性能が出ているとなると、電源の問題、ホットプラグの問題はあるにせよ、ノートPC用の外付けHDDとして有望なオプションにも思える(もちろん待てるのであればeSATA準拠の製品を待った方が良いに決まっているのだが)。 ではUSB 2.0の外付けに対してどれくらい性能で上回っているのか、それを確かめるために、市販のUSB 2.0対応外付けケースにパラレルATA版のDeskstar T7K250を入れてテストしてみた。用いた外付けケースはコレガの「Connect Drive 3.5」である。 さらについでとばかり、パラレルATAのドライブをSATAに変換するアダプタのテストも行なってみた。これまたシステムトークスの「SUGOI ADAPTER」(SATA-TR150APS)である。ジャンパ設定によりパラレルATAデバイスをSATAに接続する(デフォルト)だけでなく、マザーボード上のパラレルATAインターフェイスをSATAに変換することもできることになっているが、コネクタ周りを固める熱収縮チューブを切り取らない限り、ジャンパスイッチにアクセスすることができない点は改善する必要があるだろう。
これらの結果が表6だが、意外とUSB 2.0の外付けケースも健闘している印象だ。が、SATA直結に比べて見劣りするのも事実で、悩むところ。ノートPCに重要なデータがあり、ひんぱんにバックアップするのであれば、SATA直結にしたくなるかもしれない。 【表6:テスト結果4】
また変換アダプタだが、スコアを見る限り、アダプタの介在は感じられない。Native Command Queuingをサポートしていないだけでなく、原理的にいって将来もサポートできない(Native Command Queuingをサポートできるのは、HDD上のコントローラだけであり、だからこその「Native」)であろうという制約はあるが、悪くない結果だ。複数の記録型DVDドライブを搭載するなどして、マザーボードのパラレルATAインターフェイスが不足した場合、手持ちのパラレルATAドライブをSATAに逃がす、といった目的には十分使えそうだ。
□関連記事 (2005年7月13日) [Reported by 元麻布春男]
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