「BTX」は、Intelが中心となって推進している次世代フォームファクターである。現在主流のATXに比べて、ケース内のエアフローの確保などの点で優れており、以前ATからATXにフォームファクターが移行していったように、いずれはBTXが主流になっていくものと予想される。 まだ国内メーカーでBTXを採用している製品は少ないが、デルは、6月に、BTXフォームファクターを採用したコンシューマ向けPC「Dimension 5100C」および「Dimension 9100」を発表した。そこで、今回はスリムデスクトップPCである「Dimension 5100C」をレビューすることにしたい。 ●10リットル台のコンパクトなボディを実現 Dimension 5100C(以下5100C)は、SFF(Small Form Factor)PCと呼ばれるジャンルに分類できる製品で、スリムでコンパクトな筐体を採用していることが特徴だ。ボディの横幅はわずか94mmほどで机の上などに置く場合でも、大きなスペースを占有しないことが魅力。容積は10リットル台と、かなりコンパクトになっている。 5100Cの筐体は新しく設計されたもので、曲面を活かしたフロントパネルのデザインはもなかなかスタイリッシュだ。ボディカラーは、ホワイトとシルバーを基調としており、リビングルームなどにも違和感なく溶け込める。フロントパネルの上部には、USB 2.0×2やIEEE 1394などのフロントI/Oポートとスリム光学ドライブがあるが、普段はカバーパネルで覆われている。カバーパネルを開くボタンを押すと、パネルがゆっくり上部に移動して、90度回転して本体上部に張り付くようになっているのだが、このギミックもなかなかユニークだ。 BTXケースでは、ケース前面にファンがあり、そこから空気を取り入れる設計になっているものが多い。しかし、5100Cの場合、ケース前面のファンが、フロントパネルでカバーされており、サイドにあけられた穴から空気を取り入れる構造になっている。そのため、ファンの空気取り入れ穴が目立たず、デザイン的にもすっきりしている。
●ドライバー不要で、メンテナンス性も優秀 5100Cは、メンテナンス性が高いことも特徴だ。筐体上部のスライドレバーを引くだけで、ドライバーなどの工具を使わずに、サイドパネルを外すことができるほか(セキュリティを確保するために、スライドレバーをロックすることも可能)、拡張カードやHDD、光学ドライブなども、全てドライバーを使わずに着脱が可能な設計になっているのは嬉しい。
●EM64TをサポートしたPentium 4を搭載 5100Cは、BTOによって柔軟なパーツ構成を取ることができる。CPUは、Pentium 4 521/531/541/551の4モデルから選択可能だ。プロセッサナンバーの末尾に1がついているのは、64bit拡張である「EM64T」をサポートしていることを示す。 5100Cは、コンシューマ向けPCであり、プリインストールOSとして64bit版Windowsである「Windows XP Professional x64 Edition」を選択することはできないが、CPU自体は対応しており、将来性についても心配はない。もちろん、セキュリティを高めるXD bit(eXecute Disable bit)機能もサポートしている。なお、今回の試用機では、選択可能な範囲では最上位のPentium 4 551(3.40GHz)が搭載されている。 チップセットは、グラフィックス統合型のIntel 945Gが採用されている。拡張スロットは、PCI Express x16スロットが1本と、PCI Express x1スロットが1本の合計2スロット用意されている。BTXフォームファクターでは、picoBTX/microBTX/BTXの3種類の形状が規定されており、それぞれスロットの数は最大1本、最大4本、最大7本となる。 ただし、Intelでは、OEMベンダーなどの要望に応えて、拡張スロットを2本装備したnanoBTXと呼ばれるフォームファクター(picoBTXとmicroBTXの中間のサイズ)を7月をめどに追加する予定だ。5100Cに搭載されているマザーボードは、このnanoBTXを先取りしたもののようだ。 メモリスロットは4本搭載されており、最大4GBまでのメモリ(PC2-3200)を装着可能である(試用機のメモリは2GB)。電源ユニットの容量は275Wだが、SFF PCということもあり、HDDや光学ドライブを複数台内蔵することはできないので、事実上十分であろう。 HDD容量は、80GB/160GB/250GB/400GBから選択できる(試用機は250GB)。光学ドライブは、スリムタイプのみ内蔵可能で、CD-ROMドライブ、CD-R/RW/DVD-ROMコンボドライブ、DVD±R/RWドライブ(DVD+R DL対応)から選べる。試用機では、NEC製のDVD±R/RWドライブ「ND-6500A」が採用されていた。DVD±Rメディアへの最大記録速度は8倍速である。 また、3.5インチベイには、FDDまたは9in1メディアリーダーの装着が可能である。9in1メディアリーダーは、4つのスロットを備え、メモリースティック/メモリースティックPro/xD-ピクチャーカード/SDメモリーカード/MMC/CFカード/Microdriveなど、現在使われているほとんどのメモリカードに対応している。 BTXでは、ケース前面ファンからのエアフローで、CPUやチップセット、ビデオカードなどを冷やす構造になっている。5100CのCPUクーラーはかなり大型で、CPUとの接触面には熱伝導率の高い銅が使われている。ヒートパイプも使われており、冷却性能は高そうだ。前面ファンの直径は80mmである。
●PCI Express x1対応のTVチューナ付きキャプチャカードが用意されている 5100Cは、BTOによって、ビデオカードやTVチューナ付きキャプチャカードの追加が可能だ。今回の試用機には、ビデオカードとTVチューナ付きキャプチャカードの両方が装着されていた。 用意されているビデオカードは、ATI TechnologiesのRADEON X600 SE搭載ビデオカード(ビデオメモリ128MB)である。RADEON X600 SEは、PCI Expressネイティブ対応のメインストリームクラスのGPUだが、上位のRADEON X600 PROと違って、ビデオメモリへのアクセス幅が半分の64bitとなっている。 出力端子としては、DVI端子とTV出力端子(S端子)を装備している。ハイエンドGPUほどの3D描画性能はないにしても、Intel 945G内蔵グラフィックス機能に比べれば、はるかに描画性能は高い。最新ゲームをプレイしたいというのなら、RADEON X600 SE搭載ビデオカードを選ぶことをお勧めする。 BTOで選択可能なTVチューナ付きキャプチャカードは、ATI Technologiesの「ATI TV Wonder Elite」であるが、一般的なPCI対応製品ではなく、PCI Express x1に対応していることが特徴だ。 今年5月に開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2005では、PCI Express x1対応のTVチューナ付きキャプチャカードを展示しているメーカーがいくつかあったが、まだ秋葉原などの店頭で、PCI Express x1対応のTVチューナ付きキャプチャカードを見かけることはない。PCI Express x1対応になったからといって、キャプチャカード自体の画質や性能が変わるわけではないが、いち早く先進的なパーツを採用していることは評価できる。 ATI TV Wonder Eliteでは、ビデオプロセッサとして、ATI Technologiesの「THEATER 550 PRO」が採用されている。THEATER 550 PROは、ハードウェアMPEG-2エンコーダやノイズリダクション、3次元フィルタなどを搭載しており、PCIとPCI Express x1の両方に対応している。ATI TV Wonder Eliteは、Windows XP Media Center Editionに対応しており、ATI TV Wonder Eliteの追加を選ぶと、OSもWindows XP MCE 2005を選択することになる。また、ATI TV Wonder Eliteには、Windows XP MCE対応リモコンも付属する。
●コストパフォーマンスと使い勝手のよさも魅力 参考のために、ベンチマークテスト結果をいくつか掲載する。10リットルクラスのSFF PCとしては、十分な性能を実現しているといえるだろう。機材の主な仕様は、Pentium 4 551/メモリ2GB/HDD 250GB/RADEON X600 SE/Windows XP MCE2005。
5100Cは、コンパクトかつスタイリッシュな筐体と高い機能が魅力だ。使わないときには、フロントI/Oポートを隠せるボディも好印象だ。BTOによって、柔軟な構成を選べ、コストパフォーマンスも高い。ビデオカードとTVチューナ付きキャプチャカードを追加すれば、ゲームもこなせる立派なAVパソコンとなる。リビングなどに置いて、家族みんなで使うPCとしてもお勧めできる。 □関連記事 (2005年6月27日) [Reported by 石井英男]
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