元麻布春男の週刊PCホットライン

標準化が遅れるUWBとサポート体制が広がるBluetooth




●内部から外部へと変遷するバストレンド

 初代IBM/PC以来、PCは伝統的に内部の拡張スロットを利用してI/O機能を拡張してきた。PCの進化に合わせて、拡張スロットをサポートするバス技術も進化してきた。その最新版であるPCI Expressが導入されたのが、2004年6月にリリースされたIntel 915/925チップセットからだ。

 すでに1年近くが経過したチップセットだけに、使っている人も少なくないのではないかと思うが、これらのチップセットベースのシステムで、PCI Expressの拡張カードを実際に利用している人、それもグラフィックスカード以外となると、これはかなり少ないのではないだろうか。

 PCI Expressの拡張カードがあまり出回らない理由は、さまざまなことが考えられる。大半のI/Oが1世代前のPCIバスの帯域で事足りること、PCI Expressが比較的新しい技術だけに開発に時間を要すること、登場して間もないだけにインストールベース(潜在的市場規模)がまだ小さいこと、そして何よりチップセットに統合される機能が増えたため、わざわざコストのかかる拡張カードの形でI/Oを実装する必要がなくなってしまったことなどだ。

 だが、ひょっとするとこれよりも大きな理由は、外部増設というオプションの有効性が高まったことかもしれない。以前のPCでは、PCの外部にI/O機器を増設しようとすると、高価で取り扱いの面倒(太いケーブル、ターミネータやIDの設定など)なSCSIか、極めて帯域の限られたシリアルポートやパラレルポートを利用するしかなかった。しかし、USBやIEEE 1394のようなシリアルバス技術の登場は、世の中を大きく変えた。PCの外部にそれなりの帯域を必要とする周辺機器を手軽に(細いケーブル、Plug & Play)取り付けることが可能になったのである。

 特に2002年春のIntel 845G/Eチップセット以降でサポートされるようになったUSB 2.0は、「タダで使えるUSB」の帯域問題を解決。大げさな言い方をすればありとあらゆる周辺機器がUSB対応となった。以前ならPCの筐体を開いて拡張カードを挿さなければならなかったアプリケーションが、今ではケーブルポンで利用できる。PCの拡張は内部から外部、というのが今の流れのようだ。それを突き詰めていくと、Mac miniのような形になるのかもしれない。今年のIDFで、Intelも同じような省スペースタイプのコンセプトPCを展示していたことは記憶に新しい。

●外部I/Oの無線化

 このようにPCのI/O技術にはトレンドがあるが、次の大きなトレンドと考えられているのがワイヤレス化だ。IEEE 802.11x規格の登場によるLANの無線化で、家庭内LANの普及率が大幅に向上したように、周辺機器接続が無線化することもPCの利用に大きな変化を与えることだろう。

 キーボードやマウスなど、無線技術を用いた周辺機器は従来からあったが、得られる帯域や技術の標準化がなされなかった関係で汎用性に乏しく、PCの世界全体を巻き込むようなブームになることはなかった。だが、まもなく利用可能になる無線技術は、帯域と標準化の問題をクリア、大きく普及する可能性を秘めている。

 中でも得られる帯域という点で、ケーブルに遜色ないのがUWB(Ultra Wide Band)だ。3m以内ならUSB 2.0 High-Speedと同じ480Mbps、10m離れても100Mbpsを超える帯域が得られるUWBは、最も期待されている無線技術の1つだ。Microsoftも標準化団体の1つ(WiMedia-MBOA)に参加しており、積極的に取り組んでいる。

 となると期待してしまうのがMicrosoft製OSでの標準サポート、特に2006年のクリスマスシーズンに登場するLonghornでのサポートだ。だが、どうやらそれは難しそうだ。その最大の要因はMicrosoft自身というより、UWBの側にある。

 UWBの標準化は現在IEEEで進められているが、今のところ標準化に必要な75%以上の賛成を獲得した技術仕様がなく、IntelやTIを中心としたWiMedia-MBOAとMotorola/Freescaleを中核とするDS-UWB(Direct Sequence UWB)の2つの陣営に分裂している。

 両陣営は、IEEEでの標準化を待たず、製品をリリースすることで既成事実と市場シェアを積み上げるつもりのようだが、現時点で製品リリースが可能なのはFCCが認可した米国のみ。わが国も含め米国外では法的認可を得られていないのが実情だ。特にFCCの認可が遅れたWiMedia-MBOA陣営は、なんとか今年前半までにスペック1.0のリリースと、年内の製品発売を目指しているものの、このような状況では、Microsoftもいつまでにサポートしますと言えなくても無理はない。

 今回のWinHECで明らかになったMicrosoftのロードマップでは、今年第3四半期にWUSB(UWBの上にUSBプロトコルをマップしたもの)対応のプロトタイプドライバをリリースしたいとしているが、「Longhornでサポートする」という表現は見られなかった。

 Longhornのリリーススケジュールから考えて、おそらくその仕様は年内には固定しなければならない。現時点で製品レベルのシリコンがないことを考えると、Longhornのリリースに間に合わせるのは事実上不可能だと思われる。Longhorn SP1で提供できれば、というのがベストケースシナリオではないだろうか。

Microsoftが想定する2005年と2006年のUWB関連のロードマップ。電波という規制対象が相手だけに予定通り進行するか、海外での展開がどうなるかは予断を許さない

●Microsoftによるサポートが広がるBluetooth

 このように期待が大きい一方でまだまだ流動的なUWBに対し、製品化で一歩も二歩も先を行っているのがBluetoothだ。早くから普及したヨーロッパに対し、米国や日本ではいまひとつパッとしない印象が強いが、道交法の改正で運転中の携帯電話の操作が禁じられたことなどから、ハンズフリーをサポートしたBluetooth対応ヘッドセットへの注目が集まるなど、徐々に状況が変わりつつある。

 現在主流となっているBluetooth 1.xは、帯域が1MbpsとUWBとは比べ物にならないほど狭い。が、その分低消費電力であり、携帯電話をはじめとするポータブル機器に容易に統合できる。モバイル利用についてほとんど語られることがないUWBとは対象的だ。また帯域が狭いといっても、すでに東芝やDellから帯域を2~3倍に拡大した最新のBluetooth 2.0 + EDRに対応した製品が登場しており、ちょっとした用途ならカバー可能になりつつある。

 Bluetoothのサポートが標準的に提供されるようになったのは、Windows XPのSP2からのこと。それまではBluetoothのドライバ(プロトコルスタック)は、周辺機器(PC用のBluetoothアダプタ等)に付属するものだった。最近リリースされたx64版でもWindows XPに関しては32bit版のWindows XP SP2と同等のもの(同等のプロトコルスタック、同じプロファイル)が標準搭載される。

 Windows XP SP2におけるBluetoothサポートでの大きな問題は、音声やオーディオのサポートを行なうプロファイル(Headset Profile、Handsfree Profile、A2DP等)が欠如していること、Microsoft製のプロトコルスタックを利用して音声やオーディオのサポートを行なうプロファイルをサードパーティが作成するためのインターフェイスが公開されていなかったことだ。

 このため、音声やオーディオをサポートしたBluetoothデバイスを発売するサードパーティは、プロトコルスタックを自前で用意する必要があった。つまり、音声やオーディオを使う場合、プロファイルを追加するのではなく、プロトコルスタック丸ごとサードパーティ製を利用する必要がある(それもあって、SP2のBluetoothプロトコルスタックは、すでにサードパーティ製スタックが存在する場合はインストールされないようになっている)。

 LonghornでのBluetoothサポートは、これらを修正したものとなる。残念ながらMicrosoft自身の手による音声/オーディオ関連プロファイルの提供は行なわれないが、Microsoft製のプロトコルスタック上に、サードパーティが音声やオーディオ関連のプロファイルを追加することが可能なよう、L2cap(Logical Link Control and Adaption layer protocol)のインターフェイスがDDIから利用可能になり、新たに音声通信に使われるSCO(Synchronous Connection Oriented link)が追加される。

 さらにBluetooth 2.0 + EDRのサポートも行われる。現時点でもサードパーティ製のプロトコルスタックを利用することで、音声やオーディオを利用したBluetooth機器は使用できたし、Bluetooth 2.0 + EDRにも対応可能だったが、OSの標準コンポーネントを利用する範囲が広がることで、相互動作検証が容易になり、さらにBluetooth機器の普及に弾みがつくのではないかと期待される。

Bluetoothに関して32bit版のSP2と同等のサポートが行なうx64版Windows XP。ただし、Windows Server 2003ではBluetoothのサポートはない Longhornのプロトコルスタック。音声/オーディオ関連のアプリケーションをサポートするための機能追加が目立つ


□関連記事
【4月22日】【元麻布】各種Bluetooth対応機器導入記
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0422/hot366.htm
【2004年12月6日】【元麻布】FreescaleがDS-UWBのデモを公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1206/hot349.htm
【2004年5月10日】【塩田】コミュニケーションを統合するLonghorn
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0510/winhec02.htm

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(2005年4月28日)

[Reported by 元麻布春男]


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