山田祥平のRe:config.sys

Intel inside Kitty




 パソコンは、ハイテクノロジーに支えられた高付加価値工業製品である一方で、パーツを集めてくれば、誰にでも比較的簡単にオリジナルのマシンを組み立てることができる希有な存在だ。親しみが持てるかどうかは別にして、その気になれば、等身大のキティ型パソコンだって作れそうだ。

●プラットフォームは出会いの場

 東京・台場で開催されたIntel Developer Forum Japan 2005の基調講演会場に、ハローキティがいた。Intelご自慢の数々のコンセプトモデルに混じって並べられていたが、すでに実際に売られている製品だ。これは、ハローキティ30周年を記念して作られた製品で、コミュニケーションロボットとして税込み45万円の価格がついている。ベンダーのビジネスデザイン研究所のサイトで確認しても、その仕様として内蔵されているプロセッサの詳細は記載されていないが、実は、Pentium Mが搭載されているそうだ。

 基調講演に先立ち、挨拶にたった同社日本法人共同社長、吉田和正氏は、Intelは、単なる半導体メーカーではなく、プラットフォームを提唱する企業だとし、プラットフォームは出会いの場であると述べた。その出会いの場に、新しいアイディアやテクノロジーが集まってくるためには、そこがオープンな場でなければならないことを強調し、それをきちんと守っているのがIntelのビジネスモデルだとのことだ。

 ハローキティロボットにしても、パソコンが安くなっている今、45万円という価格はちょっと高い気がするけれど、これがプロプライアテリなアーキテクチャで作られたものであるとすれば、一桁違ってくるんじゃないだろうか。吉田氏のいうように、オープンなプラットフォームであるからこそ、自由な発想をカタチにすることができる。

●自作の醍醐味

 これは、秋葉原でケースやマザーボードを購入し、HDDや光ディスクドライブ、ビデオカード、そして、メモリやプロセッサを選び、自分で自分仕様のパソコンを組み立てるのと何も変わらない。それらのパーツすべてが事実上の標準に則った汎用品であるからこそ、それができる。

 今、パソコンを手に入れるためには、いくつかの方法がある。もっともカンタンなのは量販店やウェブサイトなどを通してメーカー製のパソコンを購入することだ。ダイレクト販売ならBTOで、比較的仕様も自由になる。

 それで満足できない場合は、すべてのパーツを自前で揃え、自分でオリジナルのパソコンを組み上げる。過去に使っていたパーツを流用したりできる場合は、その分のコストを抑えることもできるし、使えるものは使い続けるという点で地球にも優しい。

 でも、ゼロから作るとすれば、同スペックのメーカー製パソコンより高くついてしまうだろう。その余分なコストと、製作に費やす時間を覚悟してでも、パソコンを自作するのだから、これは、かなり贅沢な行為だといえる。かつては、メーカー製のパソコンは高価だった。だから、自分でパーツを集めれば、かなり安くパソコンを手に入れることができた。でも、今はそんな時代じゃない。

 ホビーに関してコストや時間を云々しても意味がないのだが、自分で作ったからこそ思い入れがあるといったレベルではなく、汎用パーツを使うからこそ、似通った仕様のメーカー製パソコンとまったく同等、あるいはそれ以上のパフォーマンスが得られるという点では、日曜大工などとはまったく違う醍醐味があるにちがいない。

 ただ、これも、供給されている汎用パーツがプロセッサやメモリ、チップセットなどの半導体だけで、それを自作のパターンをプリントした基板に、丹念に半田付けしていかなければならないようなものであれば、自作のハードルは一気に高くなる。オーディオ趣味におけるアンプやスピーカーなどはそんな感じだ。

●コモディティの調達

 土地だけ買って、自分で家を建てるという人は、よほど酔狂な人でない限りまずいないし、やる気はあっても無理な場合が多い。クルマ好きも完成品のチューンナップから始める。ファッションも、まず既製品から選ばれる。多少趣味的なものでもこうなのだ。世にあふれる実用品と呼ばれるものは、そのほとんどにおいて、自作などという行為は想定されていないし、自作しても、大きなメリットは得られないのが実情だ。それがコモディティである。

 パソコンというプラットフォームは、いったいいつまで、このすばらしき自作文化の存在を許し続けてくれるのか。先のことはわからないけれど、汎用機としてのパソコンから、ユーザーの意志で拡張していく醍醐味を奪ってしまうと、ひどくつまらないものになってしまうようにも思う。だからこそ、自作すらできて、そのことに価値がきちんとあるうちは、パソコンがコモディティになってしまうようなことはなかろう。標準化されたオープンなプラットフォーム。ここだけは将来にわたって守り続けてほしいものだ。それが粋というものだ。

□IDF Japan 2005レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/link/idfj.htm
□関連記事
【2004年7月12日】BDL、キティとお喋りができる「ハローキティロボ」を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0712/bdl.htm

バックナンバー

(2005年4月8日)

[Reported by 山田祥平]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.