多和田新也のニューアイテム診断室

NVIDIA初のPentium 4向けチップセット
「nForce4 SLI Intel Edition」




 すでに主なスペックが公表されていたNVIDIAのPentium 4向けチップセット「nForce4 SLI Intel Edition」が、4月5日、ようやく正式に発表された。早速ベンチマークテストを行ない、そのパフォーマンスを検証したい。

●Intel 925XEの一歩先を行く機能を搭載

 NVIDIAのnForce4 SLI Intel Editionのスペックについては、すでに笠原氏によるIDFCeBIT 2005の各レポートなどが掲載されており、詳しくはそちらを参照していただくとして、ここでは製品概要のみを紹介しておきたい。

nForce4 SLI Intel Edition

 nForce4 SLI Intel Editionは、Athlon 64向けにリリースされているnForce4 SLIの機能を盛り込んだPentium 4向けチップセットといえる存在だ。しかし、Athlon 64とは異なり、Pentium 4ではチップセット側にメモリコントローラを実装する必要がある。そうしたアーキテクチャの違いもあって、Athlon 64向けは1チップで提供されていたものが、Pentium 4向けでは2チップとなっている。

 まずノースブリッジ側のスペックに目を向けてみると、1,066/800MHzのFSBに対応しており、Intel 925XEが直接の対抗製品となるのは明らかである。メモリはDDR2のみに対応。DDR2-533に加え、DDR2-667もサポートしている点がIntel 925XEにはない部分である。もちろんデュアルチャネルメモリインターフェイスに対応するのに加え、Intel 875Pで搭載されていた「PAT(Performance Acceleration Technology)」に似たメモリレイテンシを削減する技術が盛り込まれているのもアピールされている。

 チップセット名からも分かるとおり、本チップセットはNVIDIA SLIもサポートする。SLI対応マザーボードでは2つのPCI Express x16スロットは、x8で内部接続される。また、Intel 925XEではPCI Express x1×4レーンをICH側に実装するが、nForce4ではノースブリッジ側に実装する。

 サウスブリッジには「MCP04」と呼ばれるチップが使われている。主なスペックは10ポートのUSB2.0、「ActiveArmor」と呼ばれるハードウェアセキュリティエンジンも実装されたGigabit Ethernet、7.1chのHD(High Definition) AudioなどAthlon 64向けnForce4 SLIに近い。

 ただし、ストレージ周りは強化されている。Athlon 64向けではnForce4 Ultra/SLIにおいて3Gbps転送のシリアルATA IIとRAID0/1をサポートしていた。Pentium 4向けでは、これらに加えてRAID5もサポートされた。また「MediaShield」と呼ばれるソフトウェアが提供され、トラブルが発生したドライブの特定などが行える。シリアルATA接続のHDDはホットスワップにも対応しており、RAID5サポートも含めて障害対策機能が備わっている点も1つのポイントといえるわけだ。

nForce4 SLI Intel Editionのブロックダイヤグラム

●パフォーマンス測定

 それでは、実際にnForce4 SLI Intel Editionのパフォーマンスを見てみたい。今回、マザーボードにはNVIDIAのリファレンス品を使用した(写真1)。

 PCI Express x16スロットを2基備えており、その間にはAthlon 64向けnForce4 SLI採用マザーでも見られたコンフィグレーションカードが実装されている(写真2)。また、詳しい用途は不明だが、おそらくはPCI Expressスロットへの電力供給を安定させるためと思われるペリフェラル用電源コネクタを装備している(写真3)。

 メモリはCORSAIRのDDR2-667メモリを使用した(写真4)。今回のテストでは比較対象として、Intel 925XE環境でもこのモジュールを使ってテストしているが、当然ながらこちらはDDR2-533動作となる。このほかの環境については表に記す。

【写真1】nForce4 SLI Intel Editionのリファレンスボード 【写真2】各2基のPCI Express x16スロット、x1スロットを装備。x16スロットの間にはSLI/通常動作を切り替えるコンフィグレーションカードが取り付けられている
【写真3】24ピンのメイン電源コネクタ、ATX12Vコネクタに加えて、マザーボードの下部にも電源コネクタを装備している 【写真4】DDR2-667メモリモジュール。CORSAIR製の「CM2X512-5400C4PRO」で、レイテンシの設定は4-4-4-12となっている

【表】テスト環境
チップセット nForce4 SLI Intel Edition Intel 925XE
マザーボード NVIDIAリファレンスボード Intel D925XECV2
CPU Pentium 4 Extreme Edition 3.73GHz
メモリ PC5400 DDR2 SDRAM 512MB×2 PC5400 DDR SDRAM 512MB×2(PC4300動作)
ビデオカード NVIDIA GeForce 6800GT(256MB/PCI Express x16)
ビデオドライバ ForceWare 71.84
HDD WesternDigital WD Raptor(WD740GD/74.3GB)
OS Windows XP Professional(Service Pack 2/DirectX 9.0c)

 それでは順に結果を見ていきたい。まずはCPU性能を見る、Sandra 2005 SR1のCPUに関するベンチマークテストである(グラフ1)。結果はチップセット間による性能差がほとんどない。この傾向はPCMark04のCPU Testでも同じだ(グラフ2)。DivXエンコードでは3.7fpsと無視できない差がついているが、ほかは誤差と思って差し支えない程度の差である。ことCPUについては、どちらも同程度に性能を引き出せているといってよさそうだ。

【グラフ1】Sandra 2005 SR1(CPU Arithmetic/Multi-Media Benchmark) 【グラフ2】PCMark04(CPU Test)

 続いてメモリの性能を見るために実施したSandra 2005 SR1 Cache&Memory Benchmarkの結果を見てみたい。グラフ3に全体の傾向、グラフ4に一部テストの抜粋を掲載した。キャッシュのヒット範囲となる1MBまでのテストではグラフ3の線もほぼ重なっている。

 ただ、テストに使ったPentium 4 Extreme Edition 3.73GHzはL2キャッシュを2MB搭載している。Sandra 2005 SR1のテストでは、このギリギリのラインをテストすることができないため、とりあえず両マザーボードとも1MBの範囲まではキャッシュ性能を同程度に引き出している、ということは分かる。BIOSのチューニングで差が出るのは、キャッシュの容量ギリギリのラインでの性能の引き出し具合であることが多いのだが、現在のSandraではこのテストが用意されていないのが残念だ。

 メインメモリのアクセスではグラフ3でも分かるほどの大きな差がついている。グラフ4に記した256MBの転送テスト結果がメインメモリへのアクセス速度となるが、約1.3GB/secの差がつき、nForce4 SLI Intel Editionの性能は約4.3GB/secとなっている。

 ちなみに、今回使用したDDR2-667メモリはDD2-667/533使用時ともにCL=4の設定。2月に本連載で取り上げたこちらの記事は、CL=3のDDR2-533メモリを使っているのだが、こちらにおけるIntel 925XEの性能は約3.5GB/secである。これと比べてもnForce4 SLI Intel Editionが勝っているわけで、DDR2-667の効果の高さを感じさせる結果である。

【グラフ3】Sandra 2005 SR1(Cache & Memory Benchmark) 【グラフ4】Sandra 2005 SR1(Cache & Memory Benchmark)

 それでは、この結果を踏まえて実際のアプリケーションを使ったベンチマークの結果を見てみたい。使用したソフトは「SYSmark2004」(グラフ5)、「Winstone2004」(グラフ6)、「TMPGEnc 3.0 XPress」(グラフ7)。結果はnForce4 SLI Intel Editionの圧勝で、SYSmark2004のCommunicationテストを除いてはすべてIntel 925XEを上回るスコアを見せた。

 ちなみに、Sandra 2005 SR1のFilesystem BenchmarkによるHDD性能は、nForce4 SLI Intel Editionが57MB/sec、Intel 925XEが58MB/secとなっており、大きな差はない。アプリケーションベンチのスコア差はメモリの実効性能の違いによるところが大きいと見ていいだろう。なお、今回のテストで使用したHDDはシリアルATA IIに対応していない製品であり、シリアルATA IIの3Gbpsに対応するドライブを使うことで、さらに性能差が広がる可能性があることも付記しておきたい。

【グラフ5】SYSmark2004 【グラフ6】Winstone 2004
【グラフ7】TMPGEnc 3.0 XPress

 最後に3D描画性能を測るベンチマークの結果を紹介しておこう。テストは「Unreal Tournament 2003」(グラフ8)、「DOOM3」(グラフ9)、「3DMark05」(グラフ10)、「3DMark03」(グラフ11)、「AquaMark3」(グラフ12)、「FINAL FANTASY Official Benchmark 3」(グラフ13)である。

 今回はSLIを使わず、GeForce 6800 GTを1枚のみ挿した同条件でのテストなのだが、いずれの結果もnForce4 SLI Intel Editionの方が優秀なスコアを出している。SLIによる性能向上の余地を残している点もふまえると、3Dゲームにおけるポテンシャルは大きく勝っているといえる。

【グラフ8】Unreal Tournament 2003 【グラフ9】DOOM3
【グラフ10】3DMark05 【グラフ11】3DMark03
【グラフ12】AquaMark3(Average FPS) 【グラフ13】FINAL FANTASY Official Benchmark 3

●Pentium 4向けチップセットの最高峰

 ベンチマークの結果を見てくると、対抗製品となるIntel 925XEに対して明らかに優勢な性能を持っているといえる。これは、DDR2-667へ対応している点が大きく功を奏したようだ。販売数こそ少ないが、すでにDDR2-667は秋葉原で入手可能な状態になっている。Pentium 4環境においては、nForce4 SLI Intel EditionとDDR2-667の組み合わせがもっとも優れた性能を引き出せることは間違いなさそうだ。

 ただし、Intel 925XE搭載マザーボードが安価なところでは1万円台後半から入手できるのに対し、nForce4 SLI Intel Edition搭載マザーボードは3万円を超える価格付けとなりそうな点のみがネックになる。

 とはいえ、エンスージアストと呼ばれるハイエンド環境を追求する層にとっては、極端に大きな投資が必要なわけではない。少なくともデュアルコア対応のIntel 955X/945シリーズが登場するまでの間は機能面でもっとも進んだものであるし、Pentium 4向けチップセットとしてもっとも良いパフォーマンスを持った製品としても人気を集めることになりそうだ。

□関連記事
【3月11日】【CeBIT】NVIDIAのインテル向けチップセットは“nForce4 SLI Intel Edition”
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0311/cebit07.htm
【3月3日】【笠原】デュアルコアプラットフォームを支えるチップセット
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0303/ubiq102.htm
【2月25日】【多和田】L2キャッシュ2MBのIntelの新CPUを試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0225/tawada44.htm

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(2005年4月6日)

[Text by 多和田新也]


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